5.オーダーメイド
適当な武器屋に入って、剣を見る。だが……店においてある剣は基本、しっくりこない。
前世俺が使っていた剣は確か、オーダーメイドで作ってもらった記憶がある。値段は高くなるが、やはりそっちの方がいいだろう。
なので、武器屋の店主に聞いてみると、
「剣を作ってくれませんか?」
「お嬢さんにはまだ早いよ。大きくなったら、またうちに来な」
そう言われてしまった。どうしよう……ギルドマスターのアリスのところに行こうかな……昨日部屋にいたしきっと今日もいるはずだが……
俺は店を出て数分歩く。冒険者協会の建物がだんだんと見えて来る。昨日は確か、あそこの窓から帰ったのだ。
冒険者協会の建物の裏に入って、人に見られないよう気配を消し、飛び上がる。
そこそこ高い建物だが、風魔法でバランスを取って中を確認する。と、アリスと目があった。アリスはため息を吐きながらも立ち上がり、窓を開けてくれる。
「何の用だ」
「剣が欲しいんだ。作ってくれる所を教えてほしい」
「はぁ……分かった。少し待ってろ」
そう言うとアリスは机に戻り、何やらペンで紙に文字を書き始める。
「出来たぞ、紹介状だ。これを持って、武器屋のサレドに行って店主に見せろ」
「ありがとう!」
丁寧に窓を閉めて、静かに地面に着地する。そしてそのまま歩き始めるが、武器屋のサレドなんて知らない。さっき行った店は違う名前だった。
「誰かに聞くか……」
俺は優しそうな人を探しながら歩く。冒険者協会の周りは少し体のゴツい人達が多いので、少し離れて色々な店が並ぶ、大通りに入る。
その大通りで優しい気配の一人で歩いている、フードを被った女性を見つけて、肩をトントンと叩く。
「すいません」
「何か……用ですか?」
「武器屋のサレドってお店、分かりますか?」
「ああ……そこに行きたいの?」
「はい!」
「着いてきて」
よし。一発できた。最近少し思うが、前世の時よりかは優しい人が増えた気がする。強い気配を纏っている人は少し減った気がするが。
数分間特に会話もせずに、フードの女性に付いていき、サレドと看板に書かれた店につく。
「ここ」
「ありがとうございます」
俺がお礼を言うと、フードの女性はまた一人で静かにどこかへ向かう。それを少し見送って、店の中に入った。
「なんか用かい?」
店の中には一人大柄の男がいて、こちらを見てくる。おそらくこの男が店主だろう。俺は渡された紹介状を取り出す。
「これを」
そう言いながら店主に渡すと、店主は驚いたように顔を歪ませて少しの間黙り込む。そして、
「分かった。どんな剣を作って欲しいんだ?」
どこか納得出来ていない顔で、そう聞いてくる。俺は壁にかけてある大剣より一回り小さい剣を指さして、
「長さと太さはあれぐらい」
そう言うと店主は、その剣を壁から外して少し重そうにしながらこちらに持ってくる。
「持ってみろ」
それを言われるがまま受け取り……そこそこしっくりきたので振ってみた。
何回か振って、店主は特に何も反応しないので見てみると、少し顔を青ざめていた。片手で振ったのが間違いだったのだろうか。まあ、それは置いておいて、俺は近くにある少し装飾が施された片手剣を取り、店主に剣を渡す。
「装飾はこんな感じで」
店主は何度か黙って頷き、二本の剣を受け取ると、威勢のない声言う。
「明日、好きなときに来てもらえれば……」
「お金は?」
「明日でいいです」
俺は一応礼をして、店を出る。明日また夜に抜け出してここに来るなら……少し道を覚えて帰ろう。俺はそう思って少し散歩をする。
改めて思うが、高い建物もちらほらあってこれで王都ではないのだから凄い。本当に人間の発展というのは早いものだ。
建物も木ではない建物があるし、道もちゃんときれいだ。
大通りを抜けて少し細い道に入る。昔より治安も良くなっているのか、裏路地に入らない限りは嫌な雰囲気もない。
しばらく歩き続けて、大体の道を覚えた頃、嫌な視線を向けられて、あとをつけられ始めた。
気配から二人組の男と分かる。どうしよう……撒こうと思えばすぐに撒けるが、人に見られてしまう。細い道に入るか。
俺がそう思って、細い道に入ろうとした時、後ろに別の気配がして、
「つけられてるよ」
そう声が聞こえる。振り返ると、さっきのフードの女性だった。だが、ちょっと先程とは違い林檎が詰まった紙袋を手一杯に持っていて……どうしよう。
「その……どうすれば……」
「私が何とかしてあげる」
そう言うと、その女性はつけていた男達に歩いて近づき、剣を抜く。
「これ以上つけたら殺すよ」
すると男たちは慌てながら逃げて行く。なるほど……そうすればいいのか。一つ学べた気がする。
俺は何故かニコニコしながら帰ってきた女性に、お礼を言う。
「ありがとうございます」
「気にしなくていい。気を付けてね」
「は、はい」
フードの女性が立ち去ると同時に、俺も帰ろうと歩き出す。すると、
「あっ……君、名前は?」
「ミーヤ、です」
「ミーヤ……良い名前だね。ばいばい」
「はい……」
手を振るその女性は、一瞬フードの隙間から青色の瞳が輝く。俺も一応手を振って、歩いて人の少ない場所まで行く。
そして、走り出す。いつものように家に帰って、部屋に素早く入ると、そのままベッドで眠りにつく。
明日はきっといい剣が手に入る。そう思うと、楽しみで……俺は珍しく少し眠りにつくのに時間がかかった。
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