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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第四章 黄金時代
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第百三十三話 いつだって頼れるもの(2/?)

 9月15日。2連休を挟んで、今度はビジターでヴァルチャーズとの2連戦。

 結局、休み直前に負けて、連勝は10でストップ。良くない形で休みを挟んで、勢いが削がれるかと思ってたけど……


「レフト下がって……入りましたホームラン!オクスプリング、今シーズン17号!先制ツーランホームラン!」


「「「「「いよっしゃあああああ!!!」」」」」

「まだ346のこと許してへんからな!」

「今日も勝てや!」


 何てこともなく、今日も先制。地味にみんな打球が上がってるね……


(あたしなんてまだ今月1本しか打ててないのに……)


 まぁあんなことがあったヴァルチャーズが相手っていうのが、選手達にとってもきっと大きいんだろうね。


「これはボテボテの当たり!サード正面!」

「アウト!」

「アウト!スリーアウトチェンジ!ヴァルチャーズ、この回先頭打者を出しましたが得点ならず!」


「「「「「風刃(かざと)くーん!!!」」」」」

「うーんこの"ウルトラエース"……」

「もう今年いっぱいハゲタカには負ける気せぇへん」


 しかも今日の先発は風刃くん。先週の完封の勢いそのままに、今日も4回まで無失点。


(まずいな、完全にカモにされてしまってる……)


 とにかく、先週までの10連勝のおかげで、最優先目標の『首位奪還』はもう果たした。無駄に肩肘張らず、それぞれ持ち味を発揮してくれたら、きっと逃げ切れるはず。


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「6回の裏、ヴァルチャーズの攻撃。1番セカンド、■■。背番号■■」


「3-1、バニーズのリードが続きます。この回のヴァルチャーズは1番からの攻撃。この回も風刃が続投。すでに今シーズン15勝目の権利を手にしています」

「今の時代に15勝はなかなかできないですよ。良いピッチャーになりましたよほんと」


(うーん、前の回に田所(たどころ)さんに一発打たれちゃったんだよなぁ。さっき向こうがバッテリーエラーしてくれたおかげでその分はチャラになったけど、ちょっと気合い入れなきゃダメだよなぁ。"ウルトラエース"として)


 安心するにはまだ早い点差だけど、風刃くんがいて、リリーフも計算できる。上位打線からのこの回を凌げば勝ちはグッと近づく。


「ストライク!バッターアウト!!」

「ストライク!バッターアウト!!」


「三振ッ!2者連続!!これで今日奪三振10個目!!!」

「この場面で流れを絶対に変えないという姿勢。ほんと頼りになりますねぇ」


(先週完封でそれなりに球数を消耗して、今日ももうすぐ100球だから、今日はこの回までって話。なら出せるもんを出し切らなきゃなぁ)


 ……前の回までと比べて、スピードがほんの少し上がってる。この回のまっすぐは全て153km/h以上。今年の風刃くんの最高球速は確か157km/h。最大出力よりも、出力の安定感が風刃くんの持ち味。

 でもそれにしたってだいぶ速い……


「3番ライト、友枝(ともえだ)。背番号9」


「ツーアウトランナーなしで、打席には友枝。今日はここまで三振2つと完全に抑えられています」


「今日もウサギにかませにされるんか……」

「クッソォ、こんな怪我人だらけになってんかったら……!」


「ボール!」

「初球は落としました!146km/hフォークボール!!」


(『ランナーなしだから意気揚々とファーストストライクを取る』ってオレが読むのを見越しての落ちる球……たまたま読みが当たったからどうにかなったけど、ほんとこんなん読まなきゃどうにもならねーわ。マジやべー……)


「風刃と友枝は今シーズンここまで24打席対戦しておりますが、打ったのはシングルヒットわずか1本、四球4つ、三振が10。ほぼ完璧に抑え込んでます」


 友枝くんは3番に入ることが多い分、ツーアウトランナーなしの場面が多く、しかもヴァルチャーズは今年投打共に離脱者が多い。そのため、積極的に勝負する必要性が薄く、決して四球の多くない風刃くんが四球4つを友枝くん1人に献上してる、という点も考慮に入れる必要はあるだろうけど、それでも相性は全体的に見て良いと言って良いだろうね。


「ファール!」

「ボール!」

「ボール!」

「ストライーク!」

(くそっ、ここで落とすのかよ……!)


「空振り!これでフルカウントとなりました!」


(友枝さんは読みで及び腰になっとる。膝下まっすぐ思いっきり叩き込むで)

(うっす!……ッ!?)


 ……!!!


「ボール!フォアボール!」

「ああっと!ストレート叩きつけてしまいました!ツーアウトからランナーが出ます!」


 風刃くんがあの要所であれだけの制球ミス……珍しいね。


「タイム!」

「ここで■■投手コーチがマウンドへ向かいます!」


 一応念のため。何事もなければ良いけど……


「大丈夫か風刃?何かあるんだったら早めに降りても大丈夫だぞ?」

「あ、いえ、心配ないっす。ちょっと手元が狂っただけっす」

「そうか……お前はもはやウチに必要不可欠な存在だ。無理はするなよ?」

「あざっす!監督に言われた通り、この回までは投げ切りますんで!」


「プレイ!」


「単なるコントロールミスって話です」

「そうか……ありがとう」


 心配しすぎ……だったかな?


(……痛くはねーけど、リリースの瞬間、背中の辺りに変な張り。ルーキーイヤーに肘を痛めた時と似たような感覚)


「4番指名打者、ローウェン。背番号54」


(でも、ここで引き下がれねーよな。せっかく先週完封してチームの士気を上げたのに、ここでおれが途中降板なんかしたら台無し。月出里(すだち)さんがああやって"影の主役"をやってくれてるんだから……)


「ストライク!バッターアウト!」

「三振ッ!何とこの回3つ目!」


「「「「「風刃(かざと)くーん!!!」」」」」


 やっぱり心配しすぎだったみたいだね。この時期にそんなポンポン主力が抜けるなんて……


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