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作戦

──森の中をひたすら南西へと進み続けて、すでに一時間ほど経った。が、まだ壁とやらは見えてこない。シエールさんによると、村から一時間もかからないらしいので、本来ならもうとっくに着いていてもおかしくない時間だ。


「ねぇ、まだ着かないの?」

「おかしいな。この地図の距離なら、すでに着いているんだけど」


 ヴォルニーがさっきから地図とコンパスを見ながら、ずっと考え込んでいる。


「あ、ヴォルニー! あれじゃない!?」


 コルルが進んでいる方向からみて左の方向を指差した。コルルの指の先をずっと見てみると、確かに人工物らしい壁が目に入った。


「進む方向が少し西よりになっていたのか。そりゃいつまで経っても着かないわけだ。ありがとうなコルル」


 しばらく歩くと、森が拓けたところに出た。そして、目の前には高さ数十メートルにも及ぶ巨大なコンクリートの壁がそびえ立っていた。その壁は右にも左にも延々と伸びていて、終わりが見えない。


「この先……がプロダクトグラウンドなの?」

「そうだな。中の奴隷が逃げ出せないように、こんなでっかい壁で周囲をまるまる囲ってるんだ」

「それはそうとヴォルニー。どうやってこの中に入り込むんだ? どうやっても自力で超えることはできないと思うけど」

「心配すんな。越えられないなら、壊せばいい。どうせ襲撃すりゃ敵との戦闘になる。壁を壊すってのはいい宣戦布告になるじゃねぇか」

「いったぁぁぁぁぁっ!?」


 突然コルルの悲鳴が響き渡る。


「っ!? コルル! 大丈夫か?」


 僕とマツリがコルルに駆け寄る。


「この壁、触ったらビリってきて」


 コルルが右手を押さえている。


「……こいつはただのコンクリートの壁じゃない。その白いとこ触ると、感電するから気をつけろよ」

「先に言っといてやってくれ……。つか壊すったってこんな壁、どうやって壊すつもりなんだ?」

「力で振り切ればなんとかなる」


 あぁそうだった。こいつの力の強さ忘れてた。確かにヴォルニーが本気を出せば、このくらいのコンクリートの壁なんてすぐに砕け散るだろう。


「それで乗り込めたとして、僕たちがやらなければいけないことはなんだ?」

「あぁ、まず狙うのはプロダクトグラウンドの中枢部。つまり運営部署だ。そこには署長をはじめ、プロダクトグラウンドの偉い人たちがいっぱいいる。そこを徹底的に叩くんだ」


 ヴォルニーがノートを取り出して、何やら鉛筆で書き始めた。


「プロダクトグラウンドUSAは、こんなだ円のような形をしている。ここが今いる場所。そんでここが中枢部。乗り込んだらまずここに向かって南下する。奴らが出てきたらそこで戦闘」


 ヴォルニーが地図を描いて、事細かに説明し始める。僕たちはだ円の尖っているところから侵入して、中心を目指す。中心に中枢部があるらしく、そこで奴らと戦う。


「ちょっと待って、ヴォルニー? プロダクトグラウンドUSAの広さってどれくらいなの?」

「なんだ、マツリ知らないのか? プロダクトグラウンドUSAは史上最大の生産都市だ。南北およそ千七百キロメートル、東西およそ二千四百キロメートルくらいあるぞ」


 その広さを都市と呼んでるこの世界が怖いんだけど。


「で、重要なのはそこじゃない。俺たち四人をふたりずつのチームに分ける。一つは今言った戦闘チーム。もう一つは奴隷たちが閉じ込められている建物の破壊と、奴隷たちを解放する解放チーム」

「奴隷たちを解放したあとって、どうすればいいの?」

「戦える奴隷たちを一緒に引きつけて、他の部署を回ってほしい。プロダクトグラウンドUSAは世界で一番規模のデカいプロダクトグラウンドだ。奴隷の数も群を抜いて多い」


 うん。簡単に解放なんて言ってるけど、かなりの無理ゲーだよねこれ。


「なるほど。解放チームは奴隷を味方につけて、どんどんプロダクトグラウンド内に進行すればいいってわけね」

「そう。今マツリが言ったように、解放チームはプロダクトグラウンド内をめちゃくちゃにすればおっけーだ。戦闘チームはひたすら中枢部の奴らと戦えばいい」


 すごく計算された計画だ。流石ヴォルニーとしか言いようがない。


「で、そのチーム分けはどうするんだ? 僕はどっちでもいいんだけど」

「この人選はミスったら間違いなく負けるからな。トワは異能持ちだし、体力のいる開放チームの方がいいだろう」

「じゃあ僕とヴォルニーで開放チームか?」

「ううん。戦略的な意味でコルルも開放チームに入れた方がいいんじゃない?」


 なるほど。マツリの言う通り、コルルは戦場においての戦略を立てるのが上手い。


「僕もコルルはこっち側に必要だと思うな」

「そうか。じゃあ、トワとコルルで解放チーム。俺とマツリで戦闘チームって感じでどうだ?」

「マツリはそれでいいと思うよ!」

「お前は暴れたいだけだろ。コルルとトワはどうだ?」


 僕はコルルと目を合わせる。


「うん、コルは大丈夫だよ。トワは?」

「僕も意義はなしだ」

「じゃあ決定だな。今夜二十五時、それまでにもっとしっかりとした作戦を立てておこう!」


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