第百四十三話 勝ち切れる強さ(7/?)
******視点:村上憲平 [美浜ブッフアルバトロス 監督]******
10月19日。CSファイナルステージ3戦目。
……1戦目に惜敗し、『これならばまだ巻き返せる』と思ったのに2戦目も落とし、もう1敗も許されなくなった状況になったこと。多少の侮りがあったことは認めよう。
「アルバトロス、選手の交代をお知らせします。ピッチャー、鳶田に代わりまして、青山。ピッチャー、青山。背番号52」
「「「「「紅子、Ready Goー!!!」」」」」
「ようやく1勝できるんやな……」
「こっから4連勝じゃ!」
しかし、今日は最終回に不動のクローザーがお出まし。つまりはそういうこと。
「9回の裏、バニーズの攻撃。7番ファースト、松村。背番号4」
「CSファイナルステージ3戦目、今日勝てば帝国シリーズ進出となりますバニーズ。しかしスコアは3-2、アルバトロスのリードのまま最終回となりました。この回は7番の松村からの攻撃となります。昨日はダメ押しとなるタイムリーヒットを放ちましたが、今日はまだヒットがありません」
しかも下位打線から。流石に今日は獲らねばならん。
(……ノーヒットで焦る気持ちはあります。ですが、相手は何年も対戦してきた人。それだけ実績があるという証拠でもありますが、クローザーは持ち球がコロコロ変わることはあまりありません。その得意球を打つイメージをしっかり持つこと。この人の場合はシンカー……!)
「初球打ち!上手いバッティング!レフトの前、落ちましたヒット!」
「「「「「おおおおお!!!」」」」」
(最近は赤猫さんの得意技みたいになってますが、こういうのじゃ負けませんよ……!)
「いつもの」
「青山劇場なんてよくあるよくある!」
「4凡頼むで!」
今日も月出里が3番で助かった。まだ余裕はある。
「バニーズ、選手の交代をお知らせします。8番、冬島に代わりまして、金剛。8番代打、金剛。背番号55」
「ここで出てきました!代打金剛!」
「「「「「ホームランホームラン金剛!!!」」」」」
やはり代打攻勢か……
「これも引っ張って!ライト前!ノーアウト一塁二塁!金剛、低めのシンカーを上手く拾い上げました!昨日はマルチヒット、今日はここ一番での1本!ベテランの本領発揮!」
「「「「「おっしゃあああああ!!!」」」」」
「バニーズ、選手の交代をお知らせします。一塁ランナー、金剛に代わりまして、有川。一塁に代走の有川が入ります……」
キャッチャーのところで代打なら妥当な起用。次の宇井は今日ノーヒット、その次の赤猫は4-3だが、ランナーが溜まってる状況なら併殺の目もある。ここは青山を信じるしかない……
「9番、宇井に代わりまして、相沢。9番代打、相沢。背番号3」
!!!
「ここも代打を投入します!右の青山に対して左の宇井から右の相沢へスイッチ!」
「ここで狙うのはおそらく……」
「バントです!相沢、バントの構えです!」
当然か。次に今日シングル3本の赤猫を控えるなら。統計的な観点でも、ノーアウト一塁二塁で点差の狭い終盤ならセオリーと言える選択。
……もちろん、他の可能性もなくはない。だが……
(そうすると考えて動くしかねぇよな。まだアウト1つも取れてねぇ状況。これなら少なくともアウト1つ……うまくいけばバントゲッツーも十分狙える。もう後がねぇ状況。その最低限だけはこなさなきゃならねぇ……!?)
「ここでバスター!レフト前痛烈!!」
やられた……!
「セーフ!」
「ええぞ相沢ー!!!」
「ほんま器用なやっちゃ……」
「ベテラン&ベテランと来てるけど……」
「1番センター、赤猫。背番号53」
「「「「「閑たそー!!!」」」」」
「ノーアウト満塁!バニーズ、絶体絶命の状況から一転、一打逆転サヨナラの大チャンス!!そして打席には今日3安打、野手陣最年長のベテラン・赤猫が打席に入ります!」




