小6のセックス。55才のセックス
「ゴムだな。ゴムを使えば問題ねーよ」
迫田さんは俺の顔に煙草の煙を吹き掛けながらそう言った。いくら屋上だからって子供にこんな事するか? だが、やはり迫田さんは頼りになる。他の大人だったら小学生の俺が『彼女とセックスしたい』なんて言ったら激怒するだろう。
パンチパーマで頬と額に刃物傷。ぶっとい腕。ぶっとい脚。でっけー身体。
とても看護士には見えないが俺が心臓の病気で入院していた時は本当に世話になった。
退院した今でもめちゃくちゃ頼りにしている。
「ガッハッハッ!しっかしいいなー!おいっ!俺も結婚してた時は毎日ズッコンバッコンよ!……子供は出来なかったけどよ。種無しだったのかなぁ?」
「うまくいかねーもんだね」
「生意気言うんじゃねー!まぁゴムだ。絶対ゴム!セックスしたら子供が出来る事は知ってるよな?」
「そりゃーね」
「子供ってのは愛の結晶だ。てめーの人生を全部捧げても後悔ないってぐらい好きな女としか作っちゃダメだ!それだけ守れば好きなだけズッコンバッコンしなっ!好きで好きでしょうがねー奴とのセックスはそりゃーもう幸せで気持ちいいぞ~!ガッハッハッ!」
そう笑うと迫田さんはベンチに寝転がって文庫本を読み始めた。
迫田さんはいつもこの本を読んでいる。
何度も読んでいるからボロボロだ。
「それ。俺も読んだけどしんどいよ」
「おめーにゃまだ早いか」
人類が絶滅した世界で主人公のロボットがただ種を撒いて育てる話。放射能で汚染され土に何度も種を撒いて育てて耕し、芽が出て、枯れてまた種を撒く。
何十年もかけてロボットは初めて花を咲かせ、その美しさに感動し、また種を撒く。
「これぞ人生よ。人生。諦めない心。トライアンドエラー。成功!感動!」
「……人生ねぇ」
その物語が人生ってなら人生ってあんまり面白くなさそうだな。
・
・
「ゴム?」
「うん」
「それ付けるの?えーっ?ボールペンの蓋みたいになってるー。おもろーい」
俺たちは部屋に入るなりランドセルを床に投げ捨てて裸になってベッドに潜り込んだ。
彼女の母さんが帰ってくるまでに済ましたい。
「じゃあセックスしよう」
「うん」
まぁ。なんというか。うーん。こんなもんかなぁって感じ。そこまで別に。想像以下って言うかさ。
俺はこんなセックスをこれから20年続けることになる。
・
年下、年上、老若『男』女。国籍問わず俺はセックスしまくったがどのセックスの感想も「うーんまぁこんなもんか」って感じ」
「……お前正気か?」
「正気正気」
酔わせた迫田さんをベッドに連れ込む事に成功した。
結局俺の人生において迫田さんより好きな人ってのが見つからなかったんだからしょうがないよ。
「……くそぉ。もう力じゃ勝てないよなぁ」
「任せてくれればいいから」
俺は手際よく人肌に温めたローションの蓋を開けた。
・
「ええっ!?えっ?うわっ!えーっ!……うわっ」
「おいおいどうした?」
涙と鼻水とヨダレで顔がぐちゃぐちゃになる。
『好きで好きでしょうがねー奴とのセックスはそりゃーもう幸せで気持ちいいぞ~!ガッハッハッ!』
迫田さんの言葉を思い出した。
そうか。
・
「パパ。本読むのやめて~!」
「やめない」
娘は俺が本を読み出すといつもこうだ。
本に嫉妬するのは可愛いけど、一日の終わりの読書は大事な時間だ。
「同じ本何度も読まないで~!」
「好きなんだよー」
ボロボロのボロボロな文庫本だけど。人生を描いた世界一美しい物語だ。
ロボットが何度も種を撒いて花が咲くまで諦めず、咲いた花に感動するだけのお話。
「ほら。パパの邪魔しないで。ママとお夕飯作ろうな?」
「はーい」
「……」
読書しながら時々顔を上げて台所にいる妻と娘を見る。
最高に幸せだ。
俺は妻に何度も種を撒き、娘という花を実らせた……なんてね。
(とっくにあがってんのに……どうなってんだ?おめーの精子は?)
迫田さん……妻も驚く俺の繁殖力よ。
「ほいほいっ!お父ちゃんのおつまみ完成!お父ちゃーん!配膳ぐらい自分でしろっ!」
「えーっ」
話が違うよ。
俺は立ち上がり、文庫本をパンツのゴムに挟んで台所に向かった。