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第30話 これで悔いのない文化祭を過ごせそうだよ!

 授業が終わると、クラスメイトの男子が数人、俺の席の方へと集まってくる。


 一人のクラスメイトは俺の肩に手を乗せると「井上。良くやってくれた! これで悔いのない文化祭を過ごせそうだよ!」


「はぁ……それどうも」


 俺はそう返事をして、席を立つ。周りに居る男子の顔をみると、喜んでくれているのが良く分かる。


 だけど──全員ではないとはいえ、数人の女子には確実に恨まれているだろうな。


 俺は教室に居るのが気まずくなって、「ちょっと失礼」と、男子生徒を押し退けながら、そそくさと廊下に出た。


 飲み物を買って落ち着こうと廊下を歩いていると──トントンと優しく肩を叩かれる。足を止め振り向くと、そこには星恵ちゃんが立っていた。


 星恵ちゃんはニコッと微笑むと「さっきは助けてくれて、ありがとう。私、人見知りだし、面と向かって占う自信が無かったから、嫌だったの」


「やっぱりね、そう思った」


 俺はそう返事をして、ゆっくり歩き出す。星恵ちゃんも合わせて歩き出した。


「──ねぇ、光輝君」

「なに?」

「さっきは何でメイド喫茶を提案したの?」


 星恵ちゃんにそう質問され、恥ずかしくてカァ……と体が熱くなる。


 俺は髪を撫でながら「え~……えっと……漫画とかでよく文化祭にメイド喫茶が出てくるじゃん? それで思い浮かんで……咄嗟に……」


「なぁーんだぁ……私のメイド姿が見たかったから、提案したのかと思った」


 思いもしなかった返答に、俺はビックリして星恵ちゃんの方に視線を向ける。星恵ちゃんは自分で言っておいて恥ずかしい様で、正面を向いたまま、顔を赤らめていた。


 そんな星恵ちゃんの姿をみて、メッチャクチャ可愛いじゃないか……と、ドキドキしてしまう。


「──まぁ……それもあるよ。ってか、そっちの方が強かったかも」

「え、本当に!?」


 星恵ちゃんがこちらに顔を向け、眩しい笑顔を見せるので、今度はこっちが顔を見られなくなる。


「うん、本当に」

「嬉しい……じゃあ、私。本当は裏方に回ろうかと思っていたけど、注文を受ける方になろうかな?」

「え? だって人見知りなんじゃ……」

「君に喜んで貰えるなら、そんな事も忘れちゃうぐらい頑張れちゃうよ。だから……当日は絶対に遊びに来てね」


 俺はそんな嬉しい事を言ってくれる星恵ちゃんの方に顔を向け、「うん、絶対に行くよ」と、約束をした。


 ※※※


 文化祭の当日──俺は買い出し係だったので、前日に全てを終わらせている。途中で買い出しを頼まれない限りフリーだ。


 俺は適当に他のクラスの出し物をみて、時間を潰す──文化祭を嫌いって人もいるけど……俺は好きな方だ。こうやって活気の溢れる廊下を歩いていると元気が貰えるし、ワクワクする。


 俺は中庭でやってる露店で、フランクフルトを買って食べると、自分たちのクラスへと向かった──。


 教室に着くと、教室の外まで人が並んでいるぐらい喫茶店は大繁盛していた。女性客もいるけど……やっぱり男ばかりだな。


 さて、どうするか……と、俺は並ばずに考えたが「時間はまだまだあるし、並んでおくか」と、呟きながら最後尾に並んだ。


 30分ほどして、ようやく教室に入れる。当たり前だが席は全席埋まっていて、メイド服を着たクラスメイトの女子が、忙しそうに駆け回っていた。


「おい、田中。お前、井上に噛みついていた割には注文係なのかよ」

「うっさいなぁ。詰まってるんだから早くして!」

「そう冷たくするなよ。超、似合ってるぜぇ」

「な、なにを言い出すのよ!? まったく……」

「お、良いねぇ。その顔」


 田中さんがクラスメイトの男子に、からかわれている。でも本人は顔を赤くして、まんざらでも無さそうだ。


 それより星恵ちゃんは……と、探していると、カーテンの後ろから星恵ちゃんが出てくる。


 フリッフリの白いエプロンに、スカートの丈が膝よりちょい上の黒いワンピース着て、灰色のリボンをつけている。他のクラスメイトと変わらないメイド服なのに、彼女だからだろうか? 格別に可愛く見えた。


 それに食品を扱うからか、ポニーテールにしてる……ポニーテールも滅茶苦茶、似合っていて、ずっと見ていても飽きないぐらい可愛い。


「お、見ろよ。裏から、めっちゃ可愛い女の子が出て来たぞ」と、俺より前に座っている目つきが悪い茶髪の男が、隣に居る友達らしき男に話しかけた。


 私服を着ているし、見た事ないから、この学校の生徒ではないな。同じ年ぐらいに見えるから、他校の生徒だろうか?


「俺、ぜってぇあの子に注文する」

「俺も俺も」


 気持ちが悪い……こんな奴らに星恵ちゃんのメイド姿が見られていると思うと、虫唾が走る。今すぐカーテンを持ってきて、隠したいぐらいだ。


 今日の朝。星子さんからメールが届いていて、そこには15時に自分の教室に行くと吉と書かれていた。多分、星恵ちゃんの休憩時間がそれぐらいなんだ。


 何だか胸騒ぎがする……俺はズボンから携帯を取り出し、時間を確認した。


 今はまだ14時、どうするか……俺は──少し考えた後、席を立ち、一旦教室を出た。確か注文受付係は5人。そのうちの4人は教室に居たから、高橋さんは休憩しているはず。


 俺は高橋さんを探しに歩き回った──あ、居た。俺は高橋さんに駆け寄ると「高橋さん」と、後ろから声を掛けた。


 高橋さんは足を止め、こちらを振り向くと「あ、光輝君。どうしたの?」


「あのさ、今って忙しい? お願いがあるんだけど」

「お願い?」

「星恵さんと休憩時間を交代して欲しいんだ」


 高橋さんは眉を顰めると「別に構わないけど……待たせている人が居るの。その人と話をしてからで良い?」


「うん、分かった。ごめん、急に」

「うぅん、大丈夫だよ」


 俺は高橋さんの返事を聞くと、直ぐに教室に戻った。思いのほか時間を使ってしまった。あいつ等の順番が来ていないと良いけど……。

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