第百十二話 タ■ちゃん作りたいの?(5/5)
******視点:月出里逢******
主にあたしのせいでお互い生まれたままの姿なんて何度も見てきた。でも今日は特別。ずっとお預けだった『最後まで』をやれるから、お互い慣れたはずの愛撫もどこかぎこちない。
まぁ、あたしも待ち望んでた反面、怖いと思うところもある。こんなでっかいの入るのかとか痛くないかとかそういうのもあるけど、それ以上に気持ちの問題。
優輝も昨日変態をけしかけられて酷い目に遭ったけど、あたしもああいうのは何度か体験済み。プロ入り前にもね。初めてでいられたのは本当に悪運が強かっただけ。よく言う『好きな人となら』ってのが本当に適用されるのかすらも、初めてだからよくわからない。
「優輝、タ■ちゃんはまだお預けだからね?」
「う、うん。わかってるよ……」
なのに、あたしは強がってみせる。昨日の優輝のトンチンカンな発言をこすって。新しい家族になるんだから、もっと弱いとこを見せても良いはずなのに。『弱さを見せたら終わり、ナメられたら終わり』っていうのが骨身に染みてるのをこんなところでも実感する。
「優輝、そろそろ……」
「うん」
仰向けで寝そべるあたしを優輝が四つん這いになって見下ろす。
「優輝」
「ん?」
「あたしの初めては高く付くよ?」
「うん。一生大事にする」
「じゃあいっぱい努力してね?"あたしの最初で最後の男"になれるように」
「もちろん」
そう言って、始める前にあたしに被さって、身体を密着。異物ごしでも、優輝のがいつもよりも熱くて大きいのを実感する。
……こんな年下の女が強がっても強がっても、生意気なことをいくら言っても、優輝は呆れたりせずにあたしに合わせてくれる。それがあたしにとってはどれだけありがたいか……
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初めての1回目を終えて、お互いにベッドに寝そべって一息。
「……ねぇ優輝」
「ん?」
「もしかして、初めてじゃなかった?」
「えっと……うん。おれんち、あんなんだからさ……高校入ってすぐ、その……『ハニートラップ対策』とか『男は女慣れしておかないと出世が』云々とかで、そういうとこに何回か連れてかれて……」
「チッ……」
「ご、ごめん……」
道理で何か小慣れてると思った。こっちは初めてをあげたのに不公平。
「他は?」
「え?」
「他の女。あたし以外の」
「いや、それ以外は誰も……」
「今後あたし以外としたら握り潰すから」
「う、うん……」
「なら良し」
でも、この感触を独り占めできてないのを惜しむくらいには良かった。確かに思った通り最初はちょっと痛かったけど、その強い刺激がだんだん受け容れられるようになって……
「優輝」
「うぇっ!?」
「おかわり」
あたしがプロ入りする前に火織さんが遊びまくってたの、今なら正直理解できる。癖になっちゃうよね、こんなの。
新しいのを付けて、今度はあたしが優輝に乗る。
「だ、大丈夫なの?」
「余裕。優輝こそ、あと2、3回は頑張ってね?」
優輝のだって、あたしが近付いただけでもうやる気満々。お互い様だよね?
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「はぁ……はぁ……」
あたしの上で息を切らす優輝。胸に吐息が当たってくすぐったい。
「はい、よくできました」
抱いて頭を撫でると、許されたかのように先端を吸う。だから、あたしの方が経験が浅いくせに生意気なことが言ってしまえる。
「ほんと好きだよね。大しておっきくもないのに」
「大きさとかじゃなく、逢のが一番良い」
まぁ優輝はヘタレなとこもあるけど、立場的に色々我慢もしてきたんだろうね。こんな見た目なら女子に言い寄られたことなんていくらでもあるだろうし。そのタガが外れたのか、何回も何回も、ずいぶん激しく可愛がってくれた。『この女にだけは自分を残せる』と言わんばかりに、男が生まれ持つ本能をありったけぶつけてくれた。
こんな顔も身体も性格も良いけどクッソ厄介な実家持ちの地雷物件を救い出せたのも、野球で結果を出せたから。こんな良い男が『恩返し』と言わんばかりに精一杯あたしに尽くして、クッソ情けなくあたしに縋り付いてくる。あたしのものにできた実感。心も身体も満たされて、頭の中が泡立つようにゾクゾクする。
「ご褒美」
「え……うぇっ!?」
あたしと優輝の間にあった隔たり。すっかりおとなしくなった優輝のから抜き取って、行き場がなかった優輝の一部を口の中に垂らして飲み込む。本来の目的地に辿り着けなかったけど、せめてあたしの中には入れてあげる。生まれてきたことに意味を与えるために。
「こんなのでまたやる気が出るんだ?へぇ〜……」
「ご、ごめん……」
「良いよ。今日は根こそぎ搾り取ってあげる」
また新たな隔たり。今日で1箱使い切っちゃうかな?
ほんとは若いうちになるべくタ■ちゃん産んでおきたいんだけどね。それもできるだけいっぱい。『人工母胎』もあるんだし。でも火織さんみたいなことになるかもだし、育てることも考えたらね。まだまだ野球でやることがあるし、優輝だって学校通いもある。残念だけど、もうちょっと落ち着いてから。
でもまぁこれはこれでモチベーション。もっと成績を上げて、もっと暮らしに余裕ができたら、こんな無粋な隔たりもなく、優輝と完全に繋がれる。ほんとはめんどくさがりのあたしには、ご褒美が残ってるくらいがちょうど良い。




