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守るべき人

 地面は木の根っこや雑草で埋め尽くされていて、とてもじゃないが台車はうまく進まなかった。ガタガタと揺れる台車をコントロールするのは、思いのほか難しかった。


「マズイな……。スピードが出ない。追い付かれるぞ」


 ヴォルニーが言ったその直後だった。ヴォルニーと同じように斧を持った男が数人、茂みの中から飛び出してきて僕たちを取り囲んだ。


「ライフルじゃ歯が立たないと理解しやがったな……。トワ、コルルとマツリだけ全力で守っててくれ」


 ヴォルニーが言い終わらないうちに、男の中の一人が斧を振りかざして突進してきた。


「どう足掻いたって俺には勝てない……よッ!」


 ヴォルニーは振り向きざまに、男の攻撃を斧で受け流した。


「あまり調子に乗るんじゃねぇよガキィ!」


 自分の攻撃が受け流されたことへの屈辱か、ただの挑発かは分からないが、男が奇声を発してもう一度斧を振り上げて襲ってきた。それに合わせて、動いていなかった他の男たちも、一斉に斧を振り上げた。


炎流斬撃(フレアロッド)


 男たちが斧を振り下ろす前に、ヴォルニーは炎を灯した斧を一振り、二振り、三振り。早すぎて目が追い付かないほどの斬撃を繰り出した。


「目的が貴様だけだとは言ってないぞ!」


 ヴォルニーの斬撃をぎりぎりで回避した一人の男が、こっちに向かって走ってきた。


「……残念だったな。こっちこそ、僕が守られてばかりの弱いやつだって、いつ言ったんだ?」


 僕は木のコンテナの横に挿してあった西方神楽を鞘から抜いた。


「悪いな、マツリ。一太刀借りるぞ」


 一撃で終わらせる。柄を握る右手には余計な力は入らなかった。

 斧が僕の目の前に来た時──

 男の首めがけて軽く刀を滑らした。

 その直後、僕の後ろで血しぶきが舞い上がる。ここまでは計算通りだった。木のコンテナがバキバキと音を立てて崩れるのを確認するまでは。


「っ!? マズイ」


 どうやら倒れた男の手から離れた斧が、木のコンテナに直撃したらしい。

 木の板がバキバキに壊れて、中で眠っているコルルとマツリが姿を現した。

 ピンチだ。非常にピンチだ。


「トワっ!? 何やって……」 


 ヴォルニーが反応して助けに来る前に、他の男が攻撃を仕掛けてきた。


「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


 ガキィンと刃と刃がぶつかる甲高い音が鳴り、火花が散った。男は体制を整えるために一度後ろに飛びのく。僕も刀を払って身体の前で構え直し、敵を挑発する。


「来いよ。久しぶりに刀を振りたかったんだ」

「トワ! 無茶するな、逃げるぞ!」


 ヴォルニーの声が真後ろでした。だが振り向く余裕はない。次々にくる攻撃を刀で受け止め、反撃する。


「逃げるったって、どうやって!? コルルとマツリは!」


 正直この猛攻を刀一本で乗り切れなくなるのは、時間の問題だ。この戦闘態勢はこちらに不利があり過ぎる。


「マツリを抱け――!!」


 いや、その言い方はいろいろまずいんじゃないか。

 けど今はそんなことを言っている場合ではない。伝わればいいのだ。まぁ、当の本人に聞かれていたら、間違いなく引っ叩かれるだろうが。

 タイミングを見計らって、僕は男たちから距離をおく。台車の上で眠っているマツリを確認すると、僕は西方神楽を鞘に戻した。西方神楽を背負い直すと、マツリの膝と首の後ろに手を回してマツリを持ち上げた。それにしても軽いなこいつ。まぁコルルに比べてあるところがないからだろうけど。


「なんとか、マツリは大丈夫だ」

「よし、トワ走れ!」


 ヴォルニーはコルルを抱きかかえてして前で待っていた。ポケットから手りゅう弾を取り出すと、口で安全ピンを抜き、奴らの足元へ向かって投げた。カランコロンと転がり、爆発音とともに白煙が立ち込めた。


「そんなもんどこで手に入れたんだよ!?」

「船の中にあった」

「やっぱおかしいよ! あの船!」


 そんな煙から逃げ出すように、僕とヴォルニーはマツリとコルルを抱きかかえて走り出した。


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