表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第三章 オーバーダイブ
727/1167

第百十四話 最低条件(4/8)

「4番ファースト、(せき)。背番号3」

「打席には一発のある関。ツーアウトランナーなしですが、一発で同点です」

(さっきの若王子(プラチナブロンドガール)もあれはあれで厄介だったが、個人的にはこういう一発重視のタイプの方が嫌だな。私とてコントロールミスくらいはする。その時のリスクを考えたらな)


 さて、関さんにはどう攻めるのか……


(ホームランバッターというものは大抵『ツボ』というものがある。『そこにさえくれば、あるいはそういう球さえくれば、ほぼ確実にスタンドまで放り込める』、というもの。だがホームランバッターはホームランの再現性のために、その『ツボ』がブレることを嫌う。故に、ホームランバッターを攻略できるかはその『ツボ』をいかに避け続けられるか。これに尽きる)


「ストライーク!」

「初球外カーブ!見送りました!」


 いきなり緩い球。いや、それも狙いか……


(またか……!)

「ファール!」

「また外カーブ!今度は当ててきました!」

(この打者は基本的に速めの球を打ちにいく。そして外目の球でも逆方向に大きく打ち返せる。ならば最後は……)

(!!!遅いの2つの後に内の速いの……!)


 いや、これは……


(ああ、確かに速いのだよ。だが罠だ)

「打ちました!しかし当てただけ!サード捕って……」

「アウト!」

「アウト!落ち着いて捌きましたサード月出里(すだち)!」


 最後にインローに潜り込むツーシームか……確かに関さんは内側の球はあんまりホームランにできないみたいだけど、パンチ力のある打者に抜けると怖い球。こういう結果になると絶対の自信を持ってるからこそできる投球。


「これでスリーアウトチェンジ!8回の裏ビリオンズ三者凡退!バニーズ期待の新戦力イェーガー、デビュー登板から見事な投球!3-2、バニーズのリードが続きます!」


「ええの獲ったわ!」

「サンキュースナイパー!」

「来年ヴァルチャーズとかに行かんとってね(切実)」


 イェーガーは日本語はわからないみたいだけど、ファンから歓迎されてるのは伝わってるようで、観客席に手を振って応えつつ悠々とベンチへ戻っていく。

 ビリオンズの上位打線相手、それもボール球はわずか2つ。長く投げていけば向こうも慣れてくるだろうけど、ここまでやれるのなら今年中は勝ちパターンの座は安泰だろうね。


「ベリーナイス!イェーガーくん、体調は大丈夫かい?この球場結構冷えるでしょ?」

「サンキュー監督(ボス)。しかし、そこまで私はヤワではありません。高い給料(サラリー)を頂いてる以上、どんな環境であろうと結果を出すまでです」


 まぁボク自身も勉強になった。今年のボクが目指すべきは、きっとああいう投球だろうから。


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


「バニーズ、選手の交代をお知らせします。ピッチャー、イェーガーに代わりまして、雨田(あまた)。ピッチャー、雨田。背番号19」


「ファッ!?今年のクローザーってメガネなんか!!?」

「いや、開幕前に言うとったやん……」

埴谷(はにや)も開幕間に合わんかったしなぁ」


 クローザーは初めて……でもないな。プロに入ってすぐの紅白戦。あれ以来か。


(今年の投手陣の起用法的に、契約で登板数が限られてるイェーガーくんはクローザーとして固定するよりリリーフとしてフレキシブルに使いたい。エンダーくんとも迷ったけど……)


 ボクも最初は驚いたよ。先発ローテは諦めて、せめて一軍でどんな形でも実績を積みたいと思ってたけど、まさかこんな大役に抜擢されるなんてね。


「9回の裏、ビリオンズの攻撃。5番セカンド、赤藤(あかふじ)。背番号5」

「さぁ遂に最終回。3-2でバニーズがリード。マウンドにはプロ4年目の雨田。昨シーズンは開幕ローテ入りし、経験を積みましたが、今シーズンはクローザーでの起用となります。1点差でチームの今シーズン1勝目がかかったこの場面。いきなり大きな仕事を任されました」


「赤藤!しっかり見てけよ!」

「ピッチャーノーコンノーコン!」

「自滅誘って逆転サヨナラじゃ!」


 ……まぁ、そう考えるだろうね。去年でそういう奴っていうイメージが定着しただろうし、春のキャンプの時は去年以上に制球が酷かった。


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ