第百二十七話 そんなんもう関係あらへん(1/5)
******視点:冬島幸貴******
「8回の表、バニーズの攻撃。6番センター、秋崎。背番号45」
3-0のまま終盤。オレや月出里ちゃん以外も大体1回くらいは塁に出てるけど上手いこと繋がらへん。
「アウト!」
「アウト!」
「ボール!フォアボール!」
「選びました!ツーアウトから相沢が一塁へ!」
ただ、今日2つ以上出てる相沢さんとオレと月出里ちゃんの打順が連続してる以上、打順の構想自体は間違ってへん。5回に連打を許しただけで、向こうの投手陣がここまで粘ってきた結果。ウッドペッカーズは何やかんやでずっと首位付近におるだけある。
「9番キャッチャー、冬島。背番号8」
「ツーアウト一塁となって打席には今日4打席目となります冬島。今日ここまで2打数2安打、四球1つ。打点こそありませんが、絶好調の月出里への繋ぎ役として非常に機能しております」
3-0というスコア。継投考えたら記録上では理想的な展開やけど、試合やってる当人達からしたらリードなんていくらあっても困らへんわな。
「!!!レフト線……」
「フェア!」
「フェア!長打コース!!」
「「「「「おおおおお!!!!!」」」」」
「セーフ!」
「一塁ランナー三塁へ!打った冬島も二塁へ、ツーベース!!冬島、この天王山で3安打猛打賞ッ!!!」
「いよっしゃあああ!!!」
「"キツツキキラー"最高や!」
「さす正捕手」
「1番サード、月出里。背番号25」
良い当たりすぎて相沢さんでも帰れんかったけど、月出里ちゃんなら十分なはず。
「ツーアウトから一気に二塁三塁のチャンス。打席にはこちらも今日大当たりの月出里。先制タイムリーとなるツーベースに加え、先ほどライトへの技ありの1本に四球1つ。今月のバニーズの大躍進はまさに月出里の打棒あってのものでしょう」
(3点ビハインド……ここで今更歩かせるのは士気に関わる。むしろここで月出里を打ち取れればまだ流れは来るはず)
「柿崎監督は出てきません。ここは勝負のようです」
「ちょうちょ!トドメ刺したれや!」
「いけるいける!」
「7連勝あるで!」
ここでの勝負は妥当。やけど……
「ボール!」
「ボール!」
「ボール!」
「ボール!フォアボール!」
「ああっ、これも外れました……」
「おいィ!?何ヘタレとるんじゃ!!?」
「勝負しろよ勝負!」
まぁまともに勝負できんわな。ただでさえ絶好調でもう4打席目。月出里ちゃんはゾーン入りまくり。オレやってあんなんと勝負したないわ。
「2番セカンド、徳田。背番号36」
(右に打つbotみたいになっちゃってるけど、そろそろアタシも打ちたいなぁ)
「ウッドペッカーズ、選手の交代をお知らせします。ピッチャー、■■に代わりまして……」
そらそうやな。このままみすみす次の1点許せんわな。押し出しとかなら尚更致命傷。
「センター返し!」
「「「「「おおおおお!!!」」」」」
よし、これなら1点……!
(このまま終われるわけないやろ!)
「!!!センター飛び込んで……」
「アウトォォォォォ!!!」
「と、捕りました!センター乾、ダイビングキャッチ!!スーパープレーが飛び出しました!!!」
「「「「「キャアアアアアアア!!!」」」」」
「両刃くんサイコー!」
「ようやった"守備の人"!」
(悪いな幸貴……これも勝負や)
この状況でこのプレー。黄色い歓声……休み明け前のオレやったらムキになってたやろうな。
「恵人くん、冬島くん。次の回が正念場だよ?」
「はい!」
「うっす」
けど、今のオレにはそんなんもう関係あらへん。




