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新カードゲーム開発

作者: 雉白書屋

 昨今のカードゲームブームは凄まじい。

 レアカードの値段が高騰。そもそもカードパックを買うこと自体、困難だと聞く。

 そこで、ブームにあやかり、わが社にもカードゲーム開発部門が

作られたわけだが……前途多難とはこのことだ。

 今更、新規参入など、しかも許可取りと資金の問題で

漫画やアニメを基に作る事もできず、完全オリジナル。

追い出し部屋なんて社内で噂も……と、なんだ? 今の声は。

開発室のドアの方から――


「いくぞ、俺のターン! ドロー!」


「さあ、来るがいい!」


 ほほう、テストプレイか。白熱しているようだな。

 うんうん、そうだな。まず、自分たちが熱中しないとな。

大人も楽しませてこそ、だ。子供騙しでは子供も騙せないと言うからな。

 邪魔するのも悪いから、このドアの隙間からしばらく様子を見るとするか。


「手札よりスペルマホウを発動!」


「それはこのカウンタースペルマホウで無効だ!」


 うんうん。名称など大手と被らないようにしないとな。

訴えられたらクビだけじゃすまないかもしれん。


「いくぞ! プレイフェイズ! サキュバスナイトでプレイヤーを攻撃!」


「高圧中年でブロック!」


 ほほう、しっかりとバトルしているようだな。

 勝敗はどうつけるのだろう。ライフ制かな? 攻撃力とかあるのかな。


「今度は俺様のターン……ドロー! よし、サキュバスクイーンを召喚!

そしてサキュバスレディと共にプレイヤーを攻撃!」


「カウンタースペルマホウ発動! 『ダウンタイム』

これでお前のキャストはこのターン行動不能!」


「くっ、やるな……貴様のターンだ」


「ああ、行くぜ! 俺はこのターンでサキュバスガールを召喚し

さらにスペルマホウ『指名バック』を発動! 

これによりデッキから新たなキャスト、サキュバスバルキュリアを入店させる!」


「くっ、俺はその瞬間『説教おじさん』の効果発動! 手札に戻れ!」


「だがサキュバスヴァルキリアの効果で

サキュバスニューフェイスをデッキから入店させ更に――」


「サキュバス多くなぁぁい!?」


「あ、室長!」

「おかえりなさい、担当していただくイラストレーターさんは決まりそうですか?」


「いや、まあ何人か目星はつき、これから交渉をと思っていたが

……いや、そんなことよりも君たち、モンスターがさ」


「キャストと呼んで欲しいんだぜ!」

「フン! 親しみと愛情を込めてそう呼ぶのだ!」


「んん? ちょっと見せてくれ……地雷嬢、ソープリンセス、デリヘルメンヘラー

もしやと思ったらやっぱりか! なんだこれ!? 風俗嬢か?」


「フウン、ご名答。これは風俗をモチーフにしたカードゲームなのだ!」


「その通りだぜ。女の子のキャストカードでプレイヤーを攻撃。

それを男の迷惑客カードで防御。そしてスペルでサポートしていくんだぜ!」


「いや、説明されても、こんなものは……」


「そして、事前にサイコロを振って決められたお互いの耐久回数

つまりライフを零にした方が勝ちとなる」


「迷惑客カードにもそれぞれ耐久回数があるから注意が必要だぜ。

更に風俗嬢カードにも忠誠度があり、攻撃する度に減っていき

それが零になると飛ぶんだぜ!」


「飛ぶ、つまり墓地送り、使えなくなるんだね。

いや、それより君、風俗嬢ってはっきり言ったね……」


「一ターン休ませるかサポートカード、主にホストで回復させるのが鍵となるわけだ」


「いやいやいや無理だよこんなの! 子供に売れないだろ!」


「でも昨今のカードゲームの高騰は、いい大人が夢中になっているからですし」

「既存のものと差別化が重要と仰ったのは室長ですし」


「だからと言ってなんでこんな……うわ『スペルマホウ』?

スペルマと魔法の組み合わせ、なんて言葉遊びだ……。

それに『バイブ』に『ローション』

迷惑客カードは『盗撮おじさん』『酔っ払い』『本番強要男』」


「装備カードを使うことにより、相乗効果を生むんだぜ!」


「フウン、迷惑客カードは防御としては強力だが、デッキに多く入れると

気分が悪くなるからバランスが大事になるのだ」


「ちょくちょく口調が変わるね君たち……。まあ、それはどうでもいいとして

いやしかし、なんて品がない……。

どうせ作るなら自分たち好みのエロいほうが良いとでも思ったのかい?」


「いやいや、そんな! 天啓ですよ天啓。

それに、どうせなら可愛い子に攻撃されたいっていうのは共通の思いでしょう? なあ?」


「ええ。たまたま看板が目につきまして。

フラっと立ち寄ったところ、そこが何と風俗店でして」


「嘘つけ! 狙って行っただろう!」


「なのでこれ、領収書です」

「研究目的なので予算からお願いしますね」


「無理だっての! 発売自体できないよ!」



 と、思われたのだが、意外にも好評でこの新しいカードゲームは全国展開された。

結局、物を言うのはイラスト。

女の子が可愛い! と風俗嬢とその客の間で流行ったのである。

 主にアダルトショップに卸され、グッズと共に陳列。

収集目的と風俗嬢への差し入れとして買われるばかりで子供の目には届かなかったが

高値が付けられたカードは現金に換えたい風俗嬢からカードショップにも流れた。

 ショーケースの中で独特な存在感を放っているそれを

遠くからチラチラと覗き見る子供の姿は

レンタルビデオショップの18禁コーナーを気にするあのソワソワした感じとよく似ていて

それを見た者たちをどこか童心に帰らせたのであった。

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