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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第四章 黄金時代
874/1133

第百三十五話 犠牲の代償の代償(1/?)

******視点:宇井朱美(ういあけみ)******


 9月18日。試合の後、選手寮。


「……よし!」


 右手首、動かすとちょっと違和感はあるけど痛みはもうない。ぶつけられたのが同じ箇所でも、骨折までした十握(とつか)さんと比べたらまだ全然当たりどころが良かったみたいっす。

 これなら予定通り、明日から試合に出られそうっすね。


「ん……?」


 食堂にまだ人影。ふと見てみると、そこには恵人(けいと)の姿。テーブルにはまだ食べ残しだらけのトレー。それに目もくれず、ボーっとテレビを眺めてる。

 ……多分、今日の試合のことっすよね?あんな、らしくもないピッチングをしてたから。でも、仕方ないっすよね、男の子なんだから。きっと大神(おおがみ)くん相手に意地になって……


「…………」


 かける言葉が見つからず、予定通りトレーニングルームへ向かう。

 申し訳ないっすけど、自分もまだまだ2年目だし、そもそも(あい)さんとか風刃(かざと)さんとか冬島(ふゆしま)さんみたいに、実力とかでチームを引っ張れるような器じゃないっす。


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 次の日。9月19日、サンジョーフィールド。今日はペナントでは今年最後のアルバトロス戦。


「ソ■モンよ!自分は帰ってきたっす!」


「おっ、あけみんやんけ!」

「もうかえってきたのか!」

「はやい!」

「きた!(ショート)きた!」

「メイン(ショート)きた!」

「これで勝つる!」


 わざとらしいくらいに明るくグラウンド入り。自分が復帰するって話は昨日にはネットでも流れてたからか、もう球場に入ってる熱心なファンの人達はノリノリで自分を歓迎。

 でも……


「「「「「…………」」」」」


 ウチのチームの、先に練習を始めてる人達の雰囲気は重苦しい。逢さんが黙々と練習してるのはいつも通りっすけど、他の人達まで。少なくとも自分が離脱する前まではどこかしらで雑談してたりで、程良く力を抜きつつって感じだったんすけど、今日はみんな揃って……

 いよいよ優勝が近づいてきて、改めて気合を入れ直した。とかだったらいいんすけど……


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「1回の表、アルバトロスの攻撃。1番センター、高座(こうざ)。背番号4」

(ほんとにあの人、もう復帰してるんですね〜。それもスタメン……)


 2日空けての試合、そして即ショート定位置のスタメン。練習もしてたし、感覚は鈍ってないはずっすが……


(なら試しに……)

「三遊間!ショート捕って……」


 逆に来るってわかってたっすよ!


「一塁送球!」

「アウト!」

「間に合いました!ワンナウト!」

「怪我の影響はなさそうですね。力強いスローイングです。それに少しサード寄りに守ってましたね」

(う〜ん、もちろん抜くのが前提、ダメでも内野安打のつもりだったんですけど〜……)


「ええぞええぞあけみん!」

「やっぱええ肩してるわあけみん」

「ほんま春先と比べたら安心感が違うわ」


 右手首、投げても影響なし。丈夫な身体に産んでくれた両親に感謝っすね。


「2番セカンド、吉川(よしかわ)。背番号8」


 脚の速い人が続くっすね。左だし、ここも内野安打警戒……


「引っ張った!ライト方向……」


 クリーンヒット……いや、ライトライナーもあるか……微妙なとこっすけど、どのみちワンナウト一塁ならそこまで大したことは……


(いける……!)

「!!!ライト飛びついて……ああっ!捕れません!!」


 !!?


(!?しまった……!)

「センターバックアップに入りますが、これもグラブ弾いた!」

「セーフ!」

「この間に打ったバッターは二塁へ!ワンナウト二塁!一気にチャンスメイクとなりました!」


「「「「「おいィ!!?」」」」」

「何やっとんじゃ!?普通のライト前やろ!!?」

「関西のお笑い球団は1個だけで十分や!」


 いつも堅実に守る松村(まつむら)さんがあんなに……それに、佳子(よしこ)さんもあんな焦って……


(くそッ……!)

「ボール!フォアボール!」

「ああっ……これも外れてしまいました!ワンナウト一塁二塁でチャンス拡大!」


 烏丸(からすま)さんは恵人(けいと)とは逆で、ピッチングフォームが良くも悪くもコロコロ変わるタイプ。だからこんな感じで制球が荒れることは珍しくないっすけど、さっきのも多分影響あるっすよね……


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