天使の本音
私、天音愛は前世の記憶がある。こういうと年齢も相まって厨二病と言われかねないので親にすら話していないが自分は前世、天使であった。物語でよくあるような世間を知るために現世へやってきた訳でもなにか良くない事をして現世に落とされたいわば堕天使でもない。ただただ順番が回ってきたから現世に転生し普通に生きているだけである。そんな認識を幼い頃から持っていたために私はみんなの天使であり続けようとしていた。実際に「いとちゃんは天使みたいだね」と子供の頃はよく言われた。誰にでも分け隔てなく接し、みんなに優しく愛想を振りまき、見た目も万人受けだけを考えていた。そうすることが別に辛いとは思っていなかった。しかし誰も私が天使だったことなど知る由もないし天使であったとしても私のことを嫌う人はいるしと最近それを放棄しかけている。それに対して自己嫌悪に陥ることもある。現世の環境も、周りの人達も、腹を痛めて産んでくれた母もそんな母を支えている父も大好きだ。だからこそみんなの天使であり続けられない自分に価値はあるのかと思ってしまう。これはそんな考えを持っていた私が恋をし、みんなからの愛、自分の価値を知る物語である。