判明
真っ暗闇の道に、エイトの懐中電灯の白い光だけが真っ直ぐに伸びている。今はいったい何時なんだろう。ここに乗り込んだのが一時で、そこから大体二時間以上は経っているだろうから、午前三時三十分前後ってところか。
その前に、エイトにさっきのことを伝えておかないとな。
「エイト、今喋っていいか?」
「何をです?」
「一応戦果だけ報告しておこうと思って」
統括センターであろう建物は、もうすでにうっすらと前に見えてきてはいるが、無言のまま歩き続けるのはさすがにしんどかった。
「あの……あそこに書いてあったことって、本当に本当のことなの?」
僕が話し始める前に、コルルが口を開いた。
「書いてあった……って、どこまで行ったんですか?」
「順を追って説明するとだな……。たしかに入ってすぐのフロアに女性たちがたくさんいた。けど、少し進んだところで戦闘ロボみたいなやつと戦闘になった。そしたらそいつら自爆して、地下に落ちたんだ。そこでもいろいろ戦った後たどり着いたのが、管理室みたいなところで、そこでいろいろ知っちまったんだよ。この世界の闇を」
プロダクトグラウンドで行われていること。スカイシティ常任理事会の目的。この現実の醜悪さ。
夢であって欲しいほどの悪事が、この世界のトップによって行われている。
「じゃあ僕らが産まれてきたわけも、クローンについても、知ってしまったんですね」
「ねぇ、教えてエイトくん。奴らがこんなことを繰り返す本当の目的は何なの?」
「お二人は異能のルーツってご存じですか?」
「政府の専用兵士として開発したと書いてあったぞ」
僕はさっき呼んだ報告書の中身を、出来るだけ鮮明に思い出そうとする。
「スカイシティ誕生の年──西暦2117年から異能開発の計画は始まっていたんです。そのために全世界から科学者が集められ、大規模な異能開発施設が作られました。もちろん目的はスカイシティを守る兵士に異能を付与させ、絶対的な軍事力を保持したかったからです」
「でも失敗したんだよね。異能は一般人でも持てるようになった……」
「異能が遺伝するからですね。つまり奴らからすると、政府のみの特別な力じゃなくなってしまったんです。少し前まではそれでよかったんですが、ある男の一声で、異能に代わる新たな能力を求めて実験が進むようになりました」
エイトは懐中電灯の電源を切った。もうすでに道は真っ暗ではなく、目の前にそびえたつ統括センターが炎上する真っ赤な炎に照らされている。
「グラティアル・L・トワイライト。スカイシティ常任理事会の中でも一目置かれる超名門、トワイライト家の第七代当主です」
「その名前、報告書で見た……」
嫌な汗が背中を流れる。多くの女性を閉じ込め出産させ、産まれた子どもに身体開発を施し、上位異能を生み出す実験。そのすべての現状を作り出した張本人が、グラティアル・L・トワイライトという男なのか。
「グラティアルは、トワイライト家の当主になった途端、地上に大変革を起こすと言い始めました。それまで問題にされていなかった地上孤児の殲滅や異能強化実験、スカイシティから地上に逃げた逃走者の撲滅など上げたらキリがありません」
「待って待って待って。トワイライト家って地位は高いんだろうけど、スカイシティのトップってわけじゃないよね。なんでそんなに好き勝手できるの?」
「違うんだ、コルル。確かにスカイシティ常任理事会理事長という肩書を背負ったやつこそが、スペースイニシアティブという国、つまりこの世界のトップだ。けどトワイライト家はスカイシティの建造にものすごい役を買っている。言い換えればスカイシティの生みの親と言っても過言ではない。だからたとえ理事長であってもトワイライト家には頭が上がらないんだよ」
第一、スカイシティに住んでいる連中もこんな細かな事情なんて知らないだろう。奴らはトワイライトの名を汚さないように、大体のことは理事長を表に立てて実行しているのだから。
「トワさんよく知ってますね」
「昔に少し調べたことがあるだけだよ。というか、コレどっから入るんだ?」
僕たちは目の前にある炎に包まれた統括センターであろう建物を見上げる。七階ほどから成る四角い建物で、三階から上は全面ガラス張り。さっきの奴隷農場の施設よりはるかにお金がかかっていることが分かる。
右半分が崩れ落ちているのはさっきの爆発があったからだろう。
「ここが統括センターなの?」
「はい。爆発の影響なのか、すごい燃えてますね」
全長二百メートル相当、高さ七階の建物が炎上しているんだ。この辺りはもう昼間くらいに明るい。
「とりあえず施設内に入りましょう。ついてきてください」
「いや、入るったってどうやって? 僕たちも火だるまになるだけだろ?」
「僕の異能があるじゃないですか。抽象的すぎない攻撃なら、異能だろうが炎だろうが貫通はしません」
結構便利だな、その異能。僕も『浄化』なんて意味の分からない異能なんかより、そういう実用的な異能が欲しかった。両親のどちらかが異能人であれば、確実に異能を持って産まれてくるし、一般的に見れば異能人として産まれたことを喜ぶべきなんだろうな。
まぁ親を恨もうにも、実の親の顔なんて見たこともないけど。
僕とコルルはエイトの盾の中に入って、統括センターの近くまで来ることが出来た。すぐ近くで轟轟と炎が揺らめいているのに、熱さどころか汗一つかかない。
「あちゃー。さっきの爆発で完全に入り口が閉じちゃってますね。どうしましょうか、僕はここ以外の入り口は分からないので」
少し申し訳なさそうにエイトが誤ってくる。
「そうか、ならとりあえずヴォルニーたちに連絡してみるか。爆発があったてことはまだこの近くにいるなずだし」
「そうしましょう。お役に立てずすみません」
「全然大丈夫だよ。ちょっと待ってくれ」
僕はポケットからスマホを取り出すと、ヴォルニーに電話をかけた。




