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その上の闇

 僕とコルルは、報告書に書かれたスカイシティ常任理事会の報告に目を通しながら、衝撃と怒りでその場に立ち尽くしていた。

 人体実験や異能実験が詳細に記された文章を目にするたびに、二人の心には信じがたい事実が押し寄せてくる。


「これが本当に……プロダクトグラウンドで行われていることなのか……?」


 僕は信じられないという表情で呟いた。

 その報告書は、政府の秘密プロジェクトに関する詳細な記録で、理事会が主導する一連の実験の目的や進行状況が記されていた。内容は想像を絶するもので、人間の尊厳を完全に無視した研究が続けられている。

 コルルも、表情を固くして報告書を読み進める。


「これ……分かっていたけど、地上の人間たちは、人間扱いされていない……」


 報告書には、プロダクトグラウンドにおける奴隷たちの扱いが冷酷に書き記されていた。彼らはただの労働力として利用されているばかりか、その体すら実験材料として用いられていた。


「地上の人間は、まるで使い捨ての道具みたいだ……」


 拳が震える。目の前に広がるこの残酷な現実は、僕の想像をはるかに超えていた。

 スカイシティの市民が享受している豊かな生活の裏で、無数の地上の人々が犠牲にされ、苦しんでいる。その犠牲の上に成り立つ空中都市──それがスカイシティだ。


「スカイシティがこれほど腐敗しているなんて……」


 コルルも怒りを抑えきれずに言葉を漏らす。スカイシティは、人々の憧れの象徴とされていた。しかしその実態は、地上の人間たちを犠牲にして成り立つ偽りの楽園だった。


「これが理事会の真の姿か……。スカイシティの住人たちも、この真実を知っているのか?」


 僕はふと疑問を抱いた。理事会がこれほど非道なことをしているのなら、スカイシティの一般市民もその一端を知っているのではないか、と。


「市民は知らされていないと思う。少なくとも、こんな残虐な実験が行われていることなんて……」


 コルルは冷静に推測する。スカイシティの市民は、政府から与えられる情報をそのまま信じるしかない。理事会は巧妙に情報を操作し、地上の人々がいかに非人道的な扱いを受けているかを隠しているのだろう。


「奴らは、表向きは平和を掲げているけど、実際はこんな恐ろしいことをしているんだ……」


 コルルは怒りに満ちた声で言った。報告書に書かれている計画の一部には、異能を持つ者たちのクローンを作り出し、その力を利用するという記述もあった。地上の人間たちがその実験のために使われ、命を落としていることが記されている。


「クローンまで……」


 僕は息をのむ。クローン技術は既に理論的には確立されているが、それを実際に人間に適用し、なおかつ異能を持たせようという試みは、倫理を超えた暴挙だろう。


「こんなことをしてまで、奴らは何を求めているんだ……?」


 僕は自分に問いかけてみたが、答えはすぐに出なかった。彼らが望むもの、それは単なる権力の拡大や支配の強化ではない。理事会は人間の限界を超えた存在を生み出し、支配者としての地位を永遠に守ろうとしているのだ。


「理事会の連中は、自分たちの力を守るために異能を開発したんだろうね。もともとは政府御用達の兵士(異能人)を作ろうとしたけど、今となっては必要以上に広まりすぎた。から、さらなる異能を求めてこういうのを繰り返すんだよ……」


 コルルが言った。スカイシティ常任理事会は、世界の上層部に位置し、莫大な権力と富を手にしている。しかし、その力を維持するためには、常に新たな支配手段が必要だった。それが異能人の創出であり、その過程で地上の人々が犠牲になっているのだ。


「だからって、人をモノ扱いするなんて……!」


 僕は拳を固く握り締め、苛立ちを露わにした。僕自身異能を持つ者として、そのような扱いに対する憤りは強かったが、今目の当たりにしている光景は、僕の怒りを限界まで引き上げた。


「トワ、ここにスカイシティの詳細な仕組みが書かれている。これを見て」


 コルルがモニターに映し出された報告書の別のページを指差す。そこには、スカイシティの構造や機能、さらに理事会がどのように権力を維持しているかが詳細に説明されていた。

 空中都市であるスカイシティは、地球が環境的に崩壊し始めた約百二十年ほど前に建設された。人類は生存のために技術を駆使し、地上の荒廃した環境から離れる手段として、この浮遊都市を築いたと書いてある。

 都市は巨大な反重力装置によって支えられ、高度五千メートルの上空に浮かんでいる。資源の供給やエネルギーの確保も、地上の人々から搾取する形で行われており、労働力として地上の人間を使い、彼らから得た資源をスカイシティに供給していた。


「奴らは、地上の人々を資源としか見ていないんだ……」


 地上の人々がどれだけ苦しもうと、スカイシティの住人たちが快適に暮らすためには犠牲が必要とされていた。そして、それを維持するために理事会は恐ろしい手段に手を染めている。


「彼らは自分たちの生活を守るためなら、どんなことでもするんだね……」


 コルルは淡々とした口調で言ったが、その声には怒りと悲しみが混じっていた。

 続いてスカイシティの統治システム、特に常任理事会の仕組みについて詳しい説明があった。

 常任理事会はスカイシティの最高権力機関であり、理事たちは代々続く特権階級の家系出身者によって構成されていた。奴らは地上の問題や資源管理、異能技術の開発、さらにはプロダクトグラウンド内の実験全ての進行状況までを全て統括している。


「常任理事会は完全に閉鎖的で、内部の人間だけで全てを決めているみたいだな……」


 と僕は読みながら呟く。


「奴らの判断一つで、数百万人の命が左右される……。こんな独裁体制を築いていたとは。」

「しかも、奴らはその地位を世襲で引き継いでいるのね。誰も外部の人間を入れずに、何世代にもわたってスカイシティの運命を握っているわけだ……」


 コルルが忌々しげに言った。


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