再会
「もしもし、トワだ。今どこにいる?」
『統括センター? みたいなところの屋上にいる。さっきヒカリが爆薬庫を攻撃して堕としたばかりだ。そっちはどうだ?』
「無事ならよかった。こっちは今その統括センターの前まで来てる。ただ瓦礫が崩れてきて入り口が塞がれてんだ」
『なるほど。じゃあ裏にまわれ。俺たちが侵入した非常入り口がまだ空いてるはずだ』
僕たちはヴォルニーの指示に従い、統括センターの裏手へと回り込んだ。建物全体が炎と煙に包まれているため、視界は悪い。エイトの異能による透明な盾がなければ、ここまで近づくことすら不可能だっただろう。
「非常入り口ってどこだ?」
僕が尋ねると、すかさずスマホからヴォルニーの声が聞こえてきた。
『裏手の西側あたりにあるはずだ。炎が邪魔で少し見つけにくいだろうが、赤いランプが点滅しているドアが目印だ』
「あった! あれじゃないですか?」
エイトが指差した先には、半壊した金属製の扉があった。周囲の壁は黒く焦げ、崩れかけていたが、扉そのものはまだ何とか形を保っている。
「これが非常入り口か。ヴォルニーたちはここから侵入したんだな」
僕たちは急いで扉に向かい、力を込めて押し開けた。錆びた金属が軋む音を立てながら、扉がゆっくりと動く。内部は薄暗く、焦げた匂いが充満していた。
「中に入りますよ。火の回りが早いので、あまり時間をかけられません」
エイトが先頭に立ち、僕とコルルがその後に続く。異能の盾が炎や崩れかけた天井の破片を遮ってくれるおかげで、僕たちは安全に進むことができた。
「この階段を使えば、屋上に行けるはずです」
非常階段は中央の通路に面して設置されていた。鉄骨の階段は部分的に崩れているが、登れないほどではない。
「相当気をつけないと、すぐに崩れるぞ……これ」
僕たちは慎重に階段を上り始めた。靴底が鉄骨を踏む音が響き、焦げた金属の匂いが鼻を刺す。煙が充満しているため、息苦しさを感じるが、ここで止まるわけにはいかない。
「ヴォルニー、聞こえるか?」
階段を上りながら、僕はスマホを耳に当て、ヴォルニーに再び連絡を取る。
『聞こえる。状況はどうだ?』
「非常階段を上がってる。煙がひどいが、何とか進めそうだ」
『了解だ。屋上に着いたら南側の角まで来い。そこに俺とマツリとヒカリがいる』
「わかった」
通話を切り、僕は先を行くエイトに声をかけた。
「南側の角にヴォルニーたちがいるらしい。屋上に出たらそこを目指そう」
「了解です。ただ、屋上に着くまで油断は禁物ですよ。この建物、いつ崩れてもおかしくない状況ですから」
エイトの言葉に僕とコルルは黙って頷いた。
非常階段の最上部にある扉は、爆風の影響でねじ曲がっていた。エイトが異能の盾を使って力任せに押し開けると、冷たい夜風が僕たちを迎えた。
「……これが、屋上か」
僕たちは屋上に出ると、すぐに南側の角を目指した。瓦礫や破片が散乱している中を慎重に進む。遠くで爆発音が聞こえ、まだ状況が完全に収束していないことを実感させられる。
「おーい! ヴォルニー、マツリー!」
遠くにヴォルニーとマツリ、そしてヒカリが見えてくる。
「おー、トワ。辿り着けたみたいだな。どうだった? 解放チームは」
「こっちのことはもう済んだ。戦闘チームは何があったんだよ?」
「あぁ、最初に攻め込んだのが、攻め込んですぐにあったセキュリティ施設だ。まぁ爆弾で全部吹っ飛んだんだけどな」
「攻めていって、何回か戦闘になったんだけど、あんまり手応えのない相手だったなぁ」
「でもマツリも結構暴れてたじゃねーか」
「もっと刺激になる戦闘がしたかったのにー」
やっぱりマツリは解放チームに入れて、マユネーズやロボたちと戦わせたほうがよかったんじゃないか。
まぁ、僕が戦ったことは今は伏せておこう。
「でも幹部たちが出てきて、流石にそれにはマツリたちでも苦戦したよね」
「あれ? じゃあその幹部たちは?」
「ヒカリちゃんが爆弾で全て無にしてくれたよ?」
さっきの爆発、敵からの攻撃じゃなくて、こっち側からの攻撃だったのか。それは良かった。
「……んで、これからどうするんだ?」
「今、奴が向かってきてます」
「ヒカリちゃん、奴って?」
コルルが聞く。なんとなくこの流れで、奴の正体は推測できるが、何も言わなかった。
「プロダクトグラウンドUSAのオーナー。つまりここでの最高権力者、マーシャル・ワシントンよ」
やっぱりか。ここまで好き勝手に暴れると、そりゃ最高権力者出てくるわな。
「でも、私は……手が出せないの。ミライが、いるから……」
急にヒカリの様子がおかしくなった。
「誰なんだ? ミライって」
「私の妹です。今、マーシャルに人質にされていて……」
「……下手に動くと殺される可能性もあるんです。だから、みなさんに協力をお願いしたんです。外部からの侵入者がいれば、僕たちが首謀者とはバレにくくなりますから」
「そうか。だから、ヒカリはさっきも俺やマツリに戦闘を任していたのか」
「……はい。ごめんなさい……」
「ヒカリちゃん。別にマツリは、強制的にここに来ているわけじゃないんだよ。マツリだけじゃない、トワもコルルもヴォルニーも。自分が助けたいって思ってるから、ここで戦うんだ。だから、謝罪なんていらない。ただ、すべてが終わったあとに『マツリたちが来てくれて良かった』って思ってくれないかな?」
「……マツリ、さん?」
「マツリは戦いたくてここにいるだけだしね!」
たまーにマツリは良いことを言う。こっちのほうが本心っぽいんだけど、普段はあまり本音を言いたがらない。
「……ありがとうございます」
「それに、こうやって動いてる時点で、もう犯行人なんだよ。例の奴が来たら、これまでの恨みを思いっきりぶつければいい」
「……はい!」
マツリがヒカリの背中をポンポンと叩く。




