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第2話 図書室で勉強をすると吉!

 その日の夜。寝る準備を済ませ、ベッドで横になっていると、星子さんから『明日の放課後、図書室で勉強をすると吉!』と、ダイレクトメールが届く。


 勉強か……確か明後日、数学の小テストがあると言ってたな。家じゃ勉強なんてやらないし、丁度いいか! 何が起こるんだろ、俺は楽しみにしながら眠りについた──。


 次の日の放課後、俺はメールの通り図書室へ向かう。図書室はガラガラで、本を選んでいる女子生徒と受付の女の子、そして──長テーブルの前に置かれた木の椅子に座って、勉強している星恵さんだけだった。


 どうしようか? さすがに隣や真正面に座るのは勇気がいる……俺は星恵さんの斜め前に座り、通学鞄を置いた。


 星恵さんは気付いていない様で、コツコツとシャーペンの音を立てながら勉強を進めている。


 俺も教科書とノートを取り出すと、勉強を始めた──少しして、星恵さんの方から聞こえていたシャーペンの音が止まった。


「光輝君」と、星恵さんが小声で話しかけてきて、俺は星恵さんの方へ顔を向ける。


 星恵さんはシャーペンで自分の前の席を指し、「そこ、空いてるよ。良かったら、どうぞ」と言って微笑む。


「あ、うん。ありがとう」


 俺は小声でそう返事をして、星恵さんの前の席へ移動した──。


「光輝君も小テストの勉強?」

「うん」

「私も」


 星恵さんはそう返事をして、俺のノートをジッと見つめる──突然、前屈みになって、俺にグッと近づくと、シャーペンでノートを指した。


 ちょ……目のやり場に困る。目を逸らすと、星恵さんは「そこ、間違ってるよ」


「え、本当?」

「うん、私が教えてあげようか?」

「あ──うん。お願いします」


 本当は解き方を知っている。間違っていたとすれば単なる計算ミスだ。でも──いまのこの状況がフワフワと心地よくて、もう少しこうしていたいと思ってしまった。


「──これをこうして……こう。ね、簡単でしょ?」

「うん、ありがとう」

「どう致しまして」


 星恵さんはそう返事をして、姿勢を戻す──それから俺達は黙々と勉強を続けた。会話は無かったけど……充実した時間を過ごせた気がする。


 片付けが終わると俺達は一緒に図書室を出る──。


「光輝君、そういえば星子さんに占って貰った?」

「うん」

「どうだった?」

「うーん……まだ一回しか占って貰ってないけど、当たってるかもしれない」


 星恵さんは後ろで手を組むと「でしょ!」と、嬉しそうに笑顔を浮かべた。


 ※※※


 朝起きると、星子さんからダイレクトメールが届く。そこには『今日は傘を持っていくと吉!』と書かれていた。


 傘ねぇ……雨が降らなかったら恥ずかしいし、邪魔だから……折り畳み傘にしておくか。


 俺はベッドから起き上がると──クローゼットの中から折り畳み傘を取り出し、通学鞄の中に入れた。


 ──放課後になり、俺は玄関へと向かう。歩きながら、ふと廊下の窓から外の景色をみると、雨が降っている事に気付いた。ふぅ……占いを信じて傘を持ってきて良かったな。


 玄関に着くと、髪の毛を少し濡らした星恵さんの後姿が目に入った。雨宿りをしてるのかな? 


 俺はとりあえず靴を履き替えると、「星恵さん、どうしたの?」と、話しかける。


「あ、光輝君。いえね、天気予報を見てなくて、傘を持ってこなかったの」と、星恵さんは言って苦笑いを浮かべた。


「あぁ……」


 傘を持ってるけど……一緒に入る? なんて聞いたら、気持ち悪いなんて思われないかな? 俺は星恵さんの横に立ち、止むかもしれないから様子を見る事にした。


「──止みそうにないね」

「そうだね」

「一緒に走って帰っちゃおうか?」


 もしかして、占いで傘を持っていけば吉って出たのは、この為だったのかな? だったら──。

 

「えっと……実は俺、折り畳み傘を持ってる」


 俺はそう言って、鞄から黒い折り畳み傘を取り出し、勇気を振り絞って「一緒に入ってく?」と、誘ってみた。


 星恵さんは明るい笑顔を浮かべ「え、良いの!?」


「うん、星恵さんが大丈夫なら」

「私は大丈夫だよ、ありがとう」

「うん」

 

 俺達は並んで歩き出す。昇降口を出ると同時に傘をさした──普通の傘にしておけば良かったな。


「ごめんね、狭くて」

「うぅん、平気。光輝君の方は大丈夫? お互い濡れない様に、もうちょっと近づこうか」


 星恵さんはそう言って、柔らかい腕の感触が、ブレザーの上からでも分かるぐらい、体を近づける。おぉ……星恵さんには悪いが、ラッキー!


「──考えたら私達って、あまり話した事なかったね」

「あぁ……うん、そうだね」

「じゃあ……せっかくだから趣味、聞いちゃって良いかな?」


「良いけど……」と、俺は返事をして頬を掻きながら「誇れる様な趣味は無いよ?」


「そうなんだ。それでも聞いてみたいな」

「そう……俺の趣味はゲームに漫画、後は……釣り」

「へぇー……釣り。海?」

「うぅん、家の近くにある○○池で釣ってる」


 俺がそう言うと、星恵さんは「池かぁ……」と呟き、考え事を始めたのか、人差し指を立て顎に当てる。


「星恵さんの趣味は? やっぱり占い?」

「うん、あとは光輝君と似たような感じ」

「そう。じゃあ、また君と踊りたいって漫画、知ってる?」


 俺がそう聞くと、星恵さんはポンっと両手を合わせ「知ってる! 知ってる! 光輝君も恋愛系、読むんだ」


「うん、割と好きな方」

「へぇー……あの漫画、今度、映画になるらしいよ」

「まじで!? そいつは楽しみだな」

「うん、そうだね! ──じゃあ光輝君、この漫画も知ってるかな」


 こうして俺達は漫画の話で盛り上がりながら、楽しく帰った。

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