混戦
「……それは」
「いいから出ていって! 二度と戻ってこないで」
馬鹿だ。なにも考えずにここに突っ込んできてしまった。
銃声が鳴り止んだ。このまま放っておくのもマズイだろう。奴らだけでも片付けて去ることにしよう。
「本当に悪かった。でも、最低限はやっていくぞ」
ここまできたんだ。ロボット共くらいはぶち壊して出ていく。ドアを開けて部屋に入る。
「悪く思うなよ……」
弱点はもう見切ってんだ。あとは反復攻撃を繰り返すだけ。
僕は目に向かって刀を振るう。奴らはリロード中だし、攻撃をすることはできないだろう。
次々とロボットたちを斬り倒していく。赤い目を狙えば確実に動きを止められるのが分かっている以上、戦いは次第に作業じみたものになってきた。
「これで……終わりか?」
最後の一体を斬り伏せた後、辺りに静けさが戻った。床に転がる白い円柱の残骸。そこにはもう動くものはない。
深い息をつき、刀を鞘に収めようとした、その瞬間だった。
ピピピーと低く、不気味な電子音が耳に飛び込んできた。振り返ると、斬り倒したはずのロボットの一つが目を赤く輝かせていた。それも、これまでの赤い光とは異なる。警告のように点滅しながら、音が次第に速くなっていく。
「まさか、こいつ……!」
気づいた時にはもう遅かった。ロボットは自爆機能を起動させていたのだ。咄嗟に後退しようとしたが、爆発は間に合わなかった。
「くっ!」
轟音とともに、足元が大きく揺れた。地面が崩れ、バランスを崩して落下し始める。周囲の残骸や瓦礫が一緒に巻き込まれ、僕の身体は暗い穴の中へと引き込まれていった。
「うわああああっ!」
手を伸ばすが、掴むものは何もない。視界がぐるぐると回り、底の見えない暗闇の中にどんどん落ちていく。
ドンッ!
ようやくどこかに体が叩きつけられる。痛みが全身を駆け巡り、一瞬息が止まった。しかし、意識を失うわけにはいかない。
痛みに耐えながら、周囲を確認する。さっきの部屋の真下のようだが、どれだけの深さまで落ちたのか、まるで見当がつかない。足元には古びた機械の残骸や、鉄屑の山が広がっている。
「ここは……どこだ?」
目を凝らすと、薄暗い部屋が広がっているのが見えた。機械的な音や光がかすかに響いてくる。
「……どうやって戻るんだ?」
足を動かしてみる。強い衝撃を受けた割には、骨には異常がなさそうだ。けれど、明らかに状況は悪化している。
立ち上がり、ゆっくりと歩き始めたその時、背後から気配を感じた。
音がした方を振り向くと、巨大なロボットが不気味に光る目でこちらを睨んでいた。
先ほどのものとは桁違いの大きさで、身長は二メートルといったところか。顔があり、腕や脚もあり、その姿はまるで人間を模したかのような形をしている。ただ完全に人間体のようなわけではなく、ところどころに配線が見えたり基盤が見えたりしている。
「……ここで大ボスとご対面ってわけか」
本当にマツリを解放チームにやるべきだったと、つくづく思い知らされるな。
ロボットはゆっくりと動き出し、地面が揺れるほどの重さでこちらに迫ってくる。その右手には巨大な剣、左手には何やらエネルギーのような青い光を放つ盾が装備されていた。
「これは……お遊びじゃ済まないな」
僕は刀を握りしめ、再び戦闘体勢に入る。地上からの援護も望めないこの状況で、この巨大ロボットとどう戦えばいいのか。
相手はその場で踏み込み、大きな剣を振りかざしてきた。その動きは鈍重だが、一撃で致命傷を与えかねない威力だ。僕はギリギリでそれをかわし、間合いを詰めて反撃しようとしたが。
「……なに!? 動きが速いッ……!」
次の瞬間、ロボットは驚異的なスピードで体を回転させ、盾で反撃してきた。完全にタイミングを外され、僕はその盾の一撃で吹き飛ばされる。
「ぐっ……」
壁に叩きつけられ、息が詰まる。こんな巨大な奴がこんなスピードで動けるなんて、聞いてないぞ。
「くそ……どうにかして……」
ロボットの赤い目が、こちらをじっと見据えている。このままでは、何か突破口を見つけなければ勝ち目はない。
「考えろ……この状況をどう打開するか」
ロボットが再び接近してくる。あの重厚な剣を再び振り下ろされたら、次は避けられないかもしれない。
僕は素早く立ち上がり、何とか間合いを取ろうと後退する。だが背後には壁が迫っており、これ以上逃げる場所はない。
「くそ……!」
僕はとっさに足元に転がる鉄屑を拾い上げ、それをロボットの剣に向かって投げつけた。剣が鉄屑に触れると、剣の動きがわずかに鈍る。その隙を逃さず、僕は左に跳躍してギリギリで剣を避けることができた。
「ふぅ……危なかった」
巨大な剣が床に突き刺さり、床が大きく揺れてロボットの動きが一瞬止まった。僕はその隙を突いて、素早くロボットの側面に回り込む。
正面から攻撃を仕掛けるのは無謀だが、横や後ろならば狙う余地があるかもしれない。
「どこを狙えばいい……?」
僕は刀を構え、ロボットの隙を探る。しかし相手はすぐに反応し、回転して盾を振りかざしてきた。盾全体が青く光ったと思ったら、無数の氷の刃が飛んできた。
「……異能ッ!?」
機械に異能を持たせることは、現代の技術では不可能なはず。なぜそれが実現できているんだ? それともこれは異能じゃないのか?




