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第6話 少しでも伝わっていると良いな

 コートに入ると試合をしていた同学年の男子から、緑色のビブスを受け取る。俺のナンバーは6だ。


 赤いビブスを着た敵チームの5番がセンターサークルに入る。俺の身長は175cmだけど、チームの中では低い方なので、うちのチームは一番背の高い4番の男子が中に入った。


 全員が定位置に着くとピーっと体育の先生が笛を鳴らし、バスケットボールを高く上げる。センターサークルに居る二人は、ほぼ同時にジャンプをし──味方の4番が俺の方へとボールを叩いた。


 俺がボールをキャッチすると、前を走る味方の10番が「光輝、パス!」と声を掛けてくる。


 敵の7番が邪魔をしてきたが、俺はフェイントを入れてからフワッと高いロングパスを出した──パスは敵チームに取られる事なく通り、10番はドリブルをして、そのままレイアップシュートを決めた。


 よし、良い滑り出しだ! 俺はチラッと星恵さんの方に視線を向ける。星恵さんはシュートを決めた10番の方を見ながらパチパチパチと拍手をしていた。


 味方の7番が俺の背中をポンっと叩き「ほら、星恵をみてないでディフェンス、ディフェンス」


「いや、みてないし」と、俺は照れ隠しで言っていた。


 ──それから試合が進み、残り1分となる。俺達は10対12で負けていた。まだシュートも決めてないし、ここは頑張りたい所!


 敵チームが攻めてきたが10番が敵のパスをカットする。俺はすかさず、ゴールに向かってダッシュした──。


 10番がドリブルで運んでくれたが、敵の5番に邪魔される。


「光輝がフリーだぞ!」と、4番が叫んでくれたお蔭で、10番が気付く。10番は上手くバックロールターンで敵をかわし、速くて鋭いパスを俺に出した──。


 無事に俺は受け取ると直ぐにドリブルを始める。ドリブルは得意じゃないが、敵チームはまだ離れた場所にいる。きっと追いつかない


 ──ゴールに近づくにつれ、ドキドキが早くなっているのが分かる。ここで入れば同点! 良い所を見せられる大チャンス……何としても決めてやる!!!


 俺はゴールの近くに来るとボールを持ち、いつものように1……2……と足を踏み出し……あれ? 3歩目を地面についてしまう。


 ピピッーと笛が鳴り、無情にも先生が「トラベリング」と告げた。

 

 あぁ……緊張してやってしまった……へこんでいると「光輝、気にするな。まだ試合は終わってない」と10番のクラスメイトが声を掛けてくれる。


「うん!」と俺は返事をしながら、ディフェンスに戻った──それから少しして笛が鳴る。俺達は結局、同点に出来ず終わってしまった。


 俺は項垂れながらコートに出る。良い所を見せるどころか、恥ずかしくて星恵さんに合わせる顔がない──俺はクラスメイトと離れた場所で観戦をし、時間を潰した。


 ※※※


 球技大会の閉会式が終わると、俺は直ぐに家に帰った。自分の部屋に行くと、通学鞄を床に置き、ベッドに横たわる。


「疲れた……」


 幸いにも、あの後、チームメイトの誰からも責められる事はなかった。だけど、クラスメイトの誰かに馬鹿にされているかもしれない。そう思うと気分が晴れなかった。


 天井をジッと見据え「はぁ……」と溜め息をつくと、携帯の着信音が鳴る。俺は制服のズボンから携帯を取り出す。


「星子さんか、このタイミングで珍しい」


 メールを開くとそこには『今日は勝負にこだわらず、気になるあの子に頑張る姿を見せる事が大事!』と書かれていた。


 あれ? 内容は合ってるけど……ちょっと来るのが遅かった? ──まぁ、良いか。頑張る姿ねぇ……それだけは、ちょっと自信がある。だから……気になるあの子に、少しでも伝わっていると良いな。


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