第百五十話 ひねくれ者の意思を継ぐのは(3/?)
「……お待たせ」
電話を終えたのか、部屋着を着てリビングに入ってくる逢。ちょっと複雑そうな表情。
「何かあったの?」
「今日ね、伊達さん、閑さんのとこにお見舞いに行ったらしいんだけど……」
「?」
「現役を続ける気満々みたいで……」
「!!え、マジ……?」
「マジみたい。でも伊達さん、色々あって自分だけで説得するのは難しいらしいから、力を貸して欲しいって」
「……逢としてはどうなの?」
「ん?」
「赤猫さんの今後のこと」
「まぁ……最終的には閑さんが決めることだと思うし、考え抜いてその答えだったらあたしは反対するつもりはないよ。自分の全てを賭けてでも野球に取り組みたいって姿勢は素晴らしいものだと思うし」
「…………」
「でも、あたし個人としては、どんな理由があろうとも閑さんには死んでほしくなんかない」
「だよね、やっぱり」
「……閑さんのとこ、2、3日のうちに行くつもりだったけど、ちょっと延期かな」
「何するの?」
「時間ができたら先に愛知の方に行く」
「え……?」
「閑さんって、あたしに結構似てるからね。今のまま閑さん本人の命を秤にかけ続けたところで絶対に折れないと思う」
「愛知の方に、どうにかできるアテがあるの?」
「えっと……」
逢からの説明。前に赤猫さんとの間であったことも交えながら。
「……なるほどね」
「あたしだって閑さんとそこまで長い付き合いってわけでもないしね。これくらいしかどうにかできそうな方法は思いつかないかな」
「じゃあおれも行くよ」
「優輝も?」
「足があった方が良いでしょ?」
「……?」
棚に置いてる鞄。中から財布を取り出して、さらにその中から免許証を取り出す。
「え?いつの間に取ってたの?」
「ちょっと前に。基本週3くらいのペースで打撃投手と平日に専門学校だけの立場だしね。運転手もいつか雇うつもりだったでしょ?」
「もしかして車も買ったの?」
「ううん。必要な時だけレンタカー。愛知だったらどのみち途中までは新幹線とかだし、向こうでも借りれば良いかなって」
「なるほど……うん、確かに車があった方が色々便利だね。お願いしても良いかな?」
「もちろん」
純粋に逢の役に立ちたい、っていうのが主だけど、おれ自身の立場を守るための打算でもある。もう誰にも『人生イージーモード』なんて言わせやしない。
(正直助かったけど、言ってくれたら良かったのに。そういうことだったら講習代とかも出したし。優輝って変なとこでカッコつけというか、1人で何とかしようって突っ走るとこがあるよね。そのせいで危うく変態モッコリ野郎によろしくやられかけてたし)
・
・
・
・
・
・




