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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第三章 オーバーダイブ
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第百十五話 旋風(1/9)

******視点:卯花優輝(うのはなゆうき)******


 3月29日、昼前。今日は月曜だからプロ野球はオフ。バニーズは埼玉への遠征を終えて、(あい)ももうすぐ大阪に戻る予定。もてなすために部屋で昼食の準備。


「……あ」


 呼び鈴が鳴って、まずはマンションの門を開く。もう一度呼び鈴が鳴って玄関を開けると逢の姿。


「お疲れ様……うぇっ!?」


 玄関を閉めると同時に、逢が荷物をほったらかして急に抱きついてくる。


「んっ!?……んんっ……」


 そこから唇を奪われて、口の中で逢の舌が激しく(うごめ)く。


「……優輝(ゆうき)、今日はいつもより激しめにお願い」

「え……?いきなり……?」

「あたしとするの嫌なの?」

「いや、そういうわけじゃないけど……」


 まぁ正直するとは思ってたけど、今日の逢は一段と目がギラギラしてる……そういう欲求以外にも何か溜め込んでるような、そんな感じ。


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「はぁっ……はぁっ……」


 ようやく逢が満足してくれたみたいで、お互いにベッドの上で一休み。ご要望に応えて頑張ったけど、学校で眠くならないか心配……


「ねぇ、逢」

「ん?」

「もしかして、昨日の宇井(うい)さんのプロ初アーチ?」

「……よくわかったね」

「うん、まぁ……」


 やっぱりそうだよね……


「また先越されちゃった。しかも2つも年下の子に。あたし、こんなに頑張ってるのに……」

「うん、逢は頑張ってるよ。誰よりも」

「あたし、可愛い?」

「うん」

「どれくらい?」

「世界一」

「だよね。そんなあたしを抱けるのは最高だよね?」

「うん、そりゃまぁ……」


 うーん、ほんと逢は……

 普通に考えたら、ホームランが全く打ててないだけで、選手としての格は間違いなく上。というかまだ21なのにもう球界トップクラスの内野手。しかも自己申告通りこの見た目だから、もう多分プロ野球ファン以外にも名前が知れ渡ってるくらいのスターなのに、ホームラン1つ打てるか打てないかだけで他の選手を妬みまくって……


「……明日からホームだし、おれも協力するから」

「うん、お願い」

「どう今年は?優勝できそう?」

「多分ね。あたしはまだヒットはあんまり出てないけど手応えはあるし。朱美ちゃんの守備も、よその球場に慣れたら変わってくると思う。リリーフも雨田(あまた)くんがえらいコントロール良くなったし、他の人達も良い感じだから、打線がちょっと上向いてくればちゃんと勝ちを積み重ねられると思う。それに……」

「それに?」

山口(やまぐち)さんが……いや、それ以上に風刃(かざと)くんがヤバいし」

「……何かバニーズの人達の間でもそういうの聞くけど、今年の風刃(かざと)さんってそんなにすごいの?」

「うん、別格。氷室(ひむろ)さんと百々(どど)さんも良いピッチャーだと思うけど、あたしだったら開幕投手は風刃くんにしてたよ」


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******視点:宇井朱美(ういあけみ)******


 3月30日。今は選手寮住みの中で今日一軍の試合に出るメンバー全員揃って、球団のバスで球場まで移動中。

 今日からホーム開幕戦……ではあるんすけど、相手はよりによってヴァルチャーズ。

 去年優勝して、おまけに4年連続帝国一。今年はエースの真木(さなぎ)さんが故障で出遅れたりで先発がちょっと人手不足ではあるものの、リリーフは相変わらず盤石で、去年OPSリーグ1位の"球界最強打者"友枝(ともえだ)さんを中心とした強力打線も健在。球界の偉い人達もほとんどがヴァルチャーズを1位予想して、今年も優勝候補筆頭。現に開幕カードでは去年2位のアルバトロス相手に3タテ。もちろん現状首位。

 そして自分にとっては、今日が初めてのヴァルチャーズ戦。監督のためにも今日もドカンと一発大きいの打って守ってといきたいところっすけど、流石に緊張して……


服部(はっとり)!お前も今度合コン来るか!?」

「うぉっ!?良いんすか!!?」


「な、なぁ佳子(よしこ)。ちょっと相談しても良いか?」

「どうしたの、神楽(かぐら)ちゃん?」

「実は今付き合ってる彼氏のことでな……」

(あ、もしかしてまた変な人と……)


「おいィ!?《オ■■ス》は戦争だろうが!!?」

「《ウ■ロ》抜いてるから良いじゃないですか」

「どっちもスタンで禁止だっつーの!」


 やっぱり他の先輩方は慣れてるっすねぇ。自分も普段は割と騒がしくしてる方っすけど、大して長くもない移動時間でこれだけワイワイと……


「…………」


 月出里さんはタブレットでデータを確認してるっぽいっすね。うーん、さすがチームで一番のスター。珍しく眼鏡をかけてるけど、美人だからああいうのも野暮ったくないどころかサマになってるっす。

 と言うよりも『近づくな』オーラが凄いっすね。普段からあんまり他の人に干渉するタイプでもないし、むしろこういうワイワイしてるのに巻き込まれないためにああしてるのかも……


「……ん?」

「zzz……」


 風刃さん、こんな騒がしい中でもぐっすり寝ちゃって……今日の先発を任されたプレッシャーもあるはずなのに、神経太いっすね。

 まぁあれだけすごい球投げれるなら、焦る必要すらないってことなんすかね……?


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