第百四十九話 残酷すぎる痛み(3/?)
「1回の表、バニーズの攻撃。1番セカンド、徳田。背番号36」
「絶対打てやかおりん!」
「死んでも負けられへんぞ!」
赤猫さんのことで熱くなってるのは観客席も同じ。帝都まで足を運ぶくらいのバニーズファンなら納得っちゃ納得か。
「ピッチャーの足元抜けた!センター前!」
「2番センター、相模。背番号69」
「初球打ち!これも鋭い当たり、センター前!相模、赤猫の代役として早速結果を出しました!」
「「「ナイバッチ畔たん!」」」
「3番サード、月出里。背番号25」
「ボール!フォアボール!」
「これも外れました!いきなりノーアウト満塁!!」
「おっしゃあ!それでええぞ!!」
「やりゃできるやんけ!」
「あと2試合、点取りまくったれ!」
……3人ともいつも以上にバットが振れてる印象。
「4番レフト、十握。背番号34」
「2勝3敗。帝国一に王手をかけられ、もう負けられないバニーズですが、いきなり先制のチャンス!打席には十握!」
(もちろん風刃くんを勝たせてあげたいけど、今日はそれ以上に赤猫さんに報いるためにも……!)
いつも通り表情は変えない……けど、熱さを隠しきれてない十握さん。ここまではそういうのが上手く働いてるように思える。
だけど、どこまでいったって野球は点を取ってナンボ。そしてもちろん、こんな嫌な予感なんて当たらなければその方がずっと良い。おれだって勝ちたいのは同じなんだから。
「!!逆方向、痛烈!」
「「「「「おおおおおおお!!!」」」」」
「アウト!」
「ああっと!サード真っ正面!!」
(やば……!)
「アウトォォォォォ!!!」
「三塁ランナー滑り込みましたが間に合いません!一気にツーアウト!!」
「「「「「ファッ!!?」」」」」
あっちゃあ……
「5番ファースト、金剛。背番号55」
(くそッ、なら俺が……!)
「これも強い当たり!センターの前!!」
(よし!何としてでも先制するぞ!!)
(ういっす!俺の自慢の脚で……!)
!!?この打球でサードコーチャーが腕を回した……
「センターバックホーム!」
(な……!?)
「アウトォォォォォ!!!」
「ホームタッチアウト!バニーズ先制ならず!」
「タイム!」
「ここで伊達監督が出てきて……リクエストです!早速リクエストを使いました!」
伊達さんが今ので……?
「審判団すぐに戻ってきました!判定は変わらずアウト!」
「いやぁ、今のは流石になぁ……」
「いくら相模の脚でも真っ正面じゃなぁ」
……スイングの鋭さからくる打球の鋭さ。それが見事に裏目に。
「くそッ……!」
一応ヒットを打って、まだ初回なのに、あの金剛さんが珍しく感情を露わに。
「…………」
「ふ、冬島さん!今日も頼んますね!」
「もちろんや。いつも通り抑えられるやんな?」
「ええ、まぁ……」
いつも投手陣には自分から声をかけていく冬島さんなのに、珍しく口数が少ない。
まぁストレスの溜まる攻撃にはなったけど、こんな拙攻は別に珍しいことじゃない。向こうも上手く守った結果。しょうがない。
……この球場の狭さで、打球自体はあれだけ景気良く飛んでるんだから、柵越えの1本くらいは出るはず。前の山口さん以上のピッチングをするのが元々今日の目標だし、0に抑えれば何とかなる……よな?
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