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魔法の約束  作者: なが
35/40

35.手作り結婚式

ナイトの婚姻は一気に進む


参列者はあり得ないメンバーだった


「いやいや、君が火竜なのか?ずいぶん若いね」


「はい。竜の平均寿命は2000年なのです。私は今、100歳なので人間に換算するとこの位かと・・・」


「なるほど・・・やはり君は火竜なんだね・・・」


ため息をつくオストロ王だった。

魔法の約束35


手作り結婚式


ナイトは15歳になった。


貴族学院卒業に際して、最優秀賞を貰いアルガーシス領に帰る。その前に、モンス皇国でティアナ=モンス皇女と婚約を発表した。


婚姻はナイトが成人する15才の予定で、1年がかりで結婚式の用意をしてきた。

地方の少領地であるアルガーシス領には、多くの国から出席依頼が舞い込んでいる。


国主としては


サースデン国王

モンス皇王

ギャラク獣王

オストロ国王


その他各国の貴族・・・これは流石に限界がある為、祝いの書状だけにしてくれるよう要請。

それでも、各王族と共にやってくる高位貴族は断れなかった。


王様一人でお越しください・・・とは言えない。


物理的に専用の施設などを用意できない為、街の宿屋に改修資金を出して結婚式の間、ナイトの貸し切りにしてもらった。そのあとは宿屋に、自由に改修した施設を使ってもらう。


各国主にはアルガーシス領は小規模な領地で、宿泊施設が限られており、参加貴族は各々5名までにして頂きたいとお願いしてみた。


各国主から了解の書状が届く。


「ナイトよ、婚姻の参加者が大変なことになっておるぞ!国主だけで5人、他の貴族はその5倍。とても領では賄えん。どうするのだ?」

「これは私の結婚式ですから、この領地で行わねばならないでしょう。他所で結婚式をすれば、その領主と王都の貴族の争いになりますし、王家に頼れば、私が王家に吸収されて、アルガーシス領を継げなくなりそうです」


「領地をいくつかの区画に分ければ如何でしょう」

ルシエルが提案する。


国主の区画、貴族の区画、庶民の区画です。

それぞれの区画には、主たる人員以外は入れないようにします。線引きをしてしまうのです。結婚式前後5日ほどですから、何とかなりましょう」


近習たちが知恵を出し合って構想を固めていく。人間はルシエルだけなので、突拍子もない計画になっていった。


「この一番大きな宿を、国主専用にします。アルガーシス名物他、地元の食材でもてなします。ナイト様はこの宿の責任者になって下さい。

料理や接客は、元々の宿の人間が行います。直接の接待はナイト様と我々近習、婚約者の姫二人にお願いしましょう」


「では、二人を迎えに行って来るよ。打ち合わせに必要だから」

ナイトは転移で花嫁を迎えに行った。


宿には転移専用の部屋が用意され、国主全員を転移で連れてくる予定だった。

ナイトは二人の姫に頭を下げる


「すまない、あなた達は主役なのにこんな事を頼まざる負えない。各国、国主のもてなしだ。宿の人間と打ち合わせしてもらえるかい」

「「もちろんです、ナイト様!」」

「私達もナイト様に色々教えて頂いて、既存の結婚式では満足できません。自分たちの為の、自分たちで作る結婚式をしましょう」


二人はやる気満々、目をキラキラさせている。



宿では各部屋が割り振られ、それぞれの国の名が扉に付けられた。更に冒険者「暁」を指名依頼して、宿周辺の警護とバリヤーによる出入りの管理に当たらせる。


「ご無沙汰、ナイト君。いよいよ結婚式だね!」

「本当に我々で良いのか?」

「ナイト君に貰ったバリアで、宿の出入りは万全よ」

暁のメンバーは街の宿もよく使うため、顔を見れば誰かを判別できる。知らない者は怪しい者・・・となる。


「ナイト、当日は私達を招待してくれるって?」

「はい。自分の結婚式は自分と妻たちで作りたいと思っております」

「手作り結婚式ね。素晴らしいわ!」

「元々、我がアルガーシスで行う結婚式は、質素なものだからな。そんなに豪華にしなくても良いぞ。気楽に友人たちを招待してあげなさい」


両親は出世した息子に全面の信頼を寄せており、ただ、結婚式を楽しみにしていた。親の見栄で豪華な心の籠らない式とは一線を画する。


各国国主は、転移による移動を体験してナイトの特殊性を実感することになる。その気であれば、国主の寝室をいきなり訪問出来る等・・・


「この結婚式は、私達の手作りです。前日お迎えに上がりますので、宿泊の用意をお願いします」

と、伝えられていた。

宿で一泊、各国国主とのコミュニケーションを作っていくつもりのナイトだった。


国主以外の客は特に招待しておらず、自由参加になる。少ない宿に宿泊出来ない貴族達の取り巻きは、貴族エリアにテントを張ることになった。


エリアは暁のバリアで完全に分けられ、一度入ると式当日まで出られない仕様になっている。




式前日、ナイトは各国に転移し、国主と宰相の二人ずつを連れてきた。

「これは・・・」

皆、驚愕に固まっていた。


一瞬で城から宿屋に転移したと思ったら、宿屋の部屋に女性が案内する。その後、他の国の国主達と狭い食堂に案内された。


主催のナイトが挨拶する

「皆様、ようこそアルガーシスへ!それでは自己紹介をお願いします」

王達は学生時代に戻った様に、自己紹介をしていく


「サースデン国王だ。この度は我が国へようこそ!娘のダイアナを紹介する」

「ダイアナ=サースデンです。皆様、本日はありがとうございます。質素な手作りの結婚式ですが、友人皆んなで用意しました。ぜひ、楽しんでいって下さい」ペコリと頭を下げる。


「私はモンス皇王だ。新郎に竜を討伐して貰っての縁だ。娘を紹介しよう」

「ティアナ=モンスです、ご出席感謝致します。拙い結婚式ですが、ナイト様と一生懸命用意しました。宜しくお願いします」と、頭を下げる。案内の待女だと思っていた国主達は、二人の挨拶に驚いていた。そうか、全て手作りなんだ、と、感心する。


「ギャラク獣王だ。ナイト卿には魔王の討伐で世話になった。息子を紹介させて欲しい」

「ガルシア=ギャラクです。ナイト君に助けられました。彼には魔王に征服された故国を救って貰いました」


最後に驚きながら話し出すオストロ国王。

「オストロ国王だ。火龍出現で国家存続の危機から、ナイト卿に救って貰った。救国の英雄ナイト卿、結婚おめでとう」深々とナイトに頭を下げる。他の国主も一緒に頭を下げた。


「ありがとうございます。私も国々を回って、仲間が増えましたので、紹介させて下さい。


待女兼護衛のルシエル、魔法使いです。ケルピー=ニッカ、精霊族です。竜族のナーガラージャ、モンス皇国出身です。同じくオストロで仲間にした火龍のゴウコウです。最後に魔王ルシファー、私の(つが)いです」

若い女性と子供達は、驚愕で固まった国主達に頭を下げて


「「「「「宜しくお願いします」」」」」


と、ニッコリ笑った。

「今回、私の近習を開示したのは、国難が起こった時ためらいなく依頼して頂く為です。私はサースデン王国に所属する貴族ですが、冒険者としても登録しており、皆様の困難を解決する能力が有ります。これを機に、これからもご依頼ください」


国主たちは、やっとこの恐ろしい紹介の目的を理解した。


皆、明るい顔で頷いている。同時に、ナイトを無理に取り込むのではなく、国難解決を依頼すれば良いと結論する。これで、ナイトの奪い合いは回避され、国主同士の疑心暗鬼も無くなっていく方向に歩みだしたと言えた。



そして宴が始まる。

最初は各国で国難の原因となっていた近習が、相当国主に挨拶した。


サースデン国王には、かつて騎士団から報告のあったケルピー=ニッカが挨拶する。

「国王様、ニッカと言います。これからはナイト様の近習として、国を守って参りますのでよろしくお願いします」と、酌をする。

「うむ、よろしく頼む。国としてもニッカ殿達を保護しよう」

大輪の花の様な笑顔で、ニッカはにっこりと微笑んだ。


モンス皇王には、ナーガことナーガラージャが挨拶する。外見上は10歳の女の子、ニコニコと笑顔で皇王に話しかける。

「ナーガと申します、皇王様。先だってはご迷惑をお掛けしました。ナイト様の近習に加えて頂き、命を繋げました。これからよろしくお願いします」

少女から話しかけられた皇王は、今一、ピンとこない。謁見の間で見た竜はそれほど恐ろしかった。

「ナーガがあの竜なのか?命を繋いだとは?」

「ええ。ナイト様ほど強大な魔力があれば、私など瞬殺です。虫をつぶす様にプチっ・・・と、優しいナイト様に感謝です」

「そうなのか・・・ナイト卿はそんなに強いのか・・・」

相談役にしたことに安堵する皇王だった。


ギャラク獣王に挨拶する魔王ルシファー。17・8の小娘に見える。

「我はルシファー、貴国を征服してすまなんだ。これからはナイトの番いとして少し過ごそうと思っておる」

「ルシファー殿の言う番いとはなんじゃ?夫婦ではないのか?」

「それは人間の価値観だ、野生の生き物は番いだろう?子をなす為、番うんだ」

「そうか!婚姻とは人族の価値観なのだな・・・もうナイトとは同衾しておるのか?」

「まだじゃな・・・子を作れる体にはなっておるが、もう少し成熟した方が良い子が出来る」

「何故ナイト卿なのだ?ほかにも相手はいるだろう?」

「いや、魔力の次元が同じなのはナイトだけだ。世界でナイトだけが我と子をなせる」

「しかしそれでは通常、魔王は子孫を残せないのでは?」

「そのとうり!魔王は一代限りが常識じゃ、魔王が子をなすなど、有史以来の事であろう」


いずれにしても、ナイトはとんでもナイトだった。



オストロ国王には、火竜のゴウコウが挨拶をする。

「コウゴウです。御国にはご迷惑をお掛けしました。これからはナイト様の従僕として頑張っていきます」6歳、小学一年生位の男の子は、大人びた口調で挨拶をする。

「いやいや、君が火竜なのか?ずいぶん若いね」

「はい。竜の平均寿命は2000年なのです。私は今、100歳なので人間に換算するとこの位かと・・・」

「なるほど・・・やはり君は火竜なんだね・・・」

ため息をつくオストロ王だった。



各人、挨拶が終わり宴会を経て就寝する。暁が結界を閉ざしたため、何人も入ってこれない。深夜、転移部屋で休んでいた三人が、異常を感知してナイトに報告の念話を飛ばした。

「ナイト様、お気づきですか?結界の外から精神波が向けられています。かなり強力な洗脳波と思われますので、国主の方々に影響すると思われます」


ナイトは急いで起きだし、周囲を探査する。カッツが結界の外に居る僧侶の集団を確認した。

何時ものように、次元を介して転移する。

「何者ですか!ここに泊まっているのは各国の国主様です。何かあれば、首謀国はそれらの国と戦争になりますよ!」

声を掛けると、その集団は逃げ出した。ナイトはそれ以上追わず、カッツに追跡を命じる。首謀者たちはアルガーシス領の教会に逃げ込んでいった。

すかさずカッツが教会の中に入って、ナイトと感覚共有を繋げる。



「失敗であったか!しかし、身元はばれないであろう。国主が一堂に集まるなど無い事だ。成功していれば、わが教会が全ての国を掌握できたのに・・・」

「司教様!このような事はおやめください!ナイト様はみんなの幸福を願っている方です。これは神への不敬です」

シスターが司教と呼んだ人物に反意を告げる。


「シスターイザベラ、これは教会の勢力を拡大する良い機会なのだ。我らに協力せよ」

「いいえ出来ません。神は見ておられます。司教様こそ、お改め下さい」

司教の取り巻きが、シスターを拘束して監禁部屋に閉じ込めた。すると・・・


「こんばんは、とんでもナイトです。悪い子はいねーか!!」


突然現れた少年は、とんでもない魔力を開放した。


治癒魔法を収めた司教たちは、髪の毛が逆立つほどの魔力に動けなくなる。次の瞬間、彼らは消えてしまった。ナイトの収納は何でも収納する。

監禁部屋の鍵を開けてシスターに声を掛ける。

「大丈夫ですか、イザベラさん。助けに来ました」

「ナイト様!!有難う御座います。また助けて頂きましたね」

ホッとした顔で礼をするシスターは、次に困った様に

「この教会の司教様が、良からぬことをお考えです。私たちは信者の治療の為、才能のあるものが厳しい修業を経て魔力を使い(こな)します。その魔力を治療ではなく精神操作に使おうとしているのです。これは許される事ではありません。教皇様に報告せねばならないでしょう」


決心を固めたイザベラに

「明日は私の挙式です。数日動かずに今日の事を報告書にまとめて下さい。教皇への告発は私が同行しましょう」

ナイトの言葉に、うなずいたイザベラだった。




明けて結婚式当日、場所はアルガーシス商業ギルド前の広場。

会場は領民有志達によって、持ち寄られた料理と酒が、所狭しとならんでいた。


「これは素晴らしい!金と権威で用意されたのでは無く、感謝と祝う心で作られている祝賀だね」


各国主達は、流石にその意味する所を察した。それは、領主と領民の理想的な関係性を顕いていた。


「皆さん、ありがとう!私はこの二人と婚姻します。そして、これからも次期領主として、より良いアルガーシスを主導していきます」

挨拶するナイトに続いて

「皆さん、宜しく頼みます。これからは、ナイト様の伴侶として、この領を大切にして行きます」

「領民の幸せが、私の幸せです。皆のしあわせに助力して参ります」

と、二人が挨拶した。


この挙式は、各国主達の目からウロコを落とした。

国の原点に帰った想いに、国主達は背筋の伸びる思いであった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Sランク最強冒険者アルス


竜の祝福を貰い、能力の確認に余念がないS ランクアルスは、一人で研鑽してみた。

冒険者としての基礎的身体能力は飛躍的に向上しており、走る速度は飛ぶように早く、疲れを知らなかった。元々、他者の追従を許さなかったが、10キロを十数分で走破した。加減をしないと、走るだけで周囲の地面を抉ってしまう。


拳は巨大な岩を砕き、剣を振れば風圧で全てを吹き飛ばしてしまう。ただ、この動きには剣が付いていかずに、剣は壊れてしまった。結果、全力で剣を振れなくなっていた。


ここに至って、修練の目的は、如何に手加減するかになっていく。冒険者ギルドでは、入り口の扉を壊してしまう。普段の生活に影響はないが、強めに力を使うと人外の効果が付いてきた。


迂闊に、他の冒険者と喧嘩もできない。軽く押すだけで、相手を殺してしまいかねなかった。


「ナイト君、相談がある。力が強すぎて暮らし難いのだが・・・」

「そうですか・・・では、この指輪をあげましょう。力を抑える効果が有ります。この指輪をしていると、竜の祝福を抑えてくれます。これで普通の生活が出来るでしょう」


渡された指輪をすると、常に湧き上がっていた力が消えた。これでようやく普通に戻ったと安堵した。

「この指輪は?」

「ドワーフの国で使われている、拘束の指輪です」


数日、指輪を使ってみるが、全てが元通りになっていた。

ただ、獲物を狩って解体する時、指輪を外すと悲惨な結果になった。


指輪が必須アイテムになったアルスだった。


国主たちは、ナイトの近習の力を教えられ


国を守れる確信を得た


それはどんな引き出物より有難いものだった

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