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もうひとつの顔

「農地区画?」


 コルルが脳死で聞いてくる。多分こいつ今思考回ってねぇな。

 ふらふらとよろけて、近くの干し草にパタリと身を任せた。

 とりあえずこれは一旦放っておこう。


「地上最大のプロダクトグラウンドUSAの実に六割ほどを占めるのが、小麦や大豆、とうもろこしなどの農場です。広大な土地を利用して、スカイシティに送る作物を育てています」

「それは、どれくらい広いんだ?」


 プロダクトグラウンドUSAの広さが、千七百キロ掛ける二千四百キロなのは知っている。


「プロダクトグラウンドUSAの西半分全てが農地区画になります。特に小麦に関しては、スカイシティで消費される小麦の約八割をここで作っていますから」

「西半分全部ねぇ……。で、それを僕たちに教えて何をするんだ? ここからだろ、本題は」

「そう、ですね……」


 エイトが少し俯いて、くるりと僕たちに背中を向けた。


「これは、僕ひとりでやろうとしてたことなんです。無理強いはしません。まずは話だけ聞いてください」


 エイトの声色が少しばかり悲しげになった。


「ここから少し行ったところにある、三つの施設の破壊……。それが、プロダクトグラウンドUSA破滅の、一番大きな条件なんです」

「条件? そこの破壊って、プロダクトグラウンドの中枢部みたいなところか?」

「いえ、それはヴォルニーさんとマツリさんチームが目指してくれていて、もっと市街地に近いところにあります。確かにそこを叩けば、プロダクトグラウンドは運営できなくなり、潰れるでしょう。表面上は」

「表面上は。ってどういうことだ? まるでまだ動かせるみたいじゃないか」

「はい。運営を止めたところで、使える施設が残っているので、いくらでも復活してきます」


 気絶させただけじゃなくて、ちゃんと心肺停止状態まで追い込まなければいけない、ということだな。


「それで、その施設というのは何をやってるんだ。言うのを躊躇うほどのヤバい施設なんだろ?」


 おおかた奴隷たちを劣悪な環境に押し込めてるとか、そんなものだろう。


「はい……。ここまで連れてきといてなんですが、本当に言っても大丈夫……ですか?」

「当たり前だ。僕たちもそんな腐った世界を嫌と言うほど見てきている」

「……人体実験施設、奴隷農場、航空機発着基地の三つです」


 はいでた。わけのわからないゴミ施設。

 予想は外れたか。外れて欲しくなかったが。


「プロダクトグラウンドはただ単にモノを生産するだけの場所じゃないんです。より強力な奴隷の()()、多くの奴隷の()()。それが行われているのが、前者二つの施設です」

「なんだよそれ。そんなことが現実で行われてていいのかよ」

「もちろん公にはなっていません。知っているのはここの人たちとスカイシティの上層部の人だけです」


 それはそうか。いくら地上でやっていることとはいえ、バレたら流石に立場が悪くなる。


「そこを僕たちで叩くんだな」

「ここは、夜になると警備が手薄になるので、過度な戦闘はないとは思いますけど。本当にいいんですか?」

「コルルはどうか知らないけど、少なくとも僕は大丈夫だ。人のなれ果てた姿なんてずっと見てきている。バラバラになったやつとかも」


 エイトが少しだけ頷いて、ポケットから懐中電灯を取り出した。

 パッと辺りが眩しくなった。


「電気持ってるのか」

「あと二つ持っているので、渡しますね」


 ポケットから全く同じ懐中電灯を取り出して、渡してきた。


「よし、じゃあコルル起こして早速向かうか。おーいコルル起きろ!」


 干し草の上で伸びているコルルのほっぺたをぺちぺち叩く。


「んぁっ! 何?」

「起きろ仕事だ」

「今度はどこ行くの?」

「非人道的施設の破壊だ」


 自分で声に出しておきながら、『非人道的施設』という表現が妙にしっくりきてしまった。


「ひ……? な、なんて?」

「とりあえずエイトについて行くぞ。エイト! 案内してくれ」

「分かりました。道が悪いので足元気を付けてくださいね」


 木々の間をかけ分けて、僕たちは目的の施設へと足を進めた。


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