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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第三章 オーバーダイブ
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第百十話 清算(3/7)

******視点:卯花優輝(うのはなゆうき)******


 9月25日。学校が終わって夜の10時前。


「ただいま」

「ん、おかえり」


 今日は(あい)が1日中おれの部屋にいる。明日から土日で、おれも学校がないからね。この後はまぁ、そういうことで。明日他の用事もあるんだけど。


「何観てるの?」

「クイズ番組」


 珍しい。逢ってテレビ観てもニュースとか野球関係ばかりなのに。


「容姿端麗高学歴、出世街道まっしぐら。合コンに行けば百発百中で狙いの女の子をお持ち帰り!まさに才色兼備のこの男性ですが、たった一つの悩みは薄毛……しかし、特注の高級カツラでそんな悩みも何のその!そんな男性ですが、海外出張で空港に向かうと思わぬトラブル!この後、男性の身に何が!?」

「…………」


 しかもこんな俗っぽい内容。いつもの逢なら『くだらない』とか言って吐いて捨てそうなのに、座布団の上で女の子座りして前のめりになってる。

 ……空港。もしかして……


「カツラの金具が金属探知機に引っかかった……とか?」

「ぶっっっ!!!!!」

「うぇっ!?」


 突然吹き出す逢。そのまま土下座のような体勢で伏せて、身体を震わせてる。


「だ、大丈夫……?」

「だ、だいじょ……ぶっ、ぷぷぷ……wwwww」


 お腹を抱えながら、床をバンバンと叩く。


「……もしかして逢、ハゲネタがツボなの……?」

「…………」


 言葉も出せないくらいウケてるのか、どうにか首だけ縦に動かしてる。


「そ……そんなので、警備員がいっぱい集まってきたりするの……?ぷっ、くひひひ……wwwww」


 どうにか絞り出した言葉がこれ。こんな逢の姿、初めて見た……


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 9月26日。昨日は逢がそのままおれの部屋に泊まって、ついでに一緒に近所のマンションへ。迎え入れられた部屋の中にはまだ少しだけダンボールが隅に重ねられてる。


「あっ、あっ、あっ」

「可愛いですね。3ヶ月でしたっけ?」

「うん、もうすぐね」


 ベビーベッドで手を伸ばしながら寝そべる赤ちゃんを愛おしげに見つめる逢と徳田(とくだ)さん。

 先月にあったスキャンダルで色々大変な目に遭った氷室(ひむろ)さんと徳田さん。この部屋にも今週越してきたばかり。


「ああーっ!ああーっ!ああーっ!」

「あ、もしかしてオムツですか?」

「だと思う。ちょっと待ってて……」


 徳田さんが換えのオムツとお尻拭きを用意してる間にインターホン。


「あっく……あ、今出てるんだった」

「あたし、オムツ換えますよ」

「え?大丈夫?」

「はい。8つ下の妹がいるからやったことあります」

「じゃあちょっとお願いしてもいいかな?すぐ戻るから」

「はい」


 徳田さんが玄関に向かうと、逢は慣れた手つきで新しいオムツを広げて赤ちゃんの下に敷く。


「逢の妹って、(ゆい)ちゃんだっけ?」

「うん。弟もいるよ。優輝(ゆうき)は末っ子だよね?」

「うん、まぁ……」


 父親で見たらね……母親で見たら一人っ子だけど。


「優輝も換えてほしい?ケケケケケ……」

「いや、そういうの良いから……」


 ふざけたことを言ってるけど、オムツ交換の手は止めてない。結構臭うけど気にせずお尻を綺麗に拭いて、新しいオムツを装着。


「きゃっきゃっきゃっ!」

「はい実理(みのり)くん、お疲れ様」


 フリルやギャザーもしっかり整えて、さっきまで泣いてた赤ちゃんもすっかりご機嫌。そんな姿に優しく微笑んでみせる逢。

 うん、良いお母さんになれそう。


(火織さんと氷室さんの子だから将来有望だね。あと10年くらい後が楽しみだよ。ケケケケケ……)


 ……と思いきや、一瞬何だかゲスい顔。逢っておれとか山口(やまぐち)さんみたいなのがタイプみたいだけど、まさかね……


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