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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第四章 黄金時代
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第百二十七話 そんなんもう関係あらへん(5/5)

******視点:冬島幸貴(ふゆしまこうき)******


 6月28日。今年から選手寮を離れて、球場近くに借りてるマンション。


幸貴(こうき)くん、バニーズ首位おめでとう!」

「おう、ありがとな」


 1人暮らしやけど、今日は初音(はつね)がゲスト。テーブルの真ん中には小さいケーキの箱。わざわざクラッカーまで鳴らして。

 ウッドペッカーズ戦3タテで9連勝の後のホーム6連戦。結果的に連勝は11で止まったけど、6戦で4勝2敗。当然首位キープで、8カード連続勝ち越し中。恐ろしくチーム状態が()え。


「やっぱ幸貴くんがリードしてるからかな?」

「いや……せやけどそれ言ったら篤斗(あつと)、また負かしてもうたし」

「ああ、氷室(ひむろ)くん……」


 今年の篤斗、別に例年と比べて特別悪いわけでもないんやけどな。でも前の負けと言い、どうも大きめの連勝をよく止めるから、やけに印象に残る。風刃(かざと)くんに山口(やまぐち)さんと、"エース"の座を奪いかねんような奴がいきなり2人も出てきたから余計に。


「氷室くんと仲良(なかえ)ええん?」

「……まさか初音も篤斗を……?」

「あはは!(ちゃ)(ちゃ)う!そんなん(ちゃ)うって!っていうか氷室くん、確かもう結婚してるやろ?」

「せやな。篤斗(アイツ)とはまぁ……ルーキーの時に専属でバッテリー組んでてな。そのおかげで一軍でキャッチャーとしてアピールできたとこがあって」

「そうなんや……やったら残念やな」

「ん……」


 ……ちょっと前までのオレやったら、そんな恩も忘れて、『利用したイケメンが勝手に落ちぶれた』とかそんなことで内心ほくそ笑んでたんやろうな。

 まぁそれでも、初音が篤斗になびくのは流石に許せんけど。


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


 ケーキ喰いながら駄弁(だべ)って、またいつも通りの流れ。


「なぁ初音」

「ん?」

「10月、11月辺りになったら時間あるか?」

「オフの話?」

「ん」

「んふふ……優勝できたらもっとすごいことしたろか?」


 初音の中じゃオレは相当な猿扱い。それは妥当な評価。実際、今でもやることはやりたい。せやけど……


「それもええけど……あの……」

「?」

「どっか旅行とか、行けへんかなって……」

「え……?」

「お互いテレビで顔割れとるし、行けるとこだいぶ限られてると思うけど……今までちゃんとデートらしいことあんまできてへんかったし」

「……!」

「初音とはこういうことするのももちろんええけど……その、これからのこと考えたら、単純に一緒におる時間も大事にできたらええなぁって……水族館行ったり、温泉街行ったり、そこでちょっとレトロなゲームしたり……」


 柄にもないことを言って、お互いの間に沈黙が流れる。

 ……やっぱオレみたいなんがこんなん言ってもキモいだけやろか?


「幸貴くん」

「え……」


 頬に温かく湿った感触。その後すぐに、抱き慣れた感触。


「楽しみにしてるで」

「お、おう……」


 ほんまオレらしくもないわ。こんなことで、1人の女のことしか考えられんようになるなんて……

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