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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第四章 黄金時代
828/1132

第百二十八話 心は素直(6/9)

 7月14日。エペタムズとのカード2戦目。


「ファースト捕って、二塁へ!」

「アウト!」

「一塁へ!」

「アウト!」

「アウト!ダブルプレー!」


「ええぞ風刃(かざと)!」

「3939」

「「「「「風刃くーん!!!」」」」」


「サンキューっす!」


「5回の裏攻撃終了、5-0!風刃、この回も無失点!連敗脱出に向けて今日も素晴らしいピッチングを魅せています!」


 週刊誌にすっぱ抜かれようが、鋭利(えいり)くんは相変わらず絶好調。憎たらしいくらいに。

 今日は珍しく初回から5点取れちゃったし、鋭利くんは多分勝つんだろうね、今日も。


「6回の表、バニーズの攻撃。9番キャッチャー、冬島(ふゆしま)。背番号8」


 日によって多少の変動はあるけど、6月以降は基本的に打順はそのまま。つまりアタシは今日も2番。ギリギリこの回に回ってくる。


「ストライク!バッターアウト!」


 交流戦明けくらいから当たってた幸貴(こうき)くんだけど、流石に最近になって少し冷えてきたね。初回に打てなかった数少ない3人の内の1人。


「1番サード、月出里(すだち)。背番号25」


「ワンナウトランナーなしで打席には月出里。6月に続いて7月も好調。打率.338、20本塁打、63打点に盗塁も20。いずれのタイトルでもトップを争っております。今日は第一打席のフォアボールのみ」


 (あい)ちゃんが序盤は打ち損じるか歩くかのどっちかなのは相変わらずだけど……


「鋭い打球!ライト前落ちましたヒット!」


 中盤以降は打ちまくるのも相変わらず。

 ……アタシの立場的には、鋭利くんにアレコレ思うよりも、同じ内野の逢ちゃんと競争しなきゃなんだろうけどね。でももう凄すぎて勝てる気がしないし、そもそも逢ちゃんみたいに『今の時代ならどうせメジャー行くでしょ』ってレベルの人と張り合うつもりはない。野球始めた頃はお金欲しさでメジャーに行く気満々だったけど、今となっちゃね。


「2番セカンド、徳田(とくだ)。背番号36」


「続くバッターは徳田。今シーズンはここまで打率3割ジャストで出塁率も.393。月出里に次ぐ得点源として大いに貢献しております」


 今のアタシは、あっくんのサクセスストーリーに誰よりも貢献して、あっくんとの子を育てる"お母さん"。ここで稼げたらそれで十分。たとえアタシがもっと頑張ればもっと上を目指せるものがあったとしても。

 ……というか、そう割り切りたいって気持ちも少しはある。アタシは元々プロになる前までは自分が"野球の天才"だと信じて疑ってなかったし、お金持ちになりたいのは今も変わってないしね。世の中には『正しさ』なんていくらでもあるけど、人は自分にとって都合の良い『正しさ』、自分の気持ちに折り合いをつけられる『正しさ』を信じたくなるものってね。


「引っ掛けた!これはセカンド正面……」

「アウト!」

「ファーストへ……」

「アウト!」

「アウト!ダブルプレー!」


「「「「「あああああ……」」」」」

「なーにやってだかおりん……」

「ほんま波あるなぁ……」


 ご覧の通り、今日のアタシはノーヒット。楽勝ムードに全然乗り切れてない。

 でもまぁ、良いよね?どうせ鋭利くんならこれでも勝つんだろうし、アタシだってここから取り返せば済む話。鋭利くんのサクセスストーリーに貢献する気はないけど、稼ぐために最低限はやりますよってね。

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