29・トンデモ隊の編成とギャラク獣人国
ナイト近習の実力解放
魔王に対峙するナイトは、伝説の腕輪を使い熟していく
魔法の約束29
トンデモ隊の編成とギャラク獣人国
ギャラク獣人国に渡る前に、ナイトはトンデモ隊を編成する。王城の練兵場には、ガルシア一行と宮廷魔法師団の面々が集まっていた。
ガルシア一行は、王城の治療院でエリクサーによる治療を受け、完全に回復している。
「こいつらは少数だが、戦闘力の高い獣人の中でも、王族を護衛する最強の騎士達だ。一人で獣人兵10人と同じ働きが出来る、俺の自慢の部下たちだ」
「今回は、ガルシア様をお守り出来なく、申し訳ありませんでした」
頭を下げる獣人たちにガルシアは
「お前達、ナイト卿の近習の実力は見たであろう。魔人に対抗しうる戦力として頼もしいと思うのだ。
ナイト卿! 今回の戦いでも、魔人以外には一切遅れを取らなかった者達だ。俺を含めて使ってやってくれ!」
「それは頼もしいです。魔人に対しては我々が対処しますが、その他の敵はお任せできますか?」
「はい。私たちは負けません・・・魔人以外には・・・」
「魔人には眷属が何人か居る。こいつらは眷属と互角ぐらいだろう。魔人さえいなければ良い勝負なんだ」
彼らは、ギャラク獣人国最強の戦士であった。通常の獣人兵一人が5人の王国兵と同じ働きをすると言われている。単純計算だと、彼ら一人で王国兵50人分と考えられる・・・頼もしい兵力だった。
連絡要員として参加した宮廷魔導士たちは、ローザを筆頭とする。
「ナイト様、よろしくお願いいたします。皆、家族との別れを済ませてまいりました。如何様にもお使い下さい」
こちらも決死の覚悟を見せる。王国から攻略隊に参加をゆるされた、唯一のメンバーであった。
「よろしく頼みます。ローザさん」
笑顔で歓迎するナイト
「ナイト様、お尋ねしたい事が御座います。ナイト様のその腕輪は魔力の目で見ると、魔力密度が異常です。どうなっているのでしょう?」
「これはドワーフの秘宝との事です。昔、面倒を見たドワーフに礼として頂いた装備です。効果その他、何もわかっていません。これから数日を掛けて検証してみます」
すると腕輪から反応が伝わって来た。
::主様、能力の一端をお見せしましょう。::
::周りに被害が出ない様に頼むね::
::了解いたしました::
腕輪から出た光で、目の前に扉が作られる。
::その扉をくぐって下さい::
ナイトが扉をくぐると、そこは寮のナイトの部屋だった。
::これは?・・・::
::ナイト様が記憶している場所に移動できる扉です。異なる次元を介して繋げますので、距離は関係ございません。他の方もナイト様と接触していれば、ナイト様の一部として一緒に扉を潜れます::
「転移の魔法か・・・使えるな!」
再び元の場所に戻るナイト
「今、何をしたのですか?ナイト様が消えてしまいました」
::この扉は、ナイト様にしか見えません。周りからはナイト様が消えたように見えるでしょう::
::この会話も聞こえないよね。::
::もちろんです。他にも色々出来ますが、今の状況ですと、この力が最有力と思われます::
「転移の腕輪です。魔力を大量に使うので、私以外には使えませんが」
「・・・・・・・・・・・・」
「と、とんでもナイト・・・・」
後ずさりしたローザ以外に、言葉を発する者はいなかった。
ナイトは攻略隊の面々に戦略を伝える。
「魔王に対する前線基地とする為、獣王国の王宮を奪取します。王族の解放を第一目標としましょう。ガルシア、状況の説明を」
「はい。王宮は運河が縦横に走る水の都と言われる所に有ります。本島全体が小さな島々からできていて、外側の長い砂州や海岸の防波堤がこの王宮を外敵から守っています」
「では、海路からの侵入になるね」
「魔王に敗北はしましたが、王宮は正常に機能しており、王族はそこに幽閉されています」
「船の手配と航海はガルシアに任せる。捕獲した船は返そう。手配に掛かってくれ」
「畏まりました」
トンデモ隊は王都を出陣した。
王城の前では国王以下、皆が見送ってくれる。
「ナイト卿、頼んだぞ!」と、陛下
「ナイト様、御無事で!無理をなさらないで下さい」
ダイアナとテイアナが二人そろって激励する。
「ナイト卿、武運を!」
近衛騎士も勢ぞろいで見送る。
「行って来ます。必ずや魔王を討伐して見せましょう!」
力強い言葉に、皆、嬉しそうに見送った。
アルガーシス領では、国王から魔人の侵略を周知された領主領民が待って居た。
到着と同時に、ガルシア一行は船舶の準備に向かう。
領邸でナイトは家族に迎えられた。
「ナイト、頼んだぞ!国を救う使命など、重すぎると思うが・・・」
「父上、ナイトはご期待に応えます。ご安心ください」
「無理をしないで、体に気を付けて!」
母が心配する。
「はい、行って来ます、母上!」
元気に領邸を出ると、港への道は領民で埋まっていた。その中を行くナイトに領民の激励が降り注ぐ。
「ナイト様!魔王を打倒して!」
「国を、アルガーシス領をお守りください」
「信じております。ナイト様」
「ナイト様」
「ナイト様」
群衆は、期待と不安を顔ににじませながら、旗を振っている。
片手を上げて答えるナイト。
隊列は、激励の中を港に向かって行った。
途中でナイト商会に立ち寄る。
「店を任せきりですまないね。何か足りない事は無いかい?」
「店は領民の皆様が大切にして下さり、お母さまも頻繁にお顔を出していただいています。
全く問題ありません。それより、魔王と戦いに行かれるナイト様が心配です」
クラリスが心配する。
「大丈夫だよ。これまでと変わらない。安心して任せてほしい」
ナイトの言葉に、満面の笑顔で頷くクラリスと商会の面々。
「では、後を頼みます」
ナイトは商会を後にした。
アルガーシス港では、獣王国の船は整備され、ピカピカに磨き上げられていた。
物資の補給もされており、既に出航できる準備が整えられている。
暁のメンバーも見送りに来ていた。
「ナイト君!頑張ってね!」
エイリアが励ますと
「今度ばかりは応援だけ。帰りを待ってる」
ミーシャがいつもの様に声を掛ける。
「妹が世話になったみたいで、何時も乍ら感謝しているよ、ナイト君」
「行って来ます、ロイドさん。懐かしい顔が見れてよかったです」
笑顔で握手するナイトと暁のロイド達だった。
そして、乗船したトンデモ隊は領民に見送られ出航していく。
快晴の海を渡っている船内で、ナイトは近習との打ち合わせをする
「ナイト様、魔人についてですが、少し宜しいでしょうか?」
ナーガからの話を聞く。
「以前、ダンジョンで魔人と遭遇した事が有ります。
魔人は幾人かの眷属を従え、ダンジョンの宝を探していました。私の所には斥候が来たのですが、近寄って来ようとしませんでした。思うに、私との戦闘を避けたのでしょう。
魔人と私の力は拮抗していたようです」
「魔人がナーガと同じくらいの強さなら、問題ないね。
あとは、魔王の実力次第で戦術を立てないとね」
「ナイト様の収納で、一気に捕獲できないのですか?」
「魔力量が近いと抵抗されると思う。ナーガを収納した時、収納容量が半分近くになったからね。
僕の収納は収納対象の総魔力量で収納限界が影響されるみたいなんだ」
「つまり、ナイト様の魔力量を超える者は収納できない・・・という事ですか?」
「総魔力量だから、ナーガと魔王を同時には収納できないだろう。魔王一人が収納できるかは分からない。収納に失敗すると、体を食い破られる恐れがある」
「・・・・・・・・・・・・」
「最初は魔人の従魔、次に魔人、最後は魔王と、順に攻略していこうと思う。それで魔王の力が推察できる」
「魔王の力がナイト様を超えていたら?」
「僕が負けるだろうね・・・でも今はこの腕輪があるから、何とかなると思っている」
「その腕輪は、そんなに強力なんですか?」
「転移が出来るから、空間に干渉出来るんだ。次元・・・と言っても分からないだろうけど・・・」
「・・・良く理解できませんが、何とかなると?」
「僕はそう思っているよ。ただし、魔王との戦闘は君たちでは危険なので、戦闘が始まったら距離を取ってほしいね。今回は、君たちを収納に入れて守る事が出来ないから・・・」
「「「「了解いたしました」」」」
::主様、攻撃魔法をお望みですか?::
::どんな攻撃が出来るの?::
::次元断斬が使えます。空間を切りますので、どんな物も切断できます。::
::一度見てみたいから、機会が有ったら使ってみよう::
::御意::
そんな事を話していると、突然船が傾いた。ナイト達は慌て外に出る。
「何があったんだい?」
ナイトが聞くとガルシアが慌てた様子で
「ナイト様、魔鯨です。索敵魔法で監視していましたら、前方に巨大なクジラを発見しました。急遽、回避している所です。しかし何故か、この船に向かって来ます」
「普通、魔鯨は船を襲わないと?」
「船は奴らの捕食対象ではありませんから」
「もしかして魔王の差し金?」
「十分考えられます。このままでは全滅でしょう」
「分かった。対処しよう」
「え・・・魔鯨ですよ?500メートルはあります。対処など・・・」
「これを倒せないと魔王に届かないからね。理想は魔王から降参してくれる事だから」
「・・・・・・・・・・・・・」
ナイトは魔力を開放して、後方から迫ってくる魔鯨に対して船尾に立つ。
次に、カッツをルシエルが浮遊させて視界を確保する。
上空から視認すると、巨大な魔鯨が迫ってくるのが確認できた。
魔鯨が視界に入るまで引き付ける。500メートの魔鯨は船から見ると、視界を遮ぎる巨大な壁だった。乗員達はその巨大さに生存を諦めた。
もうダメだ・・・と・・・
乗員達の前でナイトは両腕を上げる。光り輝いた腕輪と共に、その両腕を魔鯨に向かって振り下ろした。
「キン」
瞬間、音もなく海が割れてズレるーーー空間が両断された。
同じ空間に存在した魔鯨は真二つになり、轟音を上げて左右に分かれる。
次に、ルシエルを呼びカッツを回収する。
そしてルシエルに抱かれたナイトは、以前の様に船を浮上させて波の影響を乗り越えた。
人知を超える大技を目の当たりにした乗組員は、全員その場で固まっていた。命が救われた安堵より、驚愕が彼らを支配した。
ギャラク獣人国王太子、ガルシア=ギャラクは高揚と畏怖を感じて、体の震えが止まらなかった。ナイトの技は人知を超えている。魔王さえ両断するであろう斬撃は、正に敵対したものを破滅させる技であった。
ケロリとして戻って来たナイトは
「次元断斬は腕輪が放ったから、あまり魔力は使わなかったな。浮遊魔法もそんなに疲れなかったしね」
::主の魔力は、使えば使うほど増えていくようです。
今の主の魔力量は、我と繋がった時の倍近くあります。これで、我を使い熟していけるでしょう。
我が伝説なのは、使用者が魔力を使い果たして死んでしまうのが原因です。
これからも、よろしくお願いいたします::
心なしかリングは嬉しそうだった。
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伝説の腕輪とドワーフ
アルガーシス領から帰ったドワーフのゾイドは、ドワーフ王・トールキンに報告をしていた。
「ゾイド、只今戻りました。
途中、不覚を取りましたが、偶然、かのナイト=アルガーシス殿に救われました。今回の使命、ご報告いたします」
「ご苦労だった、ゾイドよ。我が国の脅威となるナイト=アルガーシスの調査、報告を聞こう」
「はい。第一に魔力についてですが、強力な治療魔法を使います。高い知力も感じました。
そして、最も大切な人柄ですが、私欲なく、公平で慈愛に溢れ、周りの者を幸福にしていきます。見返りを求めず、争いを好まず、近習を慈しみ大切にする姿勢は、申し分ない人物かと思われます」
「そうか!それが誠なら、我が国としても彼を擁護しよう。
既知を得て、我が国に招待するのだ。我も会ってみよう」
「それは良いお考えかと!」
「この所、獣王国に魔人が攻め込んだと聞いた。厄介な事に魔王が復活したのだろう。いずれ、かの国も侵略を受けよう。
ナイト=アルガーシスに、ドワーフに伝わる伝説の腕輪を届けよ!
彼に大きな魔力があり腕輪が使えるなら、魔王にも抗う事ができよう」
「早速、お届けします。これよりすぐに向かいましょう」
「伝説の腕輪は諸刃の刃じゃ。故に、世話になった礼とでも伝えよ!ナイト=アルガーシスに、腕輪を使役するだけの魔力がある事を期待しよう・・・」
そしてナイトに腕輪を届ける為、国を立つゾイドだった。
次元断斬を放つ事で魔力を増強したナイト
いよいよ魔族と刃を交える




