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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第四章 黄金時代
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第百三十五話 犠牲の代償の代償(3/?)

「アウト!スリーアウトチェンジ!」


「これでスリーアウトチェンジ!しかしこの回、柿原(かきはら)のタイムリーでさらに1点追加!5-0、アルバトロスのリードが続きます!」


(アカン)


 悪い流れは中盤に入っても変わらず……


「6回の裏、バニーズの攻撃。9番ショート、宇井(うい)。背番号24」


 この点差だから、向こうのピッチャーは鹿籠(こごもり)さんのまま。怪我明け早々に活躍を許してる形。


「この回の先頭打者は宇井。先日のヴァルチャーズ戦で途中交代になってから2試合空けてのスタメン出場となりましたが、今日はここまでヒットがありません」


「ええかげん点取れや!」

「優勝かかってるんやぞ!」


 ……わかってるっすよ。もちろんわかってるんすよ。


「ストライーク!」

「まずは外のスライダーから入ってきました!」


 球の走りはそこまで……でも、こういうゲーム展開だから、初回と比べて悠々とストライクを取ってくる。

 あんまりなめないでほしいっす……!


「叩きつけた!高いバウンド!」


 ミスショット……でもこれなら!


「一塁、頭から滑り込んだ!」

「セーフ!」

「間に合いました!内野安打でノーアウト一塁!」


「「「「「あけみん!あけみん!」」」」」

「あんま無理すんなや!」

「あけみんまで離脱はマジでアカン!」


 無理するに決まってるっすよ。


「1番サード、月出里(すだち)。背番号25」


 次はこの人なんすから。


「「「「「ちょうちょ!ちょうちょ!」」」」」


「ここで打席には月出里。今日はここまで2打数2安打、レフト前にライト前としっかりと捉えています!」


(……朱美(あけみ)ちゃんはまだよくやってくれてるね)


 向こうのバッテリーは……


(もちろん、勝負で良いですよね?)

(まぁこの点差ですしね。グコランのホームラン王争いに水を差すかもしれないですが……)


 ベンチも動きはなし。当然、勝負っすね。


「ファール!」

「初球から振ってきました!今日最速の150km/hまっすぐ!」


(露骨にやる気出してきたね……スピードだけじゃなく浮き上がり加減も離脱前のそれに近い……)

(月出里さんはもちろんだけど、大神(おおがみ)くんにだって負けられないんだから……!)


 鹿籠さんお得意の、浮き上がるカットボールのように見えるまっすぐ。中盤であのスピードなら、まだまだ余裕ありそうっすね。


「ボール!」

「ファール!」

「ファール!」

「ここもストレート!ライト方向切れました!」


 一進一退、バチバチっすね。


(ギアが上がったのに、なかなか打ち損じてくれない……!)

(確かにさっきまでより良いまっすぐだけど、ここまで2打席勝負した分も込みで、十分修正できる範囲)

「ボール!」

「外スライダー見送りました!ツーボールツーストライク!」

(振ってくれませんか……)

(変化球も変わりなし。今日の球審は昨日と比べたら外をちゃんとジャッジしてくれるし、いつも通りの感覚で見極められる。そして、変化球はこうやって割り切れるから……)


 !!!


(まっすぐに絞り切れる……!)

「左中間!長打コース!!」


「「「「「おおおおおおお!!!」」」」」


「二塁ランナー三塁を回った!」


 三塁コーチャーもGOサイン。当然っすね。ノーアウトで5点差だから慎重に行くのも手ではあるっすけど……


(まずはとにかく1点……今の閉塞した流れを変えるためにも……!)







「セェェェェェフ!!!」

「二塁ランナーホームイン!5-1!バニーズ、ようやく1点目!月出里、今日は3安打猛打賞!」


「「「「「よっしゃあああああ!!!」」」」」

「ちょうちょマジ主人公」

「もはや(あおい)姉貴は恐るるに足らずやな(恍惚)」


 ……またしても、長い(あんよ)に感謝っすね。そして(あい)さんにも……


「2番セカンド、徳田(とくだ)。背番号36」


「なおもノーアウト二塁で打席には徳田!」

「まだまだ上位打線。ここでもう1点2点挙げれば全然ありますよ」


 いける。まだまだやれるっす。今日勝てば2位相手にカード勝ち越し。優勝も近づいて……!?


「アウト!」

「ああっ!ショート正面のライナー!」

(ッ……!)

「セーフ!」

「二塁はセーフ!」


「あっぶねぇぇぇ……」

「今日かおりんついてねーな……」


(くそッ、何で……!)


 ……火織(かおり)さんに限った話じゃないっす。今日はほとんどの人達があんな感じ。


「ライト前進!」

「アウト!」

「引っ張った!しかしファーストグコラン、飛びついて捕った!」

「アウト!スリーアウトチェンジ!」

「そのまま一塁ベースタッチでスリーアウトチェンジ!」


「「「「「ほげぇぇぇぇぇ!!!」」」」」


 何もかもが紙一重。どれもあとほんの少しズレてたら、きっと向こうと同じくらいに点が取れてるはずなのに……


(まぁこれも野球ですよね)

(……ツキが回ってきた。いや、来るべくして来たか……)


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