対峙
「じゃあもう心配いらないな。次のところに行こう」
「うん!」
プロダクトグラウンドUSAは広い。今戦闘してるところだけなら全体の一パーセントにも満たないだろう。こういうことを繰り返し行う。それが、僕たち解放チームの仕事だ。
「トワ! エイトくんが次はこっちだって!」
「了解。コルルまた頼んだ」
コルルからスナイパーライフルを受け取ると、またもやコルルはロケットランチャーを乱射し始めた。
どこに隠し持ってるんだその武器たちは。
またひとつふたつと、爆発が相次いで起こり始めた。もうこうなってくると、街中がめちゃくちゃだ。
「これで、いいのかな……」
ロケットランチャーを撃ちまくっているやつが、そういう疑問を持つんじゃない。
下を見ると、進軍してきたさっきの人たちに、新しく出てきた人たちが加わり、こちら側の軍の数も多くなってきた。
「ここはこれくらいでおっけーかな」
コルルはロケットランチャーを撃つのをやめた。
「コルルさん! トワさん! いい感じです。僕は軍を前進させますので、もっと向こうの方までお願いします!」
マンションを登ってきたエイトは、それだけを告げてまた下に下がっていった。
「ずいぶんスムーズにいけてるみたいだな」
「うん。これ、トワも撃ってみる?」
「いや、いいよ。ロケランの使い方なんてわからないし。じゃ、また突っ込んでくるから、他のところに撃ち込んどいて!」
「はいはーい!」
コルルはロケットランチャーに弾薬を補充し始めた。それを見て、僕は今度は敵陣のど真ん中に突っ込む。
「さーて、ここなら思う存分に暴れられるからな」
仲間もいないし、巻き込んじゃう危険性もない。久しぶりにストレスを発散できそうだ。
カチャっと刀を身体の前に構える。
敵が攻撃を仕掛けてきた。足に力を入れて、すっと前進する。刀に余計な力は入れない。自分の体重と慣性の力にまかせて刀を滑らす。
「……一心斬速」
ひゅーんと風を切る音が耳元で鳴る。刀で斬られた敵が、どんどん吹き飛ばされていく。ヴォルニーの技ほどの破壊力はないが、この技は周りの敵を殲滅できる。
ある程度進むと、足に力を入れて地面との摩擦でスピードを緩める。
ズガっと鈍い音が足元からして、ようやく身体が止まった。
「死ねぇ!!」
突然敵の中から、刀を持った奴が僕に斬りつけてくる。反射的に刀で受け止め、そのまま横に流す。斬りつけてきた敵は、空中で二、三回くるくると周り、三メートルほど離れたところに着地した。
「誰だ? お前は」
金色の長髪。前髪が長いせいで、目元が確認できない。さっきの声からおそらく男だろう。黒いマントのようなものを羽織っていて、右手には刀を握っている。
「私はマユネーズ。プロダクトグラウンドUSAイースト支部軍事部長だ」
「ん? なんて言った? マヨネーズ?」
「マヨネーズではないっ! マユネーズだ。舐めた口を利きおって、殺してくれるわっ!」
そう言って、マヨネーズもといマユネーズは僕に向かって突進してくる。
「いやおい、待てって」
「問答無用!」
ガキィンと甲高い金属音が鳴る。受け流す間もなく、次の攻撃を入れてくる。
こいつ、速いっ。
太刀筋がまるで見えない。いや、見せていない。
「なかなかの実力者だな。この私の剣を受け止めるとは」
「そりゃどーも。生憎こっちは殺すか殺されるかの瀬戸際で生きてきたんでね」
エリア3rdでは毎日のように、殺しが頻発していた。それはまるで死者が地獄で逃げ惑うかのように、残虐で慈悲のないものだった。
そもそもエリア3rd含め、『無法地帯』とはその名の通り、地上で行き先をなくした荒くれ者やスカイシティで法を犯した犯罪者たちが集まる都市のこと。特別危険区域と定められ、スペースイニシアティブ政府の法も適応されない。
完全に政府に捨てられた地域。滅亡したエリア3rdを除き、エリア1stから7thまで、地上に六つ存在している。
「貴様が侵入者であっているな?」
「言わなくても分かるだろ」
一旦間合いをとる。息を吹いてゆっくりと切先を眺める。綺麗な銀色の片刃に、自分の顔が映し出される。
「アンタ、イースト支部軍事部長と言ったな。アンタの他にも軍事部長とやらがいるのか?」
「その通りだ。私の他に、ウエスト支部軍事部長が存在している。私たちはプロダクトグラウンド統括軍事部であり、それらの上に立つのがプロダクトグラウンドUSA統括理事会だ」
「軍事部以外に何の部署がある?」
「色々ある。まずプロダクトグラウンドでは、スカイシティに欠かせない生産物を作る。主に米や麦などの穀物類。牛や豚などの家畜。そして野菜や養殖魚。食料以外にも衣服や電気製品、家具、電気なんかも作る」
話には聞いていたが、本当にモノを生産するためだけに作られた都市なんだな。プロダクトグラウンドは。
「そいつらを作らせる各地に、ひとつずつ取りまとめる部署が置かれている。あとは、大量の奴隷共の管理だ」
「管理……とはどういうことだ? 仮にも働いているのは人間だぞ」
「人間だと? 働くことしか脳のない奴らと私たちを一緒にするな。人型の家畜だぞあいつらは。ここで産ませて死ぬまで働かせる」
「なんだと?」
刀に込める力が強まっていく。沸騰する水のように、身体の底の方からグツグツと怒りの泡が湧き上がってくる感じがした。
「そんなことを、なぜ平気な顔でできる? それがお前らの掲げる平和なのか? 産業を否定し、世界の闇を地上に押し付け、何も知らない国民だけが空に浮いて普通の生活を送る。そんな世界が本当に正しいのか!?」
スペースイニシアティブ政府が掲げる言葉のひとつに、『世界平和』がある。けれどそんなものは嘘だ。
「正しいかそうでないかなんて、私には分からない。ただ、スカイシティが平和なら、それは世界平和と言えるのではないのか?」
どうしても地上の人間を認めたくないんだな。
怒りはとうに沸点を通り越していた。
「……殺すッ!」




