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「出るぞ」

「うん」


 僕たちは搬入口から足を踏み出した。ニューヨークに降り立ったのだ。


「ちょっと待て」


 安心したのも束の間。扉の向こうにいた男に呼び止められた。


「お前たち、その荷物はなんだ」


 疑われるのは当然だ。どうすればいい。僕はヴォルニーを見た。が、僕と違ってさも平然として喋りだした。


「船内で出た生ごみです」

「おかしいな。生ごみならさっき清掃員が二人ゴミ袋を抱えて出て行きおったぞ?」

「日本でこの船に乗り込んできた地上人がいましてな。そいつらを閉じ込めてた牢から出た生ごみですよ。さっきの人は食堂のゴミ担当です。ほら、その証に私たちの制服には清掃員用のエンブレムがついてるじゃないですか」


 ヴォルニーはそう言って左肩を突き出す。僕も同じように、その男に左肩を見せる。

 よく見ると確かに左肩に赤色のエンブレムがついている。


「おぉそうか。疑って悪かった。行ってもいいぞ」

「ご苦労様です。行くぞトワ」


 流石だなヴォルニーは。関心しながら僕はヴォルニーの後ろについて台車を押していく。


「危なかった。まさか船を降りたところで声をかけられるとは思っていなかった」


 どうやらヴォルニーも想定外だったことらしい。


「よくこのエンブレムが清掃員のマークだって気付いたな」

「まぁな。それよりトワ、ここから東に森が見えるだろ。いったんあそこに逃げよう」


 ヴォルニーは港に降り立つと、東の方を向いて歩き出した。


「分かった」


 森までは数十メートル。それまでに見つからなければ脱出は成功だ。

 だが、そうはいかないのが現実というもので……。


「動くな! 貴様らが船から脱走した地上人であることは分かっている!」


 そんな声とともに、数百人の兵士がライフル銃を持って僕たちを取り囲む。


「やっぱり、また見つかったか」

「どうする? ヴォルニー」

「俺が道を作る。全速力で森まで走ってくれ。森に入っちまえばこっちのもんだ」

「了解!」


 僕の返事を待っていたかのように、ヴォルニーは制服を脱ぎ捨て、斧を振りかざして突っ走った。


「殺せぇっ!!」


 指揮官の合図で、一斉に銃弾が放たれる。全方位から飛んでくる銃弾は、もはや避けようもなく身体を貫くだろう。ターゲットがヴォルニーでなければの話だが。

 右足を思いっきり地面に置き、力に任せて斧を一振りした。


巻絞撃刃(クローズ・インパクト)!!」


 斧の残像が見えたかと思うと、竜巻のようなものが生まれた。その竜巻は、飛んでくる銃弾はおろか、ライフル銃を構える兵士たちをも巻き込んでいった。竜巻の風はすべて斬撃であるため、一度飲み込まれると身体が細切れになる。


「うわあああああああああああああ」


 風によって兵士が次々に宙へと舞い上げられ、空中で切り刻まれ、風が通り過ぎると落ちてくる。こうなりゃもう戦意喪失どころか五体満足で立つことも難しいだろう。

 いやいやいやいやいやいや。

 普通斧一本でここまでなるか? 

 と思ったが、ヴォルニーの力の前では愚問だった。

 僕は風が通り過ぎて兵士がいなくなったところへ、台車を押して全速力で駆け出した。


「よしっ!」


 コンクリートで舗装された港を抜けて、森の中へと足が入った。


「まだ敵はいる。もう少し奥まで走ろう」


 ヴォルニーが走って追い付いてきた。


「了解!」

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