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魔法の約束  作者: なが
2/40

2・城下町と討伐

冒険者になったナイトは、冒険者パーティーあかつきと共にオーク討伐へ。

魔法の約束2


城下町と討伐


ナイトは8歳になった。


挿絵(By みてみん)


ルシエルへの教育の成果は十分だった。

特殊?教育により、日に日に頭角を現した彼女は

ナイトの生活管理全般を任されていた。

この事によって、ナイトは両親に知られることなく

自由に城下町へ出かけることが、できるようになった。



アルガーシス領は

領主が、貴族位最低の男爵位に関わらず、城を持つ。


通常、男爵領は屋敷と領地であるが、アルガーシス領は海に面している為に、国から特殊な扱いを受け「城」が存在する。

つまり、海からの侵略を防ぎ、同時に海路の交易をするため「城」が必要、というわけである。


さらに、海に面した城からは、魔法による明かりが常に灯っており、海から見た「灯台」の役割を担っている。


領の経済は、海産物と農作物が半々であるが、海産物は日持ちせず、もっぱら領内で消費される。


領地は城側の漁村地区と、反対側の農村地区に分かれている。

両地区の間に町が作られ、漁師と農民が混在して暮らしており、その中心に商業地区がある。


商業地区には、領主の運営する「アルガーシス商業ギルド」があり、海産物と農産物が取引される。


そして周囲には、お金を落としてほしい店が軒を連ねる。

税金は、商業ギルドが物流と共に一括して徴収する為、庶民には税金という概念はない。


当然、消費税も存在しない。(笑)




対して、冒険者ギルドは全世界に存在し、ギルド独自のルールで動いている。


アルガーシス領では、特別に大きな権限を領主に与えられる代わりに、生活営繕組織としての領分が大きく存在する。


領民が望むのは、公平な税制と公平な司法だというが、

共に領主が一括して采配しており、外領に比べて領民は豊かな生活を送っている。


領民の中でも、一攫千金を求めるものは冒険者に登録する。冒険者ランクは下からG、F、E、D、C、B、A、S まである。


最初のGランクはお使い、Fランクは薬草採取など常時依頼、Eランクからはギルドの正式な依頼を受けられる。


Dランクからは、パーティを結成して、集団で依頼に当たる事が許されるがまだ身分は領民である。


しかし、Cランクになるには、

正式に、冒険者としての登録を迫られる。


領民籍は除籍になり、冒険者として登録した身分で他国を渡り歩く権利を得る。(領民ではなくなる)


農業や漁業には従事できなくなるが、若者にとっては魅力的な選択といえる。


ただ、年老いて引退しても領民になるには、大金を払って領民権を購入する必要があるため・・・悩ましいところではある。




ナイトは城下町を歩いていく。


歳格好は、小学2年生位

身なりは、地元の商店の坊ちゃん風。


周りの人も、まさか領主の息子だとは気付かない。


冒険者ギルドに入ると、正面受付の奥に酒場が見え、

数人の冒険者が昼間から酒を飲んでいた。


受付カウンターに行くと、受付嬢はにっこり笑って

「ようこそ冒険者ギルドへ。何かご依頼ですか?」

と、聞いてくる。


「冒険者登録をしたいのですが」

と答えると


「では、こちらの登録用紙に記入をお願いします。

字は書けますか?代筆が必要なら仰って下さい」

「いえ、大丈夫です」と受け取る。


登録用紙に

名前「ナイト」

年齢「8歳」

職業「剣士」

と書き込んで渡す。


「一緒に活動する、パーティの紹介を希望しますか?

紹介を受けられても、御自分で仕事を見つけてられても結構ですよ。


単独でも仕事は有りますし・・・」


「はい、紹介をお願いします」

「では少々お待ちください。

最初のランクは、Gランクからです。


パーティの紹介を受けると、正式なパーティに入り見習いから始められます。


パーティの一員ですから仕事は選べませんが、その分、先輩から色々教えてもらえます。半額は加入するパーティが負担しますから、ギルドへの登録料金も半額になります。


単独で仕事をすれば薬草採取、手紙や軽荷物の配達、草むしりなど、子供の仕事が主になりますが、パーティに入れば討伐や護衛など、高度な仕事に関われますからね」


「そうですね。

色々な経験を積みたいので、

パーティでの活動を希望します」


「今、募集しているのはこちらです」



<パーティ名 あかつき


総人員  6名


ランク A 1名(剣士 リーダー)

    B 4名(剣士 槍士 盾士 魔法使い)

    C 1名(斥候)


Gランクは、荷物持と食事やテントの設営などの雑用が主で、原則戦闘はなし。


報酬は一日銀貨3枚 食事等は支給。



ちなみに、貨幣一枚の価値は

銅貨・・・・100円

銀貨・・・・1000円

大銀貨・・・1万円

金貨・・・・10万円

大金貨・・・100万円

大陸金貨・・1000万円

相当になる。


食事等を支給されて、1日3000円である。

8歳にとっては、妥当な金額だろう。



「このパーティでお願いします」

「では、面接と試験を受けていただきます。

明日、夜明けの鐘が鳴ったら、

ギルドにいらしてください」

「わかりました。ありがとうございました」


受付嬢はにっこり微笑んで「ナイト君は礼儀正しいですね。合格できることを祈ってます」と言う。


・・・どうやら受付嬢は、

好印象を持ってくれたようだった。





翌日、ギルドで待っていると

「俺が暁のリーダーだ。君がナイト君かい?」

と、20代後半の男性が声をかけてきた。


「はい、ナイトです。よろしくお願いします」

ぺこりと頭を下げる。


「本当はFランクを募集していたのだが、ミリアが推薦するそうで試験をするが、ダメなら雇わないよ」


「それでかまいません。

よろしくお願いします。

ところでミリアって誰ですか?」

「君が昨日会ったギルドの受付嬢だ。

彼女の選別眼には定評がある。

ちなみに俺の名はロイド、Aクラス剣士だ」

「はい。では、よろしくお願いします」

「じゃあ、ギルドの訓練場へ行こう。実地試験だ」


2人で裏手にある空き地に着いた。


「木剣を構えなさい」

「Gランクに剣は必要ないのでは?」

「討伐や護衛の最中は、Gランクだから剣が使えません、

とか言っていたら死んでしまうからね」

「わかりました」


剣を構えると、ロイドは威圧を掛けてくる。不快な気が大きくなって、ぶつかって来た。


あからさまに、魔法や体術を使うのはまずいので、判らないように「希薄化」を使う。


魔力で全身を覆い、空気と体の間に魔力の幕を作る。

魔力の鎧のようなもので、使う魔力の強さに応じて攻撃をすり抜けられる。


最初の斬撃をスルリとかわす。

まるで、ウナギを素手で捕まえようとしたときの様に。


さらに横なぎの切り付けを、しゃがんで(かわ)す。

またもやスルリと、剣がとおり過ぎる。

踏み込んで魔力を切り、体当たりをする。


「どん」と、体同士がぶつかって、

軽い方が飛ばされる。


そしてそのまま、起き上がらず様子を伺う。


「そこまでだ!」

ロイドは首をかしげながらも、剣を引いた。

「何とか対応できたようだな。合格にしてあげよう」


こうして「暁」への就職が決定した。


「今の技はどうやったんだ?

いや、冒険者の能力を聞くのは禁忌(きんい)だったな」

「ないしょです。すいません」

「いや、身を守る技は他人に知られない様にしなくてはいけない。


それで良い!


明日、魔物の討伐に向かう。

ある村が、オークに襲われているそうだ」

「わかりました。明日の朝、街門のところで良いですか?」


「ウム。待っているよ。

装備は今のままで良いからね。

食料やテントはこちらで用意する」

「ハイ。わかりました」


その日はそれで別れた。





翌日、門で待っていると、昨日のロイドが他の5人の冒険者を連れてきた。そして、それぞれが自己紹介をする。

挿絵(By みてみん)

「ゼークト Bランク 剣士だ」

「コンバ  Bランク 盾士」

「ハリス  Bランク 槍士だよ」

「エイリア Bランク 魔法使いよ」

「ミーシャ Cランク 斥候よ」


 

ゼークトさんは20代後半で冷静沈着、身長170センチぐらい。


コンバさんは10代前半で闘志満々、210センチぐらいの大男。


ハリスさんは20代前半で、ひょろっとしているが、身長は180センチぐらい

挿絵(By みてみん)

エイリアさんは20歳ぐらいで、茶色の肩までの髪と瞳をした女性。160センチぐらいで胸が大きい(汗)

挿絵(By みてみん)

ミーシャさんは10代前半で150センチぐらい。ショートカットで、赤い髪と青い瞳のスレンダーで素早そうな体型をした女性だった。


「ナイト Gランクの剣士志望です。

今回が初仕事なので、よろしくお願いします」

挨拶してペコリと頭を下げる。

挿絵(By みてみん)

「ナイト君はしっかりしているけど、

年はいくつなの?」

「8歳になりました」・・・いわゆる小学校2年生


「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」


「ロイド、ちょっと若すぎないか?

このまま連れて行くのは危ないだろ!」

「今回はオークの群れだからね。

おんぶ紐でおぶったまま戦うのは、無理があるわよ」

「荷物運びは無理なんじゃないか?

保護者は何してるんだ」

「育ちの良さそうな子供だから、親は金持ち。

怪我でもさせたら、私たちが追い込まれるのじゃ?」


「いやいや、模擬戦をしてみたんだが、

俺の剣を(かわ)して、体当たりされたんだ。

実践なら俺が切られてたかも・・・」


「「「「「・・・・・・・・・・・・・」」」」」


「僕は、自分の事は自分で守れますから大丈夫です。

心配なら、僕がけがをしても文句を言われないように

誓約書を書きますよ」


「実力は俺が保証する。

速度と見切りは一流の域だ」


「じゃあとりあえず、

持てるだけで良いから荷物を持ってみて」



荷物運びも雇用条件の一つなので、アイテムボックスは開示することにした。


「荷物はどれですか?」

「こちらに積んであるわ。

持てるだけ持ってみて」


荷車一杯分、6畳の部屋があれば入るかな?くらいの荷物。


荷物のそばに行き、一気に収納する。


「「「「「「え・・・・・」」」」」」


「何をした?

荷物はどこへいった?」

「収納魔法を使いました。

いつでも出せますよ」


荷物を出して見せる。


「・・・どうしてナイトはGランクなんだ?

そんな大きな収納魔法があれば、無条件でBランクだろ?」

「収納魔法を、おおやけにしたくなかったので、

隠して登録しましたから」


「なるほど、囲い込みを恐れたんだな」

「囲い込みって?」

「収納魔法は千人に一人くらいしか、

使い手がいないんだ。


だから、能力がばれると貴族や王族から

強制的に囲い込まれて、自由を奪われる。


ここの領主ぐらいの地位が無いと、危険なんだ」


「じゃあ俺たちを信じてくれて、魔法を見せたのか?」

「はい。どっちみち収納を使わないと不便ですし、冒険者同士、相手の能力をばらすのは禁忌ですよね。

冒険者の禁忌を破れば、、、明日、川の中に浮いていたって、不思議じゃないですし・・・」


「わかった。この話はこれまでだ。

荷物を収納してくれ。早速出発するぞ!」



個人で使う手荷物だけ各人が持ち、速足で目的地に向かう。

「これなら、予定の半分以下の時間で着けるな!」

「ナイト君。疲れたらおぶってあげるから、遠慮せずに言ってくれ」

「有難うございます。疲れた時はお願いします」


「うーん、こんな弟だったら欲しいわね」

「これからよろしくね。ナイト君!」

「こちらこそ、よろしくお願いします。ミーシャさん」

「こちらこそ」


しばらく歩くと休憩を取る。

収納魔法と偽ったアイテムボックスから、食事をだす。アイテムボックスは、時間経過がないことに加えて生き物も収納でき、容量限界は無限になる。


時間経過のある収納魔法は、この世界の常識では(酸素消費に問題があり)、生き物は死んでしまうので収納できない。

容量と魔力消費量は比例するため、収納量と収納時間が限られるのが常識である。


しかも、収納魔法を使っている間は、

常に魔力を消費する。



アイテムボックス・・・とても便利である。


反則である。

転生による能力だから魔力も必要としない。


・・・・・これは絶対秘密。




「もうすぐ目的の村だ。ミーシャ索敵を頼む」

「了解」

ミーシャが先行する。


「俺たちは、今の場所にとどまり報告を待つ。

索敵結果をもとに作戦を立てる。各人、休んでいてくれ」


ナイトは自分の索敵魔法で周囲数キロを確認する。村を中心にオークが散開しているのがわかる。オークキングが指揮するオーク軍団は通常のオークよりかなり厄介だ。


襲われた村人が、一か所に集められて縛られている。女、子供はおいしいので、真っ先に食われる。


総個体数43頭。

キング1頭を頭に、ジェネラル2頭が残り40頭を統率している。もはや、軍隊で対処するレベルだ!

冒険者には手に余る。


挿絵(By みてみん)


ミーシャが返ってきて、蒼白になりながら報告する。

「だめ!数が多すぎる。

少なくとも40頭近い上に、

オークジェネラル2頭とオークキングまでいる。


すぐ引き返して応援を呼ばないと、

私たちは全滅するわ」


報告を聞いたメンバーは総毛だった。

「見つかったら終わりだ。

すぐ引き返すぞ!」

ロイドがすぐさま決断する。


その時、大きな笛の音が鳴った。

オークに見つかったのだ!

オークは鼻が利くため、隠れてやり過ごすことはできない。


この時点で詰んだと、皆が理解した。

「ナイト!君だけでも逃げろ!

俺たちはどうせ助からない。

時間を稼ぐから、君だけでも逃げてくれ」


・・・決断を迫られた。

オーク自体は問題ではない。


このパーティに、アイテムボックスを知られても良いのか・・・の迷い


しかし結論はすぐに出た。


「皆さんを助けます!


でも、今回の件は誰にもしゃべらないと、

守秘の魔法契約をしてもらいます。

了承していただければ、すぐに動きますが、

如何(いかが)でしょう?」


「この状況を何とかするなど、

恐怖で気がふれたのか?

・・・無理もない。


さあ、早く行くんだ。

来た道を走り抜けろ!」


「私たちの足止めを無駄にしないで。

ナイト君だけでも生き残って!」


話しているうちにオークが押し寄せてきた。もう話している暇はない。


魔力を練ってオークの群れにぶつける。

同時にみんなを、アイテムボックスへ収納した。


次に、さらわれた村人たちのもとへ向かい、彼らもアイテムボックスに入れる。次いで、村人の死体も収納した。


探知魔法で取り残しがないかを確認してから、魔法を使う。

挿絵(By みてみん)

インフェルノ!!


あたり一面に、43本の強烈な炎の柱が立ち並び、炎が収まると、一面が焦土と化していた。次いで、溶けた岩や地面を冷やすために、冷却魔法を使う。



そして周囲から一切の音が消えた。



こんなに大掛かりな魔法を使うのは初めての事なので、魔力を半分ぐらい持っていかれた。

今後これは、改善の余地がある。



そして、パーティの6人をアイテムボックスから出した。


時間停止機能により、収納された彼らが瞬きした瞬間、すべてが終わっていた。


きょろきょろ不安そうに周囲を見回している。


「どうなったんだ?」

「オークが消えている」

「地面が焦げてるわ」


「「「「「「・・・・・・・・・」」」」」」




討伐を終えて、次回は暁と魔法契約をします。待女ルシエルの能力も成長し、二人で暁メンバーとの関係を深めていく話です。

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