表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第一章 フィノム
88/1128

第十五話 速いけど、まだ早い(4/8)

9回表 紅3-4白 攻撃開始


○白組


[先発]

1二 徳田火織(とくだかおり)[右左]

2中 有川理世(ありかわりせ)[右左]

3右 松村桐生(まつむらきりお)[左左]

4一 天野千尋(あまのちひろ)[右右]

5三 リリィ・オクスプリング[右両]

6捕 冬島幸貴(ふゆしまこうき)[右右]

7指 伊達郁雄(だていくお)[右右]

8左 秋崎佳子(あきざきよしこ)[右右]

9遊 月出里逢(すだちあい)[右右]


投 雨田司記(あまたしき)[右右](残り投球回:1回1/3)


[控え]

夏樹神楽(なつきかぐら)[左左]](残り投球回:1回2/3)

氷室篤斗(ひむろあつと)[右右](残り投球回:0)

山口恵人(やまぐちけいと)[左左]](残り投球回:0)



●紅組

[先発]

1中 赤猫閑(あかねこしずか)[右左]

2遊 相沢涼(あいざわりょう)[右右]

3右 森本勝治(もりもとかつじ)[右左]

4左 金剛丁一(こんごうていいち)[左左]

5一 グレッグ[右右]

6指 イースター[右左]

7二 ■■■■[右右]

8三 財前明(ざいぜんあきら)[右右]

9捕 土生和真(はぶかずま)[右右]


投 花城綾香(はなしろあやか)[左左]


[降板]

三波水面(みなみみなも)[右右]

早乙女千代里(さおとめちより)[左左]

桜井鞠(さくらいまり)[右右]

相模畔(さがみくろ)[右左]

牛山克幸(うしやまかつゆき)[右右]

******視点:柳道風(やなぎみちかぜ)******


 ……ふむ。早乙女(さおとめ)相模(さがみ)に関してはまだ己を省みる余地はありそうじゃの。財前(ざいぜん)桜井(さくらい)もへこたれとらんのは評価してやれるが、同じ己を省みるにしてもえらい違いじゃの。


(さぁ、どっからでも来やがれ……!)

(打ち気ありあり……そんで前の打席では山口さんのチェンジアップを見逃し三振。となると、入りはこれやな)


 さぁて、せっかくの泣きの1回を()かせるかのう?


(チェンジアップ!あのガキのじゃねぇが、今度こそ打って……)

「ストライーク!」

(し、しまった……!)


 初球ボール球チェンジアップ。あんなつまらん手に引っかかるとはのう。


「ストライーク!」

「今度は高めボール球ストレートに引っ掛かってやがる……こりゃ完全に冬島(ふゆしま)に弄ばれてるな」

「未だに白組連中を舐めてる証拠……いや、これも他人事じゃないっすね。今回の試合の3点のハンデにしたって、監督の性格からしたら『3点あれば向こうも勝てる可能性がある』ってことでしょうし」


 その通り。まぁここまで綺麗にハマるとは思っとらんかったがな。正直半分は適当じゃ。


(……大した人だな、冬島さん。ここまでタイプの違う4人のピッチャーを的確にリードしてる。ボク自身は細かい制球より球威だからリードに左右されないタイプだと強がってたけど、この打席じゃボール球2つで投手完全有利のカウント。全く楽をさせてくれる……いや、楽をさせてくれてるのは冬島さんだけじゃないな。特に有川(ありかわ)さんには助けられた。あの人のおかげで、氷室(ひむろ)さんにわがまま言ったくせに自分は同点打を許すなんて醜態を晒さずに済んだ。信頼できるバックがいる状況で投げられるのなんて本当に久しぶりだね)


 先週の試合と比べれば今日の試合はずっとじゃが、先程の回よりさらに強張りなく楽に投げてる印象があるのう。その理由は単に上位打線の脅威からほぼ逃れられたからか……


(信頼……そうか。そもそも、チームメイトを頼りにしようと思ったこと自体が久しぶりだな。昨日まではせいぜい『頑張ってくれれば儲けもの』程度だった。投球の邪魔さえしなければそれで良いってくらいだった。何せ高校の頃は本当にチームメイトの意識が低くて、弱小高相手でも神経をすり減らして投げてたからね。『絶対三振を()る』、なんて考えながら。今だって三振をなるべく()りたいとは思ってるけど、そうじゃなくても構わないくらいには気が休まってる。他の余計なプレッシャーがないから、『チームの勝敗を背負ってる』というのが程良いプレッシャーとして認識できる。先週の試合もこういう気分で投げれてれば、もうちょっとマシな結果になってたのかもしれないな)

「!!……しまっ……」

「ストライーク!バッターアウト!!」


 最後はベタベタの外スラ……はっきり言ってガッカリじゃな。


「三球三振!流石は雨田だぜ!!」

「あと2人!あと2人!!」

「いけるでー白組ー!!!」

「くそッ!くそッ!くそォォォォォッッッ!」

「そんな……財前さんが……」

((……やっぱこうなったか))


 一軍相当の打力を備え、はっきりとした攻略法のある雷小僧が相手。冷静に立ち回れば勝機も十分あった。故に情け以上に下位打線の補強のために残したと言うのに、未だに個人の功名心にばかり走りおって……

 己を疑って顔を上げた早乙女と相模。己を信じて俯いたままの財前と桜井。可能性があるだけで似たり寄ったりの有象無象じゃったが、ここに来て差が付き始めとるのかもしれんな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ