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反乱計画

 午前一時。僕たちはあのあと宿に帰り、今これから行われる決戦に向けての準備を積んだ。作戦、突撃ルート、戦闘に必要な場所、地形、プロダクトグラウンド内の移動経路。すべてを緻密に計算し、一切の狂いもなく計画を実行できるようにした。

 宿ではシエールさんと、サラちゃんが待っている。軽食用にと、おにぎりを作って持たせてくれた。


「そろそろ、時間だな」


 午前一時という時間は、プロダクトグラウンド内の労働が終わる時刻だ。つまり、午前一時を超えると警備が手薄になり、侵入がしやすくなるということだ。

 僕たち四人にも、緊張が走る。プロダクトグラウンドを破壊するということは、この世界、つまりスカイシティに正式にケンカを売るということだ。

 ちょっとやそっとの気持ちで、起こしていい行動ではない。


「本当にやるんだよな、僕たち」

「何よ、トワ今更怖くなってんの?」

「そんなマツリこそ手が震えてるじゃねーか」

「えぇそうよ! 怖いよ! 何が悪い!?」

「いや別に悪いとは言ってねーよ」


 怖いのは全員一緒だ。もしかしたら、次の日の出は見れないかもしれない。そう思うと、足がすくむ。


「……大丈夫だよ。きっと、なんとかなる。あんだけいろいろ考えたんだから、大丈夫だよ」


 コルルが声を震わせてそう言う。

 ザァっと吹いた風が全身を殴る。真夏のはずなのに、身体中に寒気が走り回っている。


「よし、時間だ。みんな、覚悟はいいな?」


 ヴォルニーが斧を振り上げたその途端、上から何かが降ってきた。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ」


 声を上げて落ちてきた何かは、ヴォルニーと壁の間に着地した。


「ちょっと! いきなり飛び降りるのはないでしょ!」

「アンタが言ったんでしょーが!」


 降りてきた、というより落ちてきたのは、僕たちより背の低い男女だ。男の子の方は赤髪で短髪、ヴォルニーの小さいバージョンみたいな子だ。女の子の方は黄色い髪で、ロングヘアー。二人ともボロボロの服を着ている。いや、服というより布、といったほうが正解まである。


「君たちは?」


 ヴォルニーが斧を降ろして、二人に尋ねる。


「あぁあっあなたたちこそ、何なんですか?」


 男の子が慌てて質問で返してくる。


「今からプロダクトグラウンド……にっ!?」


 コルルはおそらくプロダクトグラウンドに乗り込むって言いたかったんだろうが、言い切る前にヴォルニーに口をふさがれた。


「ただの通りすがりだ。ここには関係ない。君たちこそ、どこから落ちてきたんだ?」


 こんなときも冷静なヴォルニーは頼りになる。


「……私はヒカリ。こっちはエイト。どっちもここのプロダクトグラウンド出身よ」


 女の子のほうがヒカリ。男の子のほうがエイト。


「今日はプロダクトグラウンドに反乱を起こそうと計画してきた日なんです」

「え……!?」


 エイトの発言に、僕たちは目を見開く。


「なんでっ……。プロダクトグラウンド出身の者は、この情勢を知らされずにいるんじゃ……」


 流石のヴォルニーでさえ混乱している。

 当たり前だ。普通に考えれば、プロダクトグラウンドで生まれた奴隷たちは、幼い頃から知性を持たないように育てられてきている。外部との接触なんてできるわけがない。ましてや、反乱を起こすなど絶対にありえないはずだ。


「外では、私たちがまだ何も言わずにタダ働きさせられている家畜と思われてるんだ。案外世界って広いんだね」

「ねぇ、ヒカリちゃん。反乱を起こすってどういうこと? どうやっても二人なんかじゃ」

「だーかーらー! こうやって私たちが外に出てきたんじゃない。外から攻めれば、奴らはそっちに目が行くでしょ? だから、そのうちに内部から崩壊させるのよ。って作戦。だからこうやってヴォルニーさんたちに協力を扇いだんだよ」

「はぁっ!? なんで俺の名前っ!?」

『黙っててごめんなさい』


 突然コルルの持っていたスマホから声がした。

 なんで通話が繋がってるんだよ。


「え? えっ、えっ?」


 コルルを筆頭に僕たちは目を見開いて、コルルのスマホを凝視する。


『実は、私たちはプロダクトグラウンド出身なんです。私たちが逃げ出した十年前から、計画していました』

「計画? もしかして今夜のこと?」

『はい。マツリさんの言う通り、今夜プロダクトグラウンドUSAで反乱を起こします』


 なるほど。だからこの子たちは知識をつけられたんだ。外部からの干渉があれば、誰だってこうなるからな。


『今夜、ヒカリちゃんとエイトくんには、外に出てきてもらってヴォルニーさんたちの先導をしてもらうことになってます。その合図で、中の人たちが武器を持って立ち上がるんです』

「そうです。さっきもヒカリが言ったように、今日の反乱は外部からの攻撃に扮して行います。急すぎて受け入れられないところもあるとは思うんですけど、僕たちの指示に従って欲しいです」


 エイトがそう言いながら、僕たちに頭を下げてきた。


「私からもお願いします。今はあなたたちの協力が必要なんです」


 ヒカリも同様に頭を下げた。


「頭を上げてくれ。もともと俺たちは全てのプロダクトグラウンドをぶっ壊すために世界を回ってる」


 おい、いつ決めたんだよそんなこと。初耳なんですけど。


「だから、何も心配することはない。俺たち四人、散々好きに使ってくれ」


 ヴォルニーの言葉で、ヒカリとエイトの顔があからさまに明るくなる。


「ありがとうございます! では、さっさく動き始めたいと思います。トワさんとコルルは僕についてきてください。ヴォルニーさんとマツリさんはヒカリと戦闘準備をお願いします!」

「ヴォルニーさん、マツリさん、よろしくお願いします!」

「さぁ、僕たちも始めましょうか」


 僕とコルルはエイトの後ろについて、走り出した。

 その直後、ドゴッと大きい音が鳴った。


「ヴォルニーさん、始めましたね。僕たちも中に行きましょう」


 エイトは持っていた爆弾を壁に向かって放り投げた。


「ちょっ? それコルたちも巻き込まれるんじゃっ……」


 コルルが言う終わる前に、ドゴォォォォンとものすごい音を立てて、爆弾が爆発した。

 僕もコルルも目を瞑ったが、爆発に巻き込まれるどころか、いっこうに爆風すら飛んでこない。


「……? どういうことだ?」


 目を開けると、僕とコルルの前に腕を十字に結んだエイトが立っていた。


「説明が遅れましたね。僕の異能は『盾』なんです。こうやって手を十字に交差させると、どんな攻撃でも効かなくなります」


 そうか、異能か。だからこの子たち壁の上から落ちても大丈夫だったのか。同じ異能人として気付けなくて悔しい。


「ほら、中に行きますよ」


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