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第39話 光輝君はそういうタイプだね

 小鳥のさえずりが聞こえる爽やかな朝。俺は駅の外で星恵ちゃんを待っていた──数分すると、薄茶のハンドバッグを肘にかけ、白のワンピースにデニムのジャケットを羽織った星恵ちゃんが近づいてくるのが目に入る。


 何だろう……久しぶりっていうのもあるのかな? 更に大人の女性になった様に感じる星恵ちゃんをみて、ドキドキが止まらない。


 星恵ちゃんは俺の前で立ち止まると、ニコッと微笑み「久しぶり!」


「久しぶり。今日は爽やかな恰好してるね。そういう服装も似合ってるよ」と、俺は恥ずかしくて目を逸らしたい気持ちを必死に抑えながら返事をした。


「でしょ~。光輝君は……珍しく赤いリュックにしてるんだね! 似合ってるよ!」

「ありがとう。今日のラッキーカラーなんだ」

「へぇー……そうなんだ。良い事あると良いね!」

「う、うん」


 なんか、あっさりしてるな……外れだったのか? 星恵ちゃんの方は、花の形をした可愛いピアスはしてるけど赤じゃなくて白だし、口紅は赤と言えなくもないけど、どちらかというとピンクだ。見る限り赤い物はない。


「行こうか?」

「あ、うん」


 俺達はゆっくり駅の中に向かって歩き出す──だったら、占いのラッキーは褒めて貰えるって事だったのかもしれない。まぁ……嬉しいは嬉しいけど、ちょっぴり物足りなかったかな。


 ※※※


 俺達は電車を降りると、バスに乗って目的地の遊園地に向かった──。


 チケット売り場でチケットを買って、入場すると、星恵ちゃんに向かって「まずは何処から行こうか?」と聞いてみる。


「混んでて入れなかった嫌だし、まずは新しく出来たお化け屋敷へ行きましょ!」

「了解」

「光輝君。パンフレット、リュックにしまってあげる」

「ありがとう」


 俺は立ち止まると、パンフレットを星恵ちゃんに渡す。星恵ちゃんは受け取ると俺の後ろに回って、パンフレットをしまってくれた。


 星恵ちゃんは俺の横に並ぶと「お化け屋敷、メッチャ怖いらしいよ」と、さり気なく手を繋いでくる。


 え? もしかして、手を繋ぎたいからパンフレットをしまってくれたのか!? そうだったらメッチャ可愛くないか、俺の彼女!


「へぇ、そうなんだ。そいつは楽しみだな」と、俺は心の中ではテンションが上がっているのに、冷静に返しながらゆっくり歩き始める。


 星恵ちゃんも合わせて歩き始めた。「怖いからって一人で逃げ出さないでよ?」


「そんな事する訳ないじゃん! 逆に守ってあげるよ!」


 俺がそう言うと、星恵ちゃんは俯き加減で「──ふふ、そうだね。光輝君はそういうタイプだね」と照れくさそうにしながら、笑った。


 俺は照れ臭くて言葉を失い、自分の髪を撫でる事しか出来なかった──そのまま歩き続け、お化け屋敷の前まで来ると俺達は立ち止まる。


 入場する時間が遅かったこともあり、お化け屋敷には既に30分以上待ちそうなぐらい人が並んでいた。


「結構、人いるね。やめておく?」と、俺が質問すると、星恵ちゃんは俺を引っ張りながら「せっかくだから行こうよ」


「分かった。じゃあ並ぼう」

「うん!」


 俺達は列の最後尾に並ぶ──それにしても良く出来てた建物だな……本当に廃校のように見える。


「このお化け屋敷って確か、ホラー映画をもとにして作ってるんだよな?」

「そうそう。私、その映画を観てるんだけど──」

「どうした?」

「うぅん何でもない。どれだけ再現されているか楽しみって思って」

「そう。俺は初めてだから、もうドキドキしているよ」


「ふふ。ところでさ──」と、星恵ちゃんは世間話を始める。星恵ちゃんとの会話は楽しくて、あっという間に、自分たちの順番がやってきた。


 中に入るとヒンヤリ冷たい風が吹いてくる。


「おぉ。演出、凝ってるな」

「ねぇ、建物の中も本当の学校みたい」

「本当。夜の学校を歩いているみたいだ」


 星恵ちゃんと会話をしながら、ゆっくり廊下を歩いていると──突然、背中を何かで刺される!


「わぁ!!」


 驚きながら後ろを振り返ると、ブレザーの学生服を着た男が、押すと引っ込む玩具のナイフを両手で持って、震わせていた。


「お、お前が行けないんだからなッ!!」と学生服を着た男は走り去っていく。俺はポカァーン……と口を開けながら見送った。


「あー……びっくりした。あれは誰?」

「ナイフで刺して、呪いを広めていく役目の男の子」

「へぇー……似てるの?」

「痩せ型で長髪の所が似てるよ」

「そ、そう……」


 俺はそう返事をして、歩き始める。星恵ちゃんは冷静に会話をしていたけど、怖かった様で、俺に引っ付きながら歩いていた──。


 奥に進めば進む程、仕掛けが凝っていて、俺は何度も驚かされる。廊下を歩いていると突然、ガラスが割れる音がして、俺はビクッと体を震わせた。


「おわぁお!! いきなりガラスが割れる音なんて鳴らすなよ!!」


「きゃ~、怖いぃ~……」と、星恵ちゃんは叫び? ながら、俺の腕に体を密着させる。


 それは嬉しい! 嬉しいけど!! さっきから気になることがある──。


「ねぇ、怖いから早く行こうよ」

「あ、うん」


 ──数分程、歩いているとゴールの下駄箱が見えてくる。お化け屋敷の外に出ると俺は「これはヤバいな。高校の時に行ってたら、絶対、夜一人で歩けなくなってた」


「ねぇ。怖かった!」と星恵ちゃんは言っているが、全然、怖そうだったように見えない。それどころか、満足そうに笑顔を浮かべていた。


「──ねぇ、星恵ちゃん」

「なに?」

「もしかしてだけど……お化け屋敷に誘ったのは、引っ付いていたかったからなんじゃ……」


 ここで俺はお化け屋敷の中で気になったことを質問してみる。こちらに顔を向けていた星恵ちゃんは直ぐに顔を逸らし、目を泳がせながら「そ、そんな訳ないじゃん! なに言っちゃってんのさ!」と、動揺している様子を見せた。


 当たりだな。セリフっぽい怖がり方をしていたから、そうだと思った。


「なんだぁ、違ったのか。ごめんごめん」

「まったく……」

「次はどうする?」


 星恵ちゃんは腕時計をみると「そうね……良い時間帯だし、御昼にしましょ!」


「いいね。何食べる?」

「私はピザが良い!」

「ピザかぁ、あるかな?」

「うん。さっき待っている間にパンフレットを確認したんだけど、入り口付近にキッチンカーがあって、そこで売ってるみたい」

「さすが。じゃあ、そこに行ってみようか」

「うん!」



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