与えられたもの
まずはこいつらを切断できるかどうかを、直接試してみよう。鞘を地面に置き、両手でしっかりと刀を握りしめる。
「攻撃を開始します」
そう言って、機関銃を発砲してきやがった。まぁこっちが刀一本しか持っていないから、銃撃を試みるのは当然だけどさ。
「結構いい判断するじゃないか」
咄嗟にドアの裏に回り込み、銃弾から身を守る。捕らえた人を逃さないために、普通のドアより頑丈に作られていることが幸いだった。が、難点は片開きなことだ。
「くっそ、飛び道具がこっちにもあれば」
戦闘において無い物ねだりほどくだらないものはないが、僕も銃くらい扱えるようになっていた方がいいのだろうか。
まぁここでじっとしていても仕方がない。こっちの部屋は両側に閉じ込められている人もいるし、なにより二人が横に並ぶのがギリギリというほど通路が狭い。こんなところで戦闘なんてたまったもんじゃあない。
「この銃撃が終わるまでここで待機か」
いくら戦闘専用ロボットだと言っても、銃弾を装填する時間くらいはあるだろう。そのリロード時間にどれくらい致命傷を喰らわせられるかだな。
「弾切れを確認。直ちに装填します」
「よし、今だ」
銃声が途絶えた。
僕はドアを開け放って飛び出す。案の定奴らはガチャガチャ鳴らしながら、右手をいじっていた。
さっきはあまり注目していなかったが、全部で五十体くらいか? それが全部同じ動きをしているのは少し気味が悪い。
とりあえず一番近くにいる個体に仕掛けてみよう。
「《輝煌斬り》ッ!」
僕の技の中で一番スピードがある技だ。力を抜いた状態で、標的に向かって右肩上がりに刀を出す技。技といっても、エリア3rdにいたころに知り合いから教えてもらった斬り方に、勝手にそれっぽい名前をつけただけだ。
けど、この刀の出し方が一番今の僕に合っているような気がする。
「さて、結果は」
結果は、かなり良い。今の一撃だけでかなりのダメージを与えることができたと見ていいだろう。一体だけの結果に絞るとだが。
戦闘専用ロボットの厄介なところは、再起不能まで追い込まないと勝利と言えないところだ。それが対人戦との一番の違いと言ってもいい。
今の一撃を喰らうと、普通の人間ではまず立つことはできなくなるだろう。運が悪ければ腕の一本や二本が吹き飛ぶ威力はあるはずだ。
だが、こいつらは生身の人間ではない。プログラムが作動している間は、どんな攻撃を加えても倒れることはない。
「ちっ、厄介なもの溜め込みやがって……」
こういうのは大体その個体の『核』を壊せば、動きが止まると相場が決まっている。
僕はさっき斬りつけたロボットの目を、切っ先で思いっきり突いた。
「ビンゴ!」
プシュウと白い煙を吐きながら、動きが完全に停止した。刀を目から抜くと、もちろん赤く光っていた目も暗くなっていた。
「ふーん。じゃああとは怖くないな」
弱点を知ってしまえばこっちのもんだ。狙うは赤い目だけだ。
「攻撃を再開します」
誰に向けてのアナウンスだこれは。プログラム上そうなのかもしれないが、敵の行動を逐一報告してくれるのはありがたいことだ。
僕はもう一度ドアを閉めて銃弾に備える。数秒後、スダダダダとさっきと変わらない銃声が聞こえてきた。
このまま攻撃が終わるまで待つだけだ。
ドアと向き合って静かに目を瞑る。機械的な銃声が骨の髄まで響き渡ってくるのが分かる。
「ねぇ、なにを、しているの?」
ふいに声が聞こえた。どこからだ?
振り向くと、ちょうど真横の鉄格子に手をかけた女性がいた。
「な、なにって? プロダクトグラウンドを襲撃しているだけだよ」
まさか生きているうちにこんな言葉を口走るとは、思ってもみなかったな。明日からは世界的大犯罪者かぁ。
「なにいってるの? よけいなこと、しないでよ」
「どういうことだ? 余計なこと?」
地上の人間からしたら極悪でしかないプロダクトグラウンドを襲撃することの、どこが余計なことなんだ?
「アンタがしてることの全てが、余計なことよ! なんでこんなところまで来てるの!? もし本当に襲撃が成功したら、私たちに死ねって言ってるのと同じなのよ!」
その声は銃声が聞こえる中でも、はっきりと聞こえてきた。
「私たちはここを出れば行くところなんかないわ! 大人しくここで死ぬのが一番救われることなの! 助け出したとか言って、連れ出された私たちの後のことなんて考えてないんでしょう!? そんな無責任な行動で、他人の生死を決めないでよ!」
今までで一番大きな声が響き渡った。
そうか、ここにいる人たちはここにいるしかアテがないんだ。いや、ここの人たちだけじゃない。エイトが言ってた何十、何百万人の奴隷はどうするんだ。確かに彼らからすれば、突然家を追い出されるようなもの。
やってることスカイシティと変わらねぇじゃねぇか。




