表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第四章 黄金時代
804/1132

第百二十五話 これも1つの戦い(4/8)

******視点:卯花優輝(うのはなゆうき)******


 6月15日。(あい)は昨日完全オフで、試合はあと3日間休みだけど、仕事が全くないわけじゃない。

 大阪市内のとある撮影スタジオ。今日はここで、今度やる球団の企画用のグラビア撮影。集められたのは逢と、逢のドラフト同期の高卒組、風刃(かざと)さんに山口(やまぐち)さん、十握(とつか)さんに宇井(うい)さん。つまりは最近一軍で活躍してる若手の人達が中心。


「あ、卯花(うのはな)さん。お久しぶりです」

「お久しぶりです」


 おれも逢の付き添いで現場入り。バニーズで球団スタッフをやってた頃の同僚の人達もチラホラと。そして他にも……


「皆様、お揃いのようですわね」

「「「オーナー!?」」」

(まさか今日、三条(さんじょう)オーナーも企画に……?)

(まぁオーナーも普通に美人さんだしなぁ)


 すみちゃんも参加。バニーズを買い取った初年度は経営を立て直すためにこういう撮影にバンバン出てたけど、2年目以降……つまり逢が入団してからは大学との両立が難しくなって、去年までメディアでの露出は控えめだった。球団内の仕事も吉備(きび)さんや梨木(なしき)さんに投げてたしね。

 そしてそういう事情があったからか、個人的な付き合いのあるおれや逢はともかく、他の人達はすみちゃんとこうやって顔を合わせる機会もあんまりなかったっぽい。


「本日はご多忙の中、お集まり頂きありがとうございます。まずは皆様、先日はバニーズを交流戦優勝とAクラスへ導いて頂き、誠にありがとうございました。バニーズの三条(さんじょう)財閥体制が始まって今年で5年目となりますが、本日集まって頂いた選手の皆様はその体制が始まって以降に入団して頂いた方々。こうやってチームが躍進できたのは皆様のご活躍によるものと認識しております。そしてこのまま皆様がバニーズを優勝へ導いてくださると心から信じております」

「ど、どうも……」

(おれは厳密には前の体制の人達にドラフト指名されたんだけどね)


 おれや逢以外もいるからか、すみちゃんの口調はよそ行きモード。


「さて、先ほども軽く触れましたが、今回の企画の主旨は天王寺三条(てんのうじさんじょう)バニーズ5周年を記念するものです。そしてチームもここ最近好調ですから、おそらくこういった企画へのファンの注目度もより一層高まってるものと思われます。そこで今回は皆様の若さを生かしつつインパクトのあることに挑戦してみたいと考えております。まずは皆様、こちらをお受け取り下さい」


 すみちゃんに促されたスタッフの人達が、選手1人につき1つずつ、大きめの紙袋を配る。選手の人達は中身を確認。

 ……何かこの流れ、前にも見たような……?


「これ……学校の制服っすか?」

「はい。今回の企画は、いわゆる『学園もの』というやつです」

「俺、来月で25なんですけど……」

「十握さんならまだまだ全然いけますよ。というか皆様、揃ってスタイルも良いですし、きっと似合いますよ」

「よくわかってる……ますねオーナー」

「おおーっ、懐かしいっすねぇ!」

「これ、胸囲大丈夫かな……?」

「え……?」

「まぁまた巫女服とかよりは良いか」

「あはは!こりゃ面白そうっすねぇ!」


 逢は意外とまんざらでもなさそうな感じ。他の選手の人達も割と盛り上がってる。


「ちょっとオーナー!?これどういうこと!!?」

「いかがなさいましたか?」


 突然大声を上げた山口(やまぐち)さんの方を澄ました顔のまま見るすみちゃん。


「いかがなさりまくってるよ!何でおれのやつ女子用なんだよ!?」

「ぷっ……wい、いや、ちょっとした変化球も必要かなと思いまして……ぷくくっ……www」


 紙袋の中身……スカートを見せつけて憤慨する山口さん。それに吹き出しそうになりながら誤魔化すすみちゃん。

 既視感があると思ったけど、やっぱりそういうこと……


「あはははは!そりゃ良いや!山口さんなら絶対めっちゃ似合いますよ!」

「そういう問題じゃないよ!何でおれだけ……」

「……んー、だったら……三条オーナー、女子用のやつ予備とかあります?おれも着ますよ」

「風刃さん!?」

「いや、そんなのあるわけ……」

「こんなこともあろうかと思って用意しておきましたわ」

「「「「「あるのかよ!!?」」」」」


 サムズアップしながら紙袋をもう1つ差し出すすみちゃん。『変なところで笑いを求める』っていう、すみちゃんの悪い癖が出ちゃったか……


「優輝。風刃さんと体型あんまり変わんないでしょ?せっかくだから代わりにこれ着なさい」

「うぇっ!?いや、おれ選手じゃないし、そもそも今はバニーズのスタッフでもないし……」

「貴方だったら女子ウケ狙えるじゃない」

「ちゃっかりしてるなぁ……」

「まぁそれは半分冗談として……貴方の顔、良い加減ファンに割れてるでしょ?この機会に立場をある程度明確にしておいた方が変な憶測も呼ばずに済むし、逢にとっても良いでしょ?」

「あ、そっか……」


 おれが表に出るのは試合前の練習がほとんどだけど、投げる相手が相手だからね……去年から世間の逢への注目度が一気に高まって、ネットでもたまにおれの姿が写ってる画像とかをたまに見る。そして今年優勝すれば、ますますそうなりそうでもある。

 目立つのは好きじゃないけど、今後のことを考えたら仕方ないか……


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ