爆発
スカイシティ常任理事会の会議記録に記載されている名前を、僕とコルルは一つ一つ読み上げていった。そこには、理事会の核心にいる者たちの名前が列記されていた。
「エドガー・リトヴァルス、ハンナ・ヴェルガー、ルイス・オーレン……」
その名を読み上げるたびに、僕は彼らがこの暗い影を生み出した張本人であることに苛立ちを募らせていた。彼らがどんな生活をし、何を考え、何を恐れ、何を守っているのかはわからない。だが、ただひとつ確かなのは、彼らが自分たちの安寧のために、地上の人間を切り捨ててきたということだった。
「こんな人たちが、スカイシティの未来を決めているなんて……」
コルルも呆れた表情でその記録に目を落としていた。
やがて、報告書の中で理事会がどれだけ異能技術を手中に収めようとしているか、そしてそのためにどれだけの地上の人間を犠牲にしているかが、さらに詳細に述べられていることがわかった。スカイシティは、地上の人間を実験台として利用し、異能の可能性を無限に追求するための舞台を築き上げてきたのだ。
「新たな新兵器となり得る異能人の作成……。なによ、これ!」
コルルが激しく拳を震わせ、怒りに満ちた声で叫んだ。その瞬間──
突如、建物全体が激しく揺れ始めた。轟音が遠くから響き渡り、まるで地震のように足元が揺れる。床の下で何かが崩れ落ち、あちこちから悲鳴のような音が響き渡った。
「地震か……?」
僕はバランスを崩し、近くの机にしがみついた。しかし、ただの地震にしては異様だった。振動は次第に激しくなり、停電が発生した。コンピュータのモニターが次々と真っ暗になり、部屋は一瞬で闇に包まれる。
「トワ、早くここを出よう!」
コルルが僕の腕を引っ張り、急いで立ち上がる。闇の中、僕は手探りでタブレットを取り上げ、懐中電灯機能をオンにした。薄暗い光がかろうじて周囲を照らし出す。瓦礫が散乱し、通路が狭くなっている。
「いったい、何が起きたんだ……?」
僕は息を呑んで周囲を見回した。異能実験が引き起こした大規模な事故か、あるいは何か意図的な破壊工作が行われたのか。いずれにしても、ただ事ではない事態が起きているのは間違いなかった。
「確実にどこかで爆発が起こったんだよ。もしかしたら、上の戦争で何かがあったのかも。とにかく、安全な場所に避難しないと」
コルルが懐中電灯の光を頼りに通路を進んでいく。僕も急いでその後を追いかけた。彼女のライトが先を照らし出し、瓦礫の隙間からかろうじて通れる細い通路が見えた。揺れが少し収まったのを見計らい、僕たちはその通路を進んでいく。
「ここ! 瓦礫を登っていければ、上の階まで行けるはず……」
ちょうど巨大ロボットと戦闘したあたりは壁が崩れており、瓦礫が積み重なって上の階まで続いていた。
「運がいいのか、悪いのか……」
僕は瓦礫に足を乗っける。体重をかけてみたが、崩れる気配はしなかった。
「いけるみたいだ」
僕とコルルは瓦礫を登った。まるで上に登れと言わんばかりに、瓦礫は階段状になっていた。
やがて、僕たちは女性たちが入れられている檻が並ぶエリアに戻ってきた。薄暗い光の中で見える限り、檻の中の女性たちはまだ無事なようだ。しかし、彼女たちは皆、揺れのショックで気を失っているのか、静かに眠ったように倒れていた。
「……死んだわけじゃ、ないよな?」
僕は檻越しに、女性たちの顔を見つめながら呟いた。さっき見たときは気づかなかったが、確かに身体のいたるところにアザがあるし、無茶な扱いを受けていたことは間違いない。
「なんとかして助け出せないのかな……」
コルルが檻に手をかけ、彼女たちの様子を確認する。だが、この場でできることは限られている。
「それはまた後だ。とにかく今は外の様子を見に行かなきゃ」
僕たちは焦りながらも、まずはこの建物を抜け出すことを最優先とした。
「行こう。もう少しで出口だ」
僕たちは檻のエリアを通り過ぎ、慎重に上へ向かう階段を上がっていった。途中、何度か足元が不安定で滑りかけたが、互いに支え合いながら進み、ようやく出口にたどり着いた。
「なんとか、戻って来れたな」
「うん……」
冷たい夜風が肌を刺し、暗闇の中で僕たちの呼吸だけが響く。施設から出た僕たちは、何が起こっているのかを確認するため、周囲を見渡した。しかし、あたりは真っ暗でほとんど何も見えない。
その時、遠くから強い光がこちらに向かって近づいてくるのが見えた。懐中電灯の光が暗闇を切り裂き、その向こうに姿を現したのはエイトだった。
「エイト……!」
「トワさん! コルルさん! 無事ですか?」
エイトが息を切らしながら駆け寄ってきた。その顔には緊張の色が濃く、額には汗が滲んでいる。
「エイト、ここで何が起きているんだ?」
「近くの施設で大規模な爆発があったみたいです。方向的におそらくプロダクトグラウンドUSAの中心部、統括センターでしょう。もしかしたら戦闘チームがもうここまで来ているのかもしれません」
「ヴォルニーたちか。だとしても、ここまで大きな攻撃をどうやって起こしたんだ?」
この爆発が攻撃的なものであることは、もう疑いようのないことだ。だが、この爆発がどちらからの攻撃なのかはまだ分からない。
「とにかく統括センターに向かいましょう。ここから五分もかかりません」
「分かった」




