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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第四章 黄金時代
832/1132

第百二十九話 魔の8月(1/8)

******視点:伊達郁雄(だていくお)******


 7月20日。オールスター明けのカード、今回はビジターでアルバトロス戦。

 7月の戦績は現状5分くらい。異常に勝ってた6月と比べると寂しいものがあるけど、それでも首位はキープできてる。


「1番サード、月出里(すだち)。背番号25」


 去年、風刃(かざと)くんをシーズン終盤で休ませたり、投手陣のピークが今年になるように仕掛けたのが功を奏して、今年のバニーズは主に逃げ切りで貯金を重ねてきた。

 それゆえに、チームの調子は打線の調子にほぼ比例してる状態。


「!!!右中間大きい当たり!」


「「「「「おおおおお!!!」」」」」


「セーフ!」

「三塁ランナーホームイン!続けて二塁ランナーもホームイン!」

「セーフ!」

「打った月出里は一気に三塁へ!タイムリースリーベース!4-1、バニーズ、ここで点差を突き放します!」


(う〜ん、間に合いませんでしたねぇ〜……)

(ウチのホーム球場はここ最近テラス席を設置して若干狭くなったが、それでも風向きがコロコロ変わるせいで比較的スリーベースが出やすい球場。だからこそウチでは特にセンターの名手が育ちやすいところがあるのだが、高座(こうざ)でも刺せないんじゃお手上げだな……)


 特に月出里くんの調子が7月に入ってもキープできてるのが大きいね。おまけに、あまり喜ぶべきことじゃないけど、ウチにとっての天敵の鹿籠(こごもり)くんが離脱中。さっきのスリーベースと言い、今のウチにはとにかく追い風が吹きまくってる。


「ストライク!バッターアウト!」

「三振ッ!高めまっすぐ!」

「事故の一発がありましたが、今日の百々の球は切れてますねぇ」


(鋭利(えいり)くんと恵人(けいと)くんばかりが活躍してて思うところがあるのは火織(かおり)ちゃんや篤斗(あつと)くんばかりじゃない、ってね)


 オールスターで投げた都合でこのカードでは風刃くんと恵人くんは投げない。氷室(ひむろ)くんもまだ二軍で調整中。それでも代わりの常光(じょうこう)くんがよく穴埋めしてくれてるし、百々くん達既存の先発陣も奮起してくれてる。風刃くんの存在は徳田(とくだ)くんがちょっとした不和を生んだりもしたけど、決してマイナスばかりじゃない。


「……?どうしました?」

「あ、いや!何でもないよ……」


 思わず身震いする。僕が現役だった頃も2010年とか2014年とか、割と良い線いったシーズンはあった。今年も残り約60試合近くでペナントレースも団子状態だから、貯金が二桁あってもまだまだわからないところはある。喜ぶのはまだ早いのはわかってる。

 それでも、リーグでツートップのスラッガーと先発投手がそれぞれ揃ってるなんてのは、ここ20年くらいのバニーズでは考えられなかった事態。強さに確かな根拠がある状態。だからどうしても、今からでも期待せざるを得ない。


「みんな!まだまだゲームは中盤だ!シマッテイコー!!!」

「「「「「アァイ!!!!!」」」」」


 絶対にこのまま勝ち切ってみせる。現役時代に一緒に負け続けてしまった人達のためにも、負け続けてきた僕のせいで(わら)われてきた家族のためにも、負け続けてきた僕を将に取り立ててくれたオーナーのためにも、そして、志半ばで逝ってしまった(やなぎ)監督のためにもね。


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