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魔法の約束  作者: なが
25/40

25・ダンジョン

今回はダンジョンです


この世界はオーク以上の魔物は倒すのが困難で、対応出来ない国は簡単に衰退します


そういう意味でも、ナイトの存在はチートなのです。


とんでもナイト、ダンジョンでも無双します!!

魔法の約束 25


ダンジョン


ある日の昼下がり、王城の宝物庫に穴が開いているのが発見された。

挿絵(By みてみん)

発見者は最初、窃盗団があけた穴だと思い、その穴に騎士を送り込んだ。ところが騎士が遭遇したのは・・・魔物だった


何とそれは、ダンジョンにつながっていた!



早速、冒険者ギルドからSランク冒険者に白羽の矢が立った。普通の人間の力では、地下から出てくる魔物に対処できない。

ほとんど国防案件・・・モンス皇国の竜と同じ、国が滅びそうな案件だった。


国王の要請により、全ギルドからSランク冒険者が集められた。


王都冒険者ギルドの会議場では、5人のSランク冒険者が一堂に会していた。それぞれが強い力を持ち、独自の技を使う。


討伐チームを纏めるのは、王都ギルドマスター・エリック=ドーラン、統率に長けたSランク冒険者。


「今回のクエストは、王城で発見されたダンジョン入り口の閉鎖だ。ダンジョンの中は魔物が跋扈(ばっこ)しているとの事。諸君の働きに期待する!」

「それならば単に宝物を運び出して、騎士を送り込んで入り口付近の魔物を討伐してから、宝物庫を埋めてしまえば良いのでは?」

「もうその方法は失敗したのだ。埋めた翌日には、同じ場所に又穴が開いていたそうだ。

しかも送り込んだ騎士たちは、命からがら撤退してきた」


「つまり、入り口だけでなく、騎士さえ通用しなかったダンジョンそのものを、破壊する必要があると?」

「もしくは・・・ダンジョンマスターを退治する事だな・・・」

「そ、そんな事が出来るのかい?」

「とにかく・・・少しずつ魔物を削っていくしか無いだろう」


Sランク冒険者は、互いの能力を前もって開示する事をしない。状況によって個別に対処できるものが対処していく。相互に助け合いもしない。足を引っ張るものなど居ないから、とされている。



「明日より討伐を開始する。明日の朝、王城前に集合だ」と、エリックは締め(くく)った。




その後、ギルマスに呼び出されたナイトは少し緊張していた

「何か御用でしょうか?ギルマス直々に話とは?」

「いやいや、楽にしてくれ、ナイト君。まず、今回の討伐を受けてくれてありがとう」

「いいえ、先日Sランクにしていただきましたし、少しは働こうかと・・・」


「今回の件だが、はっきり言ってダンジョンを破壊しないと、この国が滅びそうなんだ」

「そうですね。このまま魔物が国中に拡散していけば、不味いですよね」

「ナイト君はこの危機を救えるのかな?」

「ここだけの話、先日捕まえた竜は従魔にしてますし、問題ないかと・・・」


顔全体が喜びに包まれたギルマス

「この事を陛下に報告しても?」

「構いませんよ。陛下も先行きを知りたいでしょうから・・・」

「ありがとう!そして明日は頼まれてくれるか?」

「お任せ下さい。何の問題もないと、陛下にお伝えください」

「わかった!では、いつも通り・・・」


「「ご内密に!」」・・・声をそろえる二人


そしてギルマスは、スキップしそうな足取りで出て行った。

ギルマスの呼び出しには陛下と違い、お茶とお菓子がつかない。


10歳のナイトは、それが唯一の不満で・・・悲しかった。





学院寮のS クラス、ナイトの部屋で情報を(つの)る。

「ナーガ、ダンジョンに住んでいたんだろ?中はどうなってるの?」

「ダンジョンでは力の強い者は、周りを気にせず暮らしていたわ。他の魔物と遭遇したら、強い方が弱い方を食べるの。


基本的に弱肉強食よ。


そして特に強い魔物は、従魔を従えたりしていたわ、自衛の為ね・・・

でもナイト様は最上位に当たるから、従魔を引き連れてダンジョンに入れば、楽が出来るし安全だわね。

(ちな)みに私は、自分より強い魔物にはここ百年ほど会ったことが無いわ・・・ナイト様を除いてね」


「じゃあ、従者はルシエル、従魔はニッカとナーガそしてカッツで行こう。・・・学院の同級生は無理だね」

「学生さんには荷が重いと思います。足手まといを態々(わざわざ)連れていく事も無いかと・・・」

「それと、周りがSランク冒険者だから暁は今回、外した方が良さそうだね」


そんな事を相談していると、二人の姫がやって来た。

「ナイト様、明日ダンジョンに潜るのですって?」

「そうだね。みんなで行ってくるよ。お土産は無いと思う」

「父に言って騎士を同行させましょうか?」

「いや・・・足手まといだから要らないよ」


二人で悲壮感を漂わせて、心配そうに激励する。

「「それではお気を付けて、行ってらっしゃいませ!」」

「うん、ありがとう。楽しんでくるね!」


「「た、楽しんで・・・・・・・?」」

何か違う、と思う二人だった。





次の日の朝、日が昇る頃には王城の前に冒険者が集まった。それぞれが数人のメンバーを連れている。

「よし、行くぞ!宝物庫まで案内しよう」

ギルマスで指揮官のエリックが先頭に立ち、十数名がついて行く。


途中、国王が見送ってくれた。

「生きて帰ってくるように!無理をしてはならない!」


有難いお言葉を賜った。



「ここが入り口だ!誰から入る?」

「私が行こう」

「あまり固まると、かえって動けないからな」

ひとグループずつ入っていく。ナイトは三番目に入った。


中は壁が光っていて、思ったほど暗くはなかった。

ルシエルが魔法で索敵する。

「ナイト様、前方50メートルに小型の魔物が5匹居ます。多分、ゴブリンでしょう」

ルシエルが、遭遇したゴブリンを魔法で凍らせると、その首をナイトが剣で切り飛ばしていく。


続けて数十体を倒して狭い通路を抜けると、大きな空洞に出た

先に入った冒険者が魔物と交戦している

形勢は有利に進んでいるようで、危なげなく魔物を倒していく。


天井から蜘蛛の様な魔物がバラバラと襲ってきたのを、炎の壁で焼き払うナイト。



すると隣で交戦していた冒険者が毒を浴びた。

転げ回る冒険者・・・その毒は強く、衣服を溶かして身体に浸透していく。


ナイトはすかさず解毒魔法を使って助ける。

全裸に近くなった冒険者は、隠蔽魔法が解けて元の容姿に戻る


「ローザさん?宮廷魔導士のローザさんじゃないですか!こんな所で何をしているんですか?」

「ナイト様、ありがとうございました、そしてご無沙汰しています。

陛下から特命で、影からナイト様をお守りするように、変装して討伐に参加していました。


でも、必要なかったみたいですね・・・」


全裸の体を丸めて話すローザは、目の毒だった。

周りの男達の視線に晒され、赤面していた彼女を黒い結界で衝立を作って隠す。そして、収納魔法からニッカ用の服を出して渡した。


ニッカの服は、その一部をナイトが管理している。

ニッカには常時着服する癖がない為、時々起こる()()を防ぐためである。


ローザは渡された服を急いで着ると「助かります」と言って、脱出していった。


挿絵(By みてみん)


少しでも被害を受けたら、脱出するよう示し合わせてある。事前の打ち合わせ通りの対応だ。

さらに進んでいくと、次々に魔物に遭遇して、脱出する冒険者は当初の半分を数えた。


残った冒険者にナイトが結界を張り、ドーム状に(おお)う。

魔物は中に入れず半透明な結界の周囲を取り囲みながら、互いに捕食しだした・・・共食いである。

もちろんニッカの精神操作が効いているのだが、冒険者からは魔物が勝手に共食いしているように見える。


「少し休憩しよう。そろそろお腹がへったよね?」

そうみんなに声を掛けると、疲れ切った冒険者の一人が話しかけてきた。

「君が噂のとんでもナイトだね。この壁は君が作ってくれたのかい?」

「はい。一度休憩して、食事でも食べませんか?」

「余裕だね。まるで散歩に来ているみたいだ!・・・もしかして、この状況を楽しんでる?」

「そうですね、結構楽しいですね」


「・・・やっぱりとんでもナイトだね・・・」

あきれているが、同時に頼もしそうにもしていた。

「ナイト卿といると、死ぬ気がしないよ」

「死ぬなんてとんでもないですよ。遊びに来ているんですから」


ナイトがにこりと笑う。

「頼もしいね!」

周りの冒険者たちは、改めてナイトの「とんでもなさ」を実感した。


ナイトは土魔法で大きなテーブルを作ると、収納から城で作ってもらった料理を出す。

「皆さん!休憩と食事にしましょう!陛下からの差し入れです。食べてください」

「おお!本当に散歩に来たみたいだ。喜んで頂くよ、ナイト君」

他の冒険者も好きな料理をつまんでいく。大皿に出された料理は瞬く間になくなっていった。


みんなで食事していると、かなり大きなサイの魔物が突進してきた。


挿絵(By みてみん)


冒険者たちは動揺するが、ナイトとその取り巻きは平気な顔で食事を楽しむ。

それを見た冒険者たちも、あきれながら食事を再開した。


食事が終わり、皆、満足げにしているとナイトが

「僕はちょっと昼寝させてもらいます。皆さんも食休みをして下さい」

と言って、収納からベッドを出すと横になってしまう。


あきれる冒険者たち。マイペース極まりないやり方は、強者の余裕であった。



少ししてナイトが目覚めると、大きなあくびをして

「そろそろ行きましょうか!結界を外す前に周りを掃除しておきますね」

そう言うと、ドームの外側に炎の壁が立ち上がり、周囲の魔物を一気に殲滅した。


壁が無くなった洞窟では、冒険者たちが呆然としている。

「さあ!行きましょう」

いつの間にかナイトの取る指揮に、みんなが自然とついて行く形が出来ていた。


奥へ進んでいくと、白い壁の部屋にたどり着いた。

ダンジョンマスターの部屋だ!


その部屋には五体のオーガに守られたオーガキングが待ち構えており、恐ろしい声で吠える。


その戦闘力は、オーク五体でオーガ一体と並ぶ。

冒険者たちは軒並みひるんで、壁に張り付いた。

皆、顔が引き攣る。


最初に動いたのはルシエル

一人で前に出ると、両手を向ける。するとオーガの一体が宙に浮き上がる。

さらに片腕を横に振ると、オーガの体が真っ二つになる。

血飛沫をあげるオーガを、オーガキングに投げつけた。


オーガキングは荒々しくそれを振り払い、血を浴びて真っ赤に染まる。

血まみれの顔はとても怖かった。

冒険者の中にはそれを見て、逃げ出す者が出たぐらいである。


そして他のオーガがルシエルに詰め寄る。


そこへニッカが介入する。

前に出るとオーガの一体を蹴り飛ばす。

蹴られたオーガは大きく飛ばされ、血まみれのオーガキングにぶつかって行く。


さらに残り三体のオーガがナイトに走り寄ると、その爪で小柄なナイトを引き裂こうとする。しかし、結界に阻まれてその爪は届かない。


ナイトは初撃を防ぐと結界を解く。同時に、指先に魔力を集め、火炎魔法を放った。

それはオーガを焼くのではなく、貫き通して三体をまとめて串刺しにした。


さらに流れるような体捌きで、オーガの首を次々と刎ねていく。

挿絵(By みてみん)

すると最後に残ったオーガキングが、大きな声で吠えた。


周りの空気がビリビリと振動する。


その咆哮に冒険者達が首を(すく)めて蹲ってしまうと

今まで大人しかったナーガが、突然一人で突撃していく。


「ああああ・・・危ない!!」

周りの冒険者は悲鳴を上げる。

「恐怖に負けて錯乱しているぞ!」

「誰か押さえろ!あんな小さな女の子、潰されてしまうぞ!!」

しかし・・・潰されたのはオーガキングの方だった。


その小さな女の子はオーガキングに体当たりする。

「どーーーん!!」と大きな音と共に、体当たりされたオーガキングは後ろに吹き飛ばされて、岩壁に激突しそのまま事切れた。

その体は、まるで大きな岩が当たったように(ひしゃ)げていた。


いかなオーガキングと言えど、竜に体当たりされれば・・・ひとたまりも無かった。


振り向いてにっこり笑うナーガの笑顔を、冒険者たちは愕然とした目で見つめていた。


走り寄ったナーガが抱きつく、その頭を撫でるナイト。その左右にはルシエルとニッカ、足元にはカッツが寄り添う。ああ、この四人で国を滅ぼす事ができるんだ・・・と、とんでもナイトの真価を、再認識する冒険者たちだった。



「皆さん、今回の事は御内密に!!」


響き渡るナイトの声に、全員、激しく首を縦に振っていた。




それから、洞窟の奥に小さい部屋を見つけて扉を開ける。中には大きな白い魔石が鎮座していた。

ナーガがそれを持ち上げると途端に、照明のスイッチを切ったように薄暗くなる。

「ナイト様、これでダンジョンは不活性化されました!


私たちがこの魔石を持ってダンジョンを出れば、魔力を失ったこのダンジョンは崩壊するでしょう」


それを聞いた冒険者達は

「信じられん!一日でダンジョンを踏破してしまった!」

と、喜びの声をあげる。


「ダンジョンを出たら、あなた達は英雄ですね。お疲れ様でした」

笑顔のナイトに

「いやいや、全てナイト君のお陰だから・・・」

「お願いですから、()()()()()()にして下さい」




頭を下げるナイトに、ただ黙って頷く冒険者達だった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

宮廷魔導士ローザの報告


宮廷に帰還したローザは身体を綺麗にしてから、自室でいつもの衣服に着替えた。


そして急いで、国王と貴族院長が報告を待つ部屋に赴いた。

「ローザです」

ノックをすると待ち侘びた様に、大きく扉が開かれる。

挿絵(By みてみん)

「ご苦労だった、ローザ。で、討伐は成功したのか?」

「毒を浴びて負傷しましたので、途中までしか居りませんでしたが、問題ないかと・・・」


「もう少し具体的に報告せよ!問題がないとは?」

「最初は冒険者が頑張って魔物を倒しておりました。

しかし魔物は次から次に出てきまして、疲れがピークに達してきました。


私はその時毒を受けて、もうこれで死ぬのだと覚悟した時、ナイト様に助けられました。

その時、ナイト様には私の正体が露見してしまい、全ての事情を話して帰ってまいりました。


少し後を追ってみましたが、最後に見た時、ナイト様は結界で冒険者の休憩所のような物を作っておられ、その中に魔物は一切入れなかったみたいです」

「その後は見ておらんのだな?」


すると貴族院長が、陛下に

「無理ございませんでしょう!むしろ負傷するまで頑張ったローザを誉めてやるべきです、陛下」

「そうだな!ローザ、此度は誠にご苦労じゃった。さすが宮廷魔導師じゃ」

「陛下、私は今回ナイト様の力の一端に触れました。以前見た数値以上に強く、そして優しかったです」


「うむ、ナイトの優しさか・・・他を慈しむ心こそ大切じゃ。能力が高くても心が付いていかねば害になるからの」

「ナイト卿は人格高潔、正に申し分のない人物だと、予々(かねがね)思っておりました」




二人が手放しに褒めるのを聞いて、嬉しく思うローザだった。



ダンジョンコアを奪取して、ダンジョンを攻略したナイト


冒険者たちの感謝と信頼と受け、「御内密に」が炸裂する。


暁に始まった内密方針は、その後も男たちの心を折っていく

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