第百三十四話 新たなる怪物(4/?)
「2回の表、アルバトロスの攻撃。4番ファースト、グコラン。背番号54」
(今日ノ小次郎ナラ1点デイケルハズ。甘ク入ッタ変化球1点狙イデ……!?)
「ストライク!バッターアウト!」
「まっすぐ!148km/h空振り三振ッ!」
「打ち上げた!ここもまっすぐ!ファースト見上げて……」
「アウト!」
「叩きつけた!サード正面へのゴロ……」
「アウト!スリーアウトチェンジ!」
「この回は8割方まっすぐでしたねぇ」
(へぇ、やるじゃん恵人)
「「「「「恵人きゅんナイピー!」」」」」
やっぱやればできるじゃん、おれ。
「でゅふふ……まっすぐ走ってましたねぇ」
「ありがとうございます」
ベンチに戻りながら、今日捕ってもらってる有川さんと相談。
「今日はいけるとこまでまっすぐ中心で組み立ててもらって良いですか?」
「ええ、ええ。いつもは基本的にどの球も満遍なく投げてますからねぇ。裏をかく意味でも賛成ですよぉ」
マウンドへ向かう小次郎の方を見る。
(おもしれーじゃん)
……伊達さんを勝たせるのが一番の目的なのはもちろん忘れちゃいない。でも、こういう個人的な意地だって、良い結果に繋がればむしろ褒められるべきことのはず。ここまで全く打たれてないんだし。
(なら受けてたたねーとな。というか……)
「ストライク!バッターアウト!」
「ショート正面!」
「アウト!」
「ストライク!バッターアウト!」
「三振ッ!157km/hまっすぐ!!」
(オレの場合はこうする以外に選択肢がねーんだけどな)
初回と変わらずまっすぐとフォークだけ。本当に絵に描いたようなゴリ押し。でも常に150km/hを軽く超えるまっすぐがあるからこそ、そういうのが成立してしまってる。
「うーん、速いですねぇ……これでまだ10代というのが……」
「今日のバニーズ先発の山口と同い年です。ともに2001年の11月生まれでわずか3日だけ大神の方が年上みたいです」
「どちらもタイプは違いますが本当に将来が楽しみですねぇ」
けど、スピードやキレだけが全てじゃない。
「ファール!」
「これもライト方向ファールゾーンへ!」
(くそっ、視づれぇ……)
お父さんに強制……いや、矯正された左投げ。とにかく球の出処が視づらくなるように練ったこのフォーム。
「ここもまっすぐ!詰まりました、センター見上げて……!」
「アウト!」
「捕りましたワンナウト!」
一回りくらい遅くても勝負はできる……!
(…………)
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「タイム!」
「4回の表の攻撃に入る前にアルバトロスのナインがベンチの前で円陣を組みます」
……『まっすぐに絞ってけ』ってとこかな?まぁそれは想定内。ここまで馬鹿正直にそうしてきたからね。
でも、分かっててもそう簡単に打てないって自負はあるし、危ない兆候があればいつものピッチングに戻せば良いし、むしろ力押ししかできない小次郎とは違うってとこを見せつけてやる。




