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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第一章 フィノム
76/1129

第十四話 決められてたんだよ(1/9)

6回裏 紅3-4白 ツーアウト一塁


○白組


[先発]

1二 徳田火織(とくだかおり)[右左]

2中 有川理世(ありかわりせ)[右左]

3右 松村桐生(まつむらきりお)[左左]

4一 天野千尋(あまのちひろ)[右右]

5三 リリィ・オクスプリング[右両]

6捕 冬島幸貴(ふゆしまこうき)[右右]

7指 伊達郁雄(だていくお)[右右]

8左 秋崎佳子(あきざきよしこ)[右右]

9遊 月出里逢(すだちあい)[右右]


投 山口恵人(やまぐちけいと)[左左]


[控え]

雨田司記(あまたしき)[右右]

氷室篤斗(ひむろあつと)[右右](残り投球回:0)

夏樹神楽(なつきかぐら)[左左]



●紅組

[先発]

1中 赤猫閑(あかねこしずか)[右左]

2遊 相沢涼(あいざわりょう)[右右]

3右 森本勝治(もりもとかつじ)[右左]

4左 金剛丁一(こんごうていいち)[左左]

5一 グレッグ[右右]

6指 イースター[右左]

7二 ■■■■[右右]

8三 財前明(ざいぜんあきら)[右右]

9捕 真壁哲三(まかべてつぞう)[右右]


投 牛山克幸(うしやまかつゆき)[右右]


[降板]

三波水面(みなみみなも)[右右]

早乙女千代里(さおとめちより)[左左]

******視点:リリィ・オクスプリング******


「センター!」


 天野(あまの)さんの初球フルスイングから繰り出された痛烈なゴロ。ややショート寄りやったけど、相沢(あいざわ)さんの守備範囲をも破るほどの球足の速さ。結果こそお手本通りのセンター前のシングルヒットやけど、内容はまさにパワーヒッターのそれや。


「いやぁ、やっぱ天野の打球は他の奴とは格が違うなぁ」

「今の時代はヒョロガリのちょこんと当てるヒットよりもバレル意識よ」

「バニーズはずっと走るの以外さっぱりやからなぁ。こういうタイプがもっと育ってほしいわ」


 まぁバッティングの好みは人それぞれやし、ウチなんかは打席の左右でアプローチを若干変えてるんやけど、実際今の時代は統計的に強打の方が期待値が高いとされとるな。

 今の日本球界で"最強打者"と言われるヴァルチャーズの友枝(ともえだ)さんも、空振り率こそ高いものの圧倒的なスイングスピードと打球速度でどの分野においても優れた打撃成績を残しとる。


「5番サード、リリィ。背番号54」

「リリィ!まだランナー2人おるんやで!あんじょうやれや!」

(フン。一発のある天野がシングルで済んだのなら上出来よ。こっちはあと1つアウトを取れば良いだけの話。押せ押せの状況だからと言って、早乙女(さおとめ)達と同じようにやれると思うなよ……!)


 牛山(うしやま)さんには動揺なし。さすが一軍の接戦と勝ち試合を任されてる立場の人間や。肝の据わり方がちゃうな。

 牛山さんは右投手やから、当然ウチは左打席に立っとる。投手は右の方が多いものやから、スイッチヒッターは基本的に左打者の延長みたいな存在。せやからウチはどっちかというと左の方を重点的に鍛えてきたし、どっちかというと左の方が打てるっちゃ打てる。せやけどプロに入ってからずっと右投手続きやし、たまには右で打ちたいわ。


「ボール!」


 まぁとは言っても、こんなとこでいきなり振るほど気持ちは逸っとらんわ。


(1球目から決め球のチェンジアップで入ったが、振ってこなかったな。ベンチとブルペンで動向を探っていたが、やはりルーキーの割には冴えてるようだな)


 ついさっき初球打ちを喰らったばかりで、最悪まだ塁には余裕がある状況。狙い球以外ならスルーは当然。じっくり攻めさせてもらうで。


「ストライーク!」


 140前半の速球。今の時代の右のリリーフとしては遅い部類。せやけど流石にあの"球界屈指"と言われるチェンジアップの後やと簡単には手を出されへん。長身のオーバースローから放り投げられるからか、普通のチェンジアップでは考えられんくらいよう落ちとる。


「ファール!」

「ファール!」


 チェンジアップ、ストレート、チェンジアップ、チェンジアップの緩急か……当てられんことはないけどタイミングが掴みづらいな。


(もうちょっと低く投げたいのだが、真壁(まかべ)さんの捕球がな……)

(……なんてこと考えてるんじゃないだろうな?)

(まぁそれもまたアピール材料よ。低めがあまり使えなくともやりようはある!)


 インコース直球!これは近い……いや!


「アウト!スリーアウトチェンジ!」


 フロントドアシュート……ポイントをずらされたか!


「ええとこ投げ込んだなぁ。さすが牛山、制球ええから安心して見てられるわ」

「図体でかい割に球は速くないけど、あのチェンジアップに加えてスライダーシュートで芯を外すのも巧いからな」

「元々プロ入ってすぐは150くらいの真っ直ぐが武器やったんやけどなぁ」

「ぶっちゃけ百々(どど)の劣化版みたいな感じやけど、途中から百々が出てきてくれると考えたらありがたいくらいやで」

(フッ……百々さんを倣って今の俺があるのだから"劣化版"で大いに結構だ。いつかは百々さんに並び立つエースになってみせるがな)


 褒められてるようで結構酷いこと言われとるのに堂々としとるな。速球派からモデルチェンジして結果を出し始めた経緯といい、あの財前(ざいぜん)さん達4人とドラフト同期とは思えんくらいプロ意識の高い人やで。


(くそっ、勝ち越された上に予定より早く降ろされて、しかも牛山に火消しされるなんて……!あーしをどんだけ惨めにさせんだよ……!)

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