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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第四章 黄金時代
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第百二十八話 心は素直(3/9)

「4回の裏、ヴァルチャーズの攻撃。4番サード、玉木(たまき)。背番号31」


「2-1、徳田の逆転ツーランでバニーズのリードに変わって、4回の裏の攻撃に入ります。この回の先頭打者は玉木。昨シーズンは内外野を守りつつ規定打席に初めて到達しレギュラーに定着。今シーズンも.285、10本塁打、40打点と、持ち味の打棒を発揮しております」


 最近よく見かける、アタシとよく似た右投げ左打ちのプルヒッター。なら……


「引っ張った!一二塁間強い当たり……」


 そうくるよね。


「セカンド深いとこ捕った!」


「「「「「おおっ!!!」」」」」


「アウト!」

「一塁送球アウト!徳田、守りでも魅せます!」

「今のよく間に合いましたねぇ……」


「サンキュー!」


 グラウンドの中だから、あっくんとのコミュニケーションは最低限。

 ちょっと危ない当たりだったけど、アタシの方に打った時点であっくんの勝ち。せっかく6月は勝ちまくったのに、あっくんにだけ"連勝ストッパー"みたいな変なケチが付いて。前の5連勝の時だってちゃんと勝って繋いだのに。

 そんなに言うんだったら、今日も勝って黙らせるまでだよ。


「追っつけたバッティング!ショートとレフトの間……落ちましたヒット!」


「ドンマイドンマイ!」


 なかなか三凡とはいかないけど、今のは打った向こうが上手かったか、単なる事故。シングルの1本くらい何てことない。


「打ち上げた!セカンド落下点、見上げて……」

「アウト!」

「捕りました!これでツーアウト!」


 ほらね。この程度。

 確かにローテに定着した頃と比べて、三振はあまり()れなくなってる。それは事実だと思う。でもアウトにできれば同じ。ちょっと巡り合わせが悪いだけで、あっくんが凄いのは前から変わってない。

 ……鋭利(えいり)くんや恵人(けいと)くんがどれだけ凄かろうが、あっくんの方が凄いし。"バニーズのエース"はあっくん以外いないし。


「7番ショート、睦門(むつかど)。背番号6」


 爽也(そうや)くんはここ最近はまぁまぁみたいだけど、去年の大怪我の影響か、今年は2割切ってるくらい。爽也くんには悪いけど、今日も黙っててほしいね。


(氷室、確かにお()はすげぇ奴だべ。まっすぐにしてもフォークにしても、3、4年前から変わらずすげぇままだべ。これだけの球威、毎年維持するだけでも大変なのは、元投手のおらならわかる)


「ストライーク!」


 前の回は四球が続いたけど、この回はこうやってストライクもちゃんと取れてる。この回は乗り切れそうだね。


(それでいてこの制球。ほんと、高校の頃から見込んでた通りのすげぇ男だべ。だけどな……)


 !!?


「スプリット打った!左中間!!」


 やばい……!この方向は……


「そのまま外野の間抜けた!長打コース!」

「セーフ!」

「一塁ランナーホームイン!打った睦門も二塁へ!2-2、ヴァルチャーズ、あっという間にゲームを振り出しに戻しました!」


「「「「「爽也くーん!!!」」」」」

「やっぱこの世代は"パンダ"なんかより爽也くんたい」

「未婚やしな」


(くそっ……!)


 ……確かにちょっと浮いたスプリット。アタシもあっくんと勝負するならそれを選ぶ。でもあんな簡単に……


(氷室。お()は強みも弱みも、『変わらずすげぇこと』だべ)


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


「!!!これはライト一歩も動きません!打った友枝(ともえだ)も走り出さずそのまま見上げて……!!」


 そんな……


「入りましたホームラン!スタンド上段まで突き刺さる特大の一発!3-2、ヴァルチャーズ、ついに勝ち越し!」


「ナイスチェストばい!」

「"球界最強打者"はちょうちょじゃなく弓弦(ゆづる)たい!」


 何で……?今日のあっくん、別に悪いとこなんてないのに……

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