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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第四章 黄金時代
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第百二十六話 年季の入った負け犬(6/9)

 ゼロ進行のまま2回の裏。


「これはレフトの前……落ちましたヒット!」


「「「「「良いぞ良いぞ珊瑚(さんご)!」」」」」


(抜けちゃったか……)


 まぁシングルならまだ大丈夫。鳴海(なるみ)くんは四球をよく選ぶ勝負強い中距離打者だけど、今年はすでにホームラン10本と、琴張(ことはり)くんとスタイルを入れ替えたかのような成績。多分、4番に据えられて長打を打つ意識が強くなった結果。


「5番ライト、梶江(かじえ)。背番号27」


(ウッドペッカーズは下位もOPSそこそこの打者が揃っとるけど、大体が繋ぎのタイプで一発はあんまり心配要らへん。落ち着いて対処お願いします)

(OK)


 恵人(けいと)くんならこのくらいの事態はきっと想定内。


「一塁牽制!」

「セーフ!」

(あたいもできれば走りたいんだけど……やっぱ前の試合と言い、隙がないわね)


 うんうん、冷静だね。鳴海くんも一応2桁走ったことがあるからね。

 下位もアベレージヒッター揃いのウッドペッカーズ相手なら、ここでしっかり釘を刺しておく意味は大いにある。単純にシングルでの1点を防げるだけじゃなく……


「これは引っ掛けてセカンド正面!二塁へトス!」

「アウト!」

「二塁アウト!」

「アウト!」

「一塁もアウト!ゲッツー!!」


「ナイス二遊間!」

「やっぱ相沢(あいざわ)うめーわ」

「あけみんも最近ミス減ったし肩は間違いなく上やけど、あの動きはまだまだなぁ」


 三振があまり多くないアベレージヒッターなら、逆にこういうのも狙えるってね。


「ストライク!バッターアウト!」

「最後は外いっぱい!手が出ません!これでスリーアウトチェンジ!」


「ナイピー山口(やまぐち)さん」

月出里(すだち)さん、そろそろ打ってくれますよね?」

「大丈夫大丈夫」

(また尻触られた……どう反応すれば良いんだろこれ……)

(しまった。またセクハラしちゃった。カメラ抜かれてないよね?)


 月出里くんに労われつつ、ベンチに恵人くん。


「恵人くん」

伊達(だて)さん?」

「大事な試合だけど、冷静にやれてるね」

「当たり前ですよ。伊達さんが風刃(かざと)さんじゃなくておれを先発に選んでくれたんですから、絶対に恥をかかせません」

「ありがとう。迷ったんだけど、こういう試合はより付き合いの長い恵人くんに任せたかったんだよね」

「……!もうパーフェクトとかノーノーとかは無理ですけど、今日は完封します!」

「ははは!無理はしないようにね?」


(良いなぁ、伊達さん。山口さんにあんなに懐かれて……)


 リーグ戦再開までに日が空いたから、ローテを再編。風刃くんは出力高めだからここいらでまとまった休みを挟ませたかった。そういう理由もあるけどね。


「3回の表、バニーズの攻撃。9番キャッチャー、冬島(ふゆしま)。背番号8」


 実質三凡続きの恵人くんほどじゃないけど、向こうの光橋(みつはし)くんも好調。

 左ながらカットボールが武器の光橋くん相手に右をあんまり並べてもってとこはあるけど、今ちょっと左打者が全体的に不調でこうせざるを得なかったんだよね。相沢くんも戦力である以上、あんまり試合感覚を鈍らせたくなかったし。

 でも、例年ではウッドペッカーズ戦に強い冬島(ふゆしま)くんを9番に置いたのはそういう理由じゃない。勝ってる間に月出里くんを1番に戻したのと同じく、これも1つの賭け。


(…………)

(今年の冬島ならそんなに心配はない。カモの右の1人と割り切ってけ)

(はい……!?)

「初球打ち!ピッチャーの頭上抜けた!センター前!」


「「「「「おおおおおっっっ!!!」」」」」


 うんうん、良い判断だね。今日の光橋くん相手に待ってても不利になるだけだし、あのカットボールはわかっててもそう簡単に打てるものじゃない。追い込まれる前にそれ以外の球にしっかり絞って打つ。冬島くんらしいクレバーさだ。


「ええでええで"正捕手"!」

「"キツツキキラー"復活頼むで!」

「お?冬島が塁に出たってことは……」


「1番サード、月出里(すだち)。背番号25」


「よっしゃ!ランナーありでちょうちょや!」

「ゲッツー以外で頼むで!」

「大丈夫や。今月のちょうちょのゲッツーはたった3つや」


 冬島くんの後の月出里くん。色々理由があるけど、この並びは個人的に結構いけると思ってる。そろそろ機能してくれるかな?

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