第一章 02 隣の席
電話の相手は南 絢音、僕の彼女だ。
絢音は小学校からの幼馴染で、家が近かった僕らは、学校帰りに近所の公園に寄って砂遊びやかけっこをしてよく遊んでいた。
やがて5時を知らせるチャイムが鳴る。
「バイバイ、また明日ね。」
と手を振って絢音は走って家に帰っていった。
ふと足元をみると作りかけの砂山が僕を寂しそうにみている。
急に寂しくなって山の周りに円を描いて“ここはだめ!!“って印をつけたんだ。
空を見上げて、また明日も続きができますようにとお願いしたっけな。
中学一年生の時は、同じクラスで隣の席になったこともあった。
授業中に僕はノートの切れ端を使って当時流行っていたダジャレを書いて絢音によく渡していたんだ。
くだらないなりにも彼女は笑ってくれて、それを見た先生が絢音に注意をしたんだ。
「南、何がおかしい。」
「あ、いえ、何でもありません!」
先生が、黒板に何か書き始めると彼女は僕の方をみてニコッと笑ってピースをした。
そんな毎日が僕には楽しみだった。
中学の頃の彼女は、学級委員長も務めるほどの優等生で成績も優秀なしっかり者。
部活は、吹奏楽部、何の楽器だったかは・・・思い出せない。
絢音の性格は優しく、どんな子にも好かれる心の優しい子だったと思う。
一方僕はというと、成績は中の下くらい。それほど頭が良いというわけでもなく、ごく普通の中学生だった。身長は後ろから数えた方が早く、それだけは自慢だった。
取り柄といえば、人に好かれたい一心で相手の機嫌を伺うこと。
それが本当に得だったかというと・・・よくわからない。
あの頃の僕は、彼女を恋愛対象としてはみていなかったと思う。