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エッセイアラカルト

同じカタチなのに、まったく違うモノ

作者: 降井田むさし

◎僕がパニックになったことを、自作自演インタビューで、書いていきたいと思います。





●あなたがパニックになったのは、どんな状況だったんですか?


⇒朝、出勤している時です。自転車でいつものように、会社に向かっていました。


⇒半年ほど、行ったり来たり、来たり行ったりを繰り返している道ですよ。でも、その時の脳のタイプによって、色々と変わるんですね。





●パニックになったのは、自転車関係とかですか。自転車の漕ぎ方などですかね。それを、忘れてしまったとか。


⇒いえ、違いますよ。チェーンが外れた自転車じゃないんですから。そんな空回りの脳には、ならないですよ。


⇒看板です。看板を見て、パニックになりました。いつもより、詳しく看板を読み込み過ぎた。それが、原因でした。


⇒よくあるじゃないですか。このお店まであと何キロ、みたいな看板。あれです。あれを見て、パニックになりました。





●あのような看板に、特に何も変わったものは、無いように思いますが。


⇒それがあるんですよ。その日は、調子が良かったみたいで。体調というか、すべてひっくるめて、良かったんですよね。


⇒僕は最新Wi-Fi内蔵型パソコンか。そうツッコミたくなるくらいの、脳の回転スピードでした。


⇒あの、矢印ってあるじゃないですか。三角形と四角形が、融合したみたいな。それの上向きのやつ。上矢印です。


⇒その上矢印って、何かに似てると思いませんか。上に三角形、下に四角形がある形です。





●それは、媒体で流せるものですよね。コンプライアンスに引っ掛からないやつは、分からないです。何ですか?


⇒家です。家のイラストの形って、上矢印に似てるんですよ。ほぼ、上矢印なんですよ。


⇒そんな家のイラストの中に、店名が書かれたロゴ。それが、ドンッと大きく描かれた看板。そんなのが、あったんです。


⇒住宅関係のお店の看板ですね。それで、パニックになりました。あっ、えっ、えっ、てなりました。





●パニックになる要素が、あるように思えないのですが。


⇒想像してみてください。大きな家のイラスト。その左上に小さく『手前1km』みたいな文字と、Uターンマークがあったんです。


⇒直進だと思いませんか。直進マークって、上矢印なんですよ。デカい家のイラストは誰でも、直進マークに見えますよね。


⇒直進マークがあるのに、手前1kmですよ。もうパニックですよ。


⇒看板の9割5分を占める、直進矢印みたいなデカデカな家イラスト。そこにUターンマークもあったら、どっちだ?ってなりますよね。





●それは、直進したらその住宅関係のお店があるって、錯覚に陥りますね。


⇒そうですよね。でもいつもは、見てないんですね。


⇒自転車のヘルメットのアゴヒモの、フィット感が良くなくて。どうも、ヘルメットが顔に馴染まなくて。いつもそればかり、考えているからですかね。


⇒あとは、休みの日に行きたい飲食店を、物色しているからですかね。このお店は、美味しいのかな、みたいに。





●ちなみに、Uターンマークと直進マークは、どう違うのでしょうか。Uターンマークがどんなものか、教えてください。


⇒Uというアルファベットありますよね。それを、ひっくり返した感じです。


⇒その右下の端に、vがくっついている感じです。小さいvです。


⇒分かりやすく言うならば、[ヘルメット腕組み首ブリッジおじさん]という感じですかね。少し反りすぎかもしれませんが。





●手前1kmと書いてある看板の裏には、直進1kmと書いてあるのが、ほとんどですよね?


⇒そうでした。看板の裏を見てみたら、直進と書いてありましたよ。


⇒しかも、デカい家のロゴの左上に、ロゴとまったく同じカタチの上矢印があって。そこに、直進と書かれてました。


⇒きっと、同じ比率ですよ。まったく同じ、比率だったと思います。家イラストを縮小して、そのまま使用した矢印、みたいな感じです。





●その住宅関係のお店に行く予定は、あるのでしょうか。


⇒無いですね。一戸建てを買う予定はないです。それに住宅に、何かしらの変化を加える予定もないので。


⇒あと、トラウマのようなものがあるんですよ。あんなことがあれば、住宅関係のものから、背きたくなりますよ。


⇒最近、起きたことなんですけど。住宅関係で、色々ありまして。あれを見たら、みんな住宅関係から、一歩引くと思いますよ。





●何があったのでしょうか。良かったら、教えてもらえますか?


⇒あまり知らない場所を、自転車で走っていたときの話です。交差点に、住宅展示場の案内みたいな人がいたんですけど。


⇒あれです。住宅展示場はこちらです、みたいな看板を持った人です。プラカードっていうんですか。あんな感じのやつです。たぶん、バイトの人だと思います。


⇒たまに見かけますけど、いつもは特に気にならないんです。でもその時は、かなり気になってしまいました。





●背筋が伸びすぎた、バイトさんだったとかですか?


⇒いえ、その逆です。トラウマなので、良くない方です。背筋が伸びすぎているのもある意味、怖いですけど。


⇒アウトドアチェアっていうんですか。布と骨組みだけのやつ。あれに、案内人は座っていました。


⇒背もたれは直角で、少ししかないタイプのイスですよ。背もたれが少ないタイプの、アウトドアチェアですよ。


⇒なのに、背中で座ってたんですよ。膝の方が頭より、上に来ていたかもしれません。その状態で、スマホをいじくってました。ダルそうに。





●持ち看板は、どうなってましたか。


⇒すみません。背中座りのインパクトが凄くて、あまり覚えてませんね。


⇒持っている感じはしませんでした。なので、イスにうまく括り付けたか。関節をうまく使っていたか。それか、魔法ですかね。


⇒こんな出来事があれば、住宅関係NGになりますよね。なりますよね。





●矢印みたいな住宅関係のお店の看板で、どのくらいパニックになったのか、他の出来事で例えてください。


⇒スーパーマーケットで、野菜を選んでいたとき。主婦二人の二台のカートで、その野菜売り場に閉じ込められたんです。斜め付けでですよ。


⇒そのときと、同じぐらいパニックになりました。そのときは、1分近く、身動きがとれませんでしたから。





●最後に、お聞きします。あなたにとって、住宅とは。


⇒そうですね。住宅とはですね、住むところですね。はい。


⇒今、気がついたんですけど。家は、住む。上矢印は進む。[すむ]と[すすむ]。なんか、似てますね。


⇒看板をデザインした人が、色々狙ったとか。故意にやったとか。無いですかね。無いですね。

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