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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第四章 黄金時代
972/1139

第百四十八話 彗星は流れ墜ちて(2/?)

 10月31日。帝国シリーズ4戦目。


「1回の表、ペンギンズの攻撃。1番センター、小林(こばやし)。背番号9」


 2連敗して1勝分ビハインド。かなり苦しい状況だけど……


「ストライク!バッターアウト!!」

「高め!まっすぐ、スイングアウトの三振!!」

「142km/h、スピードは決して速いわけではないですが本当にキレが良いですねぇ」

「今日のバニーズの先発はプロ10年目の百々百合花(どどゆりか)。若い選手の台頭が目立つ中、実力も実績も抜群の頼れる右腕。今シーズンは先発としてチーム最多の25試合に登板。10勝6敗、155回を投げて防御率3.43」


「ええぞゆりりん!」

「まだまだいけるで"エース"!」


 風刃(かざと)くん、恵人(けいと)くんに次ぐ今年の勝ち頭、百々くん。彼女の力でどうにか今日でイーブンに持っていきたい。


「ライト下がって……」

「アウト!」

「捕りました!これでスリーアウトチェンジ!百々、ヒット1本を許しましたが初回は無失点。堅実な立ち上がりとなりました」


 百々くんは急に崩れるようなタイプでもない。立ち上がりでこれだけやれるんなら、とりあえず守りの面ではそこまで心配はないはず。

 あとは打つ方なんだけど……


「1回の裏、バニーズの攻撃。1番センター、赤猫(あかねこ)。背番号53」

「ストライーク!」

「外!131km/hまっすぐ、低めいっぱい!」


「オッソイデスネェ……」

「良いストライクインだ!」


「今日のペンギンズの先発はプロ21年目、41歳の大大ベテラン、冨永和生(とみながかずお)。ペンギンズ一筋でこれまで積み上げてきた勝利数は現役最多の177。今シーズンも17試合に登板。82回と規定には届かなかったものの4勝5敗、防御率3.07。6年ぶりの優勝にしっかりと貢献しました」


 今日の相手は僕のドラフト同期、学年的には2つ上の冨永さん。


「引っ掛けた!これはセカンド正面……」

「アウト!」

「軽快に捌いてワンナウト!」

「フェア!」

「これはライトの前、落ちましたヒット!」

「打ち上げた!これはセンター見上げて……」

「アウト!」

「ストライク!バッターアウト!!」

「見逃しの三振ッ!膝下いっぱい!!」


「「「「「おおおおお!!!」」」」」

「良いぞ"2代目シーラカンス"!」

「200勝まだまだ狙えるぞ!」


「あの絶対三振しないマンの346が……」

「あんなおっそい球で何で……」


 ご覧の通り、登板間隔とイニングに気を付ければまだまだ全然余裕で戦力。

 冨永さんのまっすぐはバリバリの頃でも140km/hいくかいかないか、今は130km/hすら切ることもある。左であることを加味しても、昔基準でも遅い。それでも通算で2を切るほどの与四球率で、ポンポンストライクを取ってしまう。それを可能にするのは、抜群の制球力に加えて多彩な変化球。緩急も芯を外すのもお手のもの。

 百々くんとは違うタイプの、『スピード以外で勝負するピッチャー』。


「5番指名打者、カズー。背番号25」

「ストライーク!」

「まずはカーブから入ってきました!見送ってストライク!!」


 まぁ一応若さの分、現状の総合力は百々くんの方がさすがに上。


「!!ライト下がって、これは……入りましたホームラン!カズー、先制ホームラン!昨日に引き続いてまたしても右に打ちました!」


「「「「「よっしゃあああああ!!!」」」」」


「安心の飛翔」

「まぁ百々はこれだけはな……」


 ただ、まっすぐのキレを生かすために高めに投げることが多い百々くんと、変化球を低め低めに集める冨永さんとじゃ、この点では向こうの方に分があるね……ホームランバッターが多い向こうは、正直相性はあまり良くない。登板日をサンジョーフィールドの日まで待ったのも、単純に先発の序列の関係だけじゃなく、こういうリスクを回避するためでもある。


「打ち上げた!これはセンター前に出て……」

「アウト!」

「捕りましたスリーアウトチェンジ!」


 もっとも、無駄な四球を出さないのは百々くんも同じだから、たまの交通事故のリスクはそこまで大きくないし、三振を狙いやすい分フライも多いのは一発の多さにも直結するものの、エラーの要因を減らすのに役立ってる部分もある。総じて失点リスクの少ない優秀な先発投手。

 1失点くらいはもちろん計算の内。それに、冨永さんはどれだけ調子が良くても完投はまずない。付け入る隙は十分あるはずだ。


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