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対戦

「……殺すッ!」


 気がついたら飛び出していた。刀をまっすぐに振り下ろす。


「やってみろ」


 マユネーズは笑みを浮かべて、僕の刀を受け止めた。

 そのまま二、三度斬り合って一歩下がる。マユネーズは後ろ足に力を入れて、再び向かってくる。さっと右方向に身体を傾けて剣を躱す。前に出した右足に力を入れて、下から刀を持って行った。

 が、それも安易に受け止められ、反撃を喰らわされた。バランスを崩すと、また追撃が飛んでくる。すかさず後ろに跳び、マユネーズとの距離を取る。


「どうした!? 手応えがないなぁ!?」

「うるさい、黙ってろ!」


 だったらこっちだって、攻撃方法を考えるしかない。

 息を吐いてもう一度斬りつけるが、また受け流される。


「……なぜだッ?」


 攻撃を受け止めたあと、すかさず突きを入れてみた。しかし、平然と避けられる。


「あ? なんだその弱ぇ突きは? やるならこんくれぇやらんとなぁ!」


 ビュンっと銃弾のような刀が真っ直ぐに飛んでくる。ギリギリで交わしたが、当たっていたらまず即死だっただろう。


「やるねぇ! だったらこういうのはどうだ?」


 マユネーズは地面を蹴って飛び上がり、上から刀を振り下ろしてきた。

 ギィィィンッ!

 今までで一番大きい音が刀から鳴る。刀を横にして受けていればおそらく折れていた。刃先が心配だが、見ている余裕はない。刀を振り払って、もう一度攻撃を試みる。


「攻撃が甘いっ!」


 だが、何度やっても僕の攻撃は簡単に受け流される。奴のように重い攻撃ができない。

 ──何故だ? 何故僕の攻撃はこうも通らないんだ。


「……どうして攻撃が受け流されるのか、気になっているだろう」


 マユネーズが不適な笑みを浮かべている。

 やはり何かがあるんだ。単なる力の差以外に、僕とこいつを隔てている決定的な何かが。


「何が、あるってんだ……」

「私の攻撃にここまで耐えられたのは貴様だけだ。そろそろ教えてやってもいいだろう。私の異能は、『筋力強化』だ。攻撃するときに脚力は貴様の十倍、腕力は二十倍に設定している」

「……ッ!? 異能……」


 そうだ。別に表立って見えるものだけが異能じゃない。骨強化や、頭脳強化だってある。何故気づかなかったんだ。


「面白いな。貴様のような一般人が、異能人である私に勝てるはずはない! 足掻いたって無駄なことは無駄なんだよ」


 マユネーズはもう一度飛び上がると、刀を思いっきり振り下ろしてきた。さっきの攻撃だ。


「トドメだ。死ねぇぇぇぇぇえ!」


 ドゴォォォォン。もはや刀から鳴る音ではない音が鳴り響く。さっきの攻撃よりも数倍は威力が高い。刀だけでなく、僕の腕にもしびれが出始めた。

 マユネーズは後ろに飛び退き、刀を払った。


「終わりだ。私のこの攻撃を受けて立てるやつなどいない……なにっ!?」


 なるほど。今の攻撃がこいつの最高出力なわけだ。でも、僕が立てているということは、もうこいつの攻撃で僕が死ぬことはない。


「残念だったな。僕だって異能人だ」


 まぁ肝心の異能は発現しないんだけどね。


「……なに? 貴様が異能人だと? なんの異能だ」


 ミスったなぁ。あまり異能人であることを簡単にパラすべきではなかった。

 でもまぁ、この流れは言う流れか。


「……僕の異能は、『浄化』だ」

「浄化? 聞いたことも見たこともないな」


 それは僕もだよ。


「とにかく、お前のヤマはハズレたってことだっ!」


 僕は刀を握り直して、マユネーズに突っ込む。

 こいつの異能は筋力強化。さっきの言い方から推測するに、こいつは攻撃するときだけ一時的に筋力を操作していると考えられる。

 なら、こいつが攻撃をし終えた瞬間に攻撃を仕掛ければ、ダメージが通るかもしれない。

 ヒュンとマユネーズは刀を振り下ろす。それを右に交わして、間合いを詰める。今だ。

 ビィィン。攻撃は交わされたが、マントに斬りつけることができた。


「なにっ!?」


 すかさず後ろ足で蹴りを入れてくる。こいつ、剣技だけじゃないのか。足蹴りを交わしてもう一度左腕を狙って刀を構え直す。

 なるほど、掴めた。こいつは僕に攻撃する瞬間だけ筋力を上げ、攻撃終了と同時にその異能を切っている。つまり、攻撃体制ではないときに仕掛けるとダメージが通るんだろう。


「こいつっ……ちょこまかと!」


 だんだんヤケクソ攻撃になってくる。

 こいつ、もしかして自分の弱点を知らないのか。

 キィン、キィィンと何度か金属音が鳴る。僕が弱点を知ったところで、もともとこいつのほうがスピードもパワーも断然上だから、そう簡単に攻撃を加えることはできない。


「大人しく……しやがれっ!」


 これまでに苦戦をしたことがないのだろう。戦闘は冷静に進められたほうが有利に決まっている。僕は常にマユネーズの隙を探してながら、打ち合っていた。

 ふと、奴が距離をとった。息を荒げて膝に手をついている。僕も息が上がっていた。額の汗を腕で拭う。


「……何故、貴様は倒れない。この私の相手をしているというのにッ!」

「戦争で情報ってのは、大事だぞ。べらべらと喋りすぎると自分に不利益になる」


 こいつはおそらく、自分と互角のやつと戦ってこなかったんだろう。いつも自分が上に立って戦ってきた。だから知らないんだ。情報を隠すということが。


「勝手にほざいてろ。次の一撃で終わらしてやる」

「そう思ってる時点で、お前の負けだよ。マヨネーズ!」

「マヨネーズじゃねぇ! マユネーズだっ!」

「どっちでも変わんねぇよ!」


 もうこいつの太刀筋は見切っている。刀は下から出す。


「下手斬りィ!」

「十字上殲!」


 カギィィィィィンッ!

 奴は上から振り下ろし、それに対して僕は下から振り上げた。感触は良かった。僕は刀を振り払って、奴のほうへ振り返る。

 一定の静寂があったあと、マユネーズが膝をついた。


「な……ぜっ……? 私が負ける、のだ……」

「お前は僕に情報を与えすぎた。ただそれだけだよ」


 ドシャっとそのままマユネーズは地面に倒れ込んだ。


「ふははは、はは……私に敗北を教えてくれたのだ。礼を言っておこう」

「こちらこそだ。対戦ありがとう、マヨネーズ」

「マユネーズだ。……どちらかというとマヨネーズは嫌いだ」

「ふはっ。聞いてないよ」


 僕は吹き出しつつも、その場を離れた。こんな奴とはいえ、プロダクトグラウンドUSAの一角を落としたのだ。コルルに報告に行こう。


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