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第44話 これで一歩進めたね

 俺達は回転寿司から出ると、並んで歩き始める。


「さて、何処に行こうか? この辺だったら、色々とありそうだけど」と俺が聞くと、星恵ちゃんは人差し指を顎に当てる。


「今日は天気が良いから、少し散歩しようか?」

「分かった」


 星恵ちゃんは人差し指を顎から離すと「──お疲れ様、今日はありがとうね」


「うん」

「気疲れしたでしょ?」

「まぁ……全くしてないとは言えないけど、星恵ちゃんのお父さんとお母さんが、気を遣ってくれたから、割と大丈夫だったよ」

「そう。そう言って貰えると嬉しいな」


 ──そこで会話が途切れ、俺達は黙って歩き続ける。


「今日さ──」

「ん?」

「星恵ちゃんのお父さんと、お母さんをみてて、こんな夫婦になりたいなって思った」

「え!? う、うちみたいな!?」

「うん。離れて過ごしていたのに、全然そんなところを感じさせないしさ、上手く言えないけど、なんかこう……温かい所が感じられた。それに──」


「それに?」と星恵ちゃんは俺を見つめながら首を傾げる。


「子供を気遣っている姿が、本当……素敵だなって思った」


 星恵ちゃんは恥ずかしかったようで、頬を赤く染め、俯き加減で歩き始める。


「あ、ありがとう……」

「うん」


 ──少しそのまま歩いていると、星恵ちゃんが寄り添ってきて、自分の腕を俺に絡めてくる。


「少し早かったけど……これで一歩進めたね」

「うん、そうだね」


 ──青く澄み渡る空の下、俺達は良い雰囲気のままデートを楽しんだ。


 ※※※

 

 それから数日後の御昼。俺達はファストフード店で、食事をしていた。


「でさぁ──」と俺が話しかけると、星恵ちゃんは携帯をみながら「へぇ……」と生返事をした。


 最近は、こんな事が増えてきた。原因は何となく分かってる。だけど俺は探りを入れるため「どうかしたの?」と聞いてみる。


「どうかしたって?」

「返事に元気が無かったから」

「──何にもないよ」


 星恵ちゃんはそう返事をして、ハンバーガーを食べ始める。


「そう?」


 この程度の探りじゃ話してくれる訳ないか。俺はとりあえず、先に話を進めるか考えながらハンバーガーを食べ始めた──。


 俺は口の中のハンバーガーをゴクッと飲み込むと「あのさ──」と星恵ちゃんに話しかける。


「なに?」

「──星子さん。最近、大丈夫かな?」


 それを聞いた星恵ちゃんは眉を顰め、明らかに不快な表情を浮かべる。ハンバーガーをトレーに置き、口を開くと「──何でそれを私に聞くの?」


「何でって……星恵ちゃんの知り合いなんでしょ? だから気になって」

「あー……そういう事。──大丈夫じゃない? 知らない」

 

 星恵ちゃんは不機嫌そうにそう言って、またハンバーガーを手に取った。最近の星子さんは不調なのか、SNS内の評判が良くない。


 占いなんて当たるも八卦当たらぬも八卦、それを理解して占って貰っている人もいるけど、当たらない事に対して、批判する人も少なからず出てくる。星子さんは、その人に標的にされ、面倒なやり取りを続けていた。


 星恵ちゃんの態度からして、大丈夫じゃない気がする。潰れる前に、彼氏としてどうにかしてあげたい! でも一体、どうしたら良いんだ。


 俺はそう考えながら、ジュースを飲み始めた──少しすると、星恵ちゃんはジュースをトレーに置き、口を開く。


「あのさ──」

「ん?」

「もし……もしだよ?」

「うん」

「星子さんが居なくなったら、光輝君は困る?」


 それを聞いて、あんなに面倒ごと巻き込まれても、辞めなかった理由が分かった気がする。嬉しい反面、申し訳ない気持ちになった。

 

 さて、どうする? ──いや、どうするじゃないだろ。答えは決まってる。


「正直に言うと、困る事はあると思う。だけど、続けるかどうかは本人の気持ち次第だから、無理強いはしたくない。いまの現状だったら、俺は間違いなく休んでくださいと声を掛けると思う」

「そう……分かった。その気持ち、伝えておくね」

「ありがとう」


 それから数日して、星子さんはSNSで無期限休養することを書き込む。少し寂しかったけど、ホッとした気持ちの方が大きかった。


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