第百三十四話 新たなる怪物(1/?)
******視点:伊達郁雄******
9月17日。今日からホームでアルバトロス戦。
今シーズンのバニーズの試合は残すところあと12試合。今日勝てばとりあえずバニーズはCS確定。ゲーム差を考えると、CS枠はバニーズとアルバトロスがほぼ確定で、残り1枠をウッドペッカーズとヴァルチャーズで争うってのが現実的な見方。
そして、今日からのこの3連戦はアルバトロスとの首位攻防戦。ペナントレースでアルバトロスと試合するのはこのカードで最後。優勝を狙う上で非常に大事な局面。
「ストレート打って!これはレフト下がって……入りましたホームラン!グコラン、第26号、先制ホームラン!」
(あっちゃ〜……)
「「「「「ほげえええええ!!!」」」」」
先制点、取られちゃったか……
百々(どど)くんはまっすぐのノビが売りの投手。この手の投手はほとんどの場合、高い奪三振率と高い被本塁打率がトレードオフ。向こうのホーム球場と比べたら、ウチのサンジョーフィールドはホームランが出にくいんだけどね……
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「1番サード、月出里。背番号25」
「8回の裏、2-0、非常に苦しい展開でしたが、ノーアウト二塁三塁!ようやく反撃の糸口を掴みました!一打同点の場面で打席には月出里!シーズン最終盤も好調を維持し、一時期1割代に落ち込んだ打率も.350オーバー!十握が離脱した後も打線を支えます!……ああっと、ここは申告敬遠!歩かせるようです!」
(チッ……そろそろホームラン打っていかないとまずいのに)
「コラァ!勝負しろや!」
「こっちは346とあけみん抜きなんやぞ!」
「あけみん結局無事なんやろうか……?」
歩かせてもノーアウト満塁……徹底してるね。
(十握がいない今、月出里は向こうにとって要も要。ここで打たれたら、点以上に流れを失う。優勝を狙うためにも、このカードは何としてでも全部取りたい。明日明後日は勝てる見込みが十分あるしな)
確かに今のウチにとって、月出里くんとの勝負を避けられるのは痛い。
「2番セカンド、徳田。背番号36」
(なめたことしてくれるよね)
けど、だからこそ1番固定のまま。
「ファール!」
「ボール!フォアボール!」
「ああっと押し出し!徳田、7級粘って選びました!2-1!」
「ナイセンナイセン!」
「かおりんはこれがあるからなぁ」
「ちょうちょかおりん346の四球乞食トリオがまた見たい……」
「言うほど346四球乞食ちゃうけどな。三振異様に少ないだけで」
「3番ライト、松村。背番号4」
「なおもノーアウト満塁!打席には今日3番でスタメン出場の松村!今日はまだヒットはありませんが、一軍復帰以降は好調を保っています!」
「5月くらいまでは確か3割打ってましたからね。本来の力を発揮していきたいところです」
十握くんを意識しすぎて一時期打撃が消極的になったり変に大振りしたりしてたから、十握くんが抜けた後もあえて3番は宇井くんと併用するような形を取ってたけど、今ならきっと大丈夫。
「!!落ちる球拾って……レフトの前落ちましたヒット!」
「「「「「よっしゃあああああ!!!」」」」」
「セーフ!」
「三塁ランナーホームイン!2-2!バニーズ、遂に追いつきました!」
「ナイス"変態"!」
「ほんまよう打つわあんな地面スレスレのクソボール……」
自分が打てると思ったら、積極的に打っていくスタイル。もちろん、今の状態でも裏目に出ることはあるけど、これがドラ1に選ばれた要因でもあるんだから自信を持てば良い。
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「ストライク!バッターアウト!ゲームセット!」
「試合終了!3-2!バニーズ、首位攻防戦の頭を取りました!」
……とりあえずここまでは良い。問題は明日の試合。ローテの都合で鉢合わせることがなかったけど、遂に明日、あの"怪物"と初勝負。恵人くんなら守る方は心配ないと思うけど……
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